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威張る病人

世の中には本当に弱っているひとがいる。被災者、虐げられているひと、どうしようもない闘病中の患者。

できる範囲でしかないが、眼に映る範囲でしかないが、やはり手を差し伸べないとならない。

僕もあなたも最強というわけではないだろうが、「弱っている人は助ける」は間違いない。そこに理由は無く、優しさとはそういうものである。

しかし「弱いのだから何をやっても許せよ」という態度の人間が一定数いる。

僕も一人の患者なので、余計に気になるのかもしれないが「俺はうつなんだから仕方ないのだ」という態度の人間だ。

「病気なのだから、他人に迷惑をかけても仕方ない」と踏ん反り返るのは、どう考えても違う。

昔、バンドメンバーが頭のおかしい女と付き合っていた。妊娠して結婚して出産して離婚した。

フェーズ「妊娠」前後の段階で、僕もよく相談に駆り出された。基本的に荒れに荒れていた。二十歳そこそこの女性が、聞く耳持たずにわめき散らすのだ。

僕は「いや、こいつの話も聞いてやってよ」と言ったら「私は妊婦なんだから仕方ないのよ!」と怒鳴られたことがある。世の中の妊婦さんはこんなやつばかりなのか、と吐き気がした記憶がある。

オフィスによくいる「私は忙しいんだから仕方ない」という不機嫌な態度をとる人間も、性質は近いのかもしれない。どちらにも大変な自分を盾に「他人を傷付けてもかまわん」という残虐性がある。

僕も狭い空間に誰かと行かなきゃいけないとき、自分でコントロールできない時間が増えるときは、未だにクスリを飲む。変にまわりに気を使わせたくない。

ましてや「俺は病気だから何を言ってもいいし、何をしても構わない」なんて考えたこともない。

「俺を特別扱いしろ」という姿勢の病人は弱くも何ともない。むしろ強いと思うのだ。

そのバンドメンバーの彼女も凄かった。

彼女の言い分など聞きたくもなかったが、荒れっぷりがキツすぎたので、話を聞いていったら「寂しいから」と言う始末だった。

「寂しいなら何をしてもいいわけではない。寂しい人間は世界中にいる。甘えないでほしい」という旨を伝えたらまた暴れだした。大変な騒ぎである。簡単にゲームオーバーになる黒ひげ危機一発みたいだった。難しすぎる。

もちろん病気なのに、謙虚に生きているひとを差別してはいけない。妊婦もそうだし、忙しい仲間がいたら手助けしていくのは当然だ。

ただ、そのバンドメンバーの彼女はとても「弱い人」とは思えなかったのだ。

そもそもあのひとは本当にうつだったのだろうか。積極的に飲み会をやっていたが、「積極型・うつ」のような亜種だろうか。

何でもかんでも病名を付ければ、その人間の暴挙が許されるのは勘弁してほしい。

僕自身、大阪で暮らしていた頃、「私は発達障害持ちだ!」と威張っていた女と付き合っていた。

あまりにも傍若無人だったので「それは『馬鹿』のことだろう」と言ったら、沢山の物を投げられた。

むかしは引きが悪かったのか、病人マウンターに出会う確率が異様に高かった。3年ほど前、自称・統合失調症に熱烈なストーキングを食らったこともある。

ここ数年はそういうことは無いが、今でも苦手意識がある。「自称、病気。だから何でもあり」というひとが怖いのだ。

僕も病気だし、友達に病気のやつも多い。でもそれと横暴さとはリンクしない。謙虚なひとは謙虚だし、「他人に迷惑をかけても構わん」というような姿勢のひとは、今の友達の中にはいない。病気うんぬんじゃなく性根の問題だ。同じ病気、同じ環境のひとに失礼だ。

恋愛関係でも、疾患マウントを取られていいようにされてしまっているひとがいる。

「別れたら自殺する」という脅しも、それに近い。「それぐらい不安定な心の持ち主なのだぞ」という銃口を向けられると、誰しもがひるむ。

もちろん卑劣なやり方だし、悪意に思うがままにコントロールされてしまうのは悔しい。
それに、そういう人間は死なない。というより死ぬ死なないはそのひと個人の課題だ。


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