あせ

三十路

年上が大嫌いだった。先輩や両親、先生など「自分より偉いひと」というのがいつも僕の前に立ちはだかった。先に生まれただけの連中になぜ敬意を払わねばならんのだ!といきりたっていた。

そんな僕はシド・ビシャスと同じ、21歳で死ぬ予定だった。大人にはならずに生涯を終える予定を組んでいた。

だけど、それは叶わなかった。

僕は21歳をあっさり越してしまい、次の死ななきゃいけないターニングポイントである27歳さえも通過した。

叶ったことと叶わなかったことをシェイクしながら三十路を迎えた。

世間ではまだまだ若輩者とされる年齢かもしれないが、まわりの音楽仲間で見ると上の方になってしまった。あれだけ忌み嫌った「年上」になってしまったのだ。

昨日も年下と食事をしていた。

これでもかと言うぐらい気を使う。あの大嫌いだった「年上」になりたくなくて必死である。もはや哀しいぐらいに必死なのだ。

年下でも見聞が深い人間がたくさんいるからビビる。目を見張るような胆力の持ち主がゴロゴロいる。呼吸した数で人間のクオリティは決まらない。

そんな彼らには「俺の方が年上なんだからな!」と威張っても、すぐに見透かされてしまう。あの頃の僕ですら見透せたのだから当然だ。

きっと僕は「年下にとって意味がある年上でいたい欲」が異様に強いのだろう。見栄とは少し違う角度なのだ。なんというか「年下である彼らに心底認めてもらいたい」のだ。気持ちは悪いが、心から湧き出ている感情である。

因果応報とは少し違うかもしれないが、やはり「自分を苦しめた何か」はまわりまわって、人生にまとわりつくらしい。

それが良い結果に結びつくか、悪い結果に結びつくかは自分次第だ。だけどこれは業だ。三十路たちのプロフィールはFacebookやインスタグラムの自己紹介文ではなく、業の深さで出来ている。

業が業に巻きついて、酸いも甘いもかきわけていくのだろう。

たくさんライブが決まっている。名古屋も行く。


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