閑話休題 行政機関の対応に不満がある場合(公益通報窓口担当であったときに学んだこと)

公益通報した先の行政機関の対応に不満があるとの申出は思ったより多い

 消費者庁の公益通報窓口担当であったとき、電話してきた方の中には、公益通報をしたが、受け付けた行政機関がきちんと対応してくれないとか、その後の説明がないなど、行政機関の対応に不満があり、公益通報者保護法を所管する消費者庁に、それらの行政機関にきちんと対応するように働きかけてほしいということを話される方が、そこそこの割合でいらっしゃいました。
 消費者庁は、公益通報者保護法を所管しているのですが(同法19条で内閣総理大臣の権限が消費者庁長官に委任されています。)、同法20条は同法15条の指導や勧告などについては、国及び地方公共団体には適用しないとしているので、消費者庁が、公益通報を受け付けた行政機関に対して行政指導等を行うことはできないのです。

行政機関の活動に不満がある場合の対応法の一つ

 総務省は、総務省設置法3条1項に定める「行政の基本的な制度の管理及び運営を通じた行政の総合的かつ効率的な実施の確保」等のための様々な事務を司ることになっており(同法4条柱書)、その中には、「各行政機関の業務の実施状況の評価(当該行政機関の政策についての評価を除く。)及び監視を行うこと。」(同条11号)というような業務もあります。
 これらの事務の具体化として、総務省は、担当行政機関とは異なる立場から、行政などへの苦情や意見、要望を受け、その解決や実現を促進するための行政相談の事務を行っています。
 行政機関の対応に疑問がある場合、行政相談に相談してみるという方法があります。 行政相談については、詳しいところは以下のウェブサイトでご確認ください。

そのほかの方法はないの?

 勤め先などの公益通報の対象となった事業者に対して、行政指導や行政処分がされるべきと考えているという場合には、行政手続法に基づく処分等の求め(同法36条の3)という方法があります。
 こちらの手続に則って、必要事項を記載した書面を、行政指導等の権限を有する行政機関に提出すると、申出を受けた行政機関は必要な調査を行わなければならないことになっています(同条3項)。
 もっとも、別の記事でも書きましたが、公益通報を受け付けた行政機関が、公益通報者になかなか状況の説明ができないというようなことは、この処分等の求めの場合にもあてはまると考えられますので、申出者に詳細な説明はしづらいところだろうと思われます。
 一応、総務省が出した通達では、「申出を受けた行政機関の対応の結果については、法律上、申出を受け た行政機関に申出人に対する通知義務を課すこととはしていないが、各 行政機関は、行政指導の相手方の権利利益の保護等に資する観点から、 行った調査の結果、講じた措置の有無やその内容など、申出を受けた対応の結果について、申出人に通知するよう努めるべきである。」としていますので、それぞれの行政機関が努力はしているものと思われます。
 通知に関して不満があれば、やはり、行政相談に相談されるのが適当と思われます。

まとめ

 行政機関の対応に不満があるという場合には、各行政機関の意見や苦情を受け付けている窓口に連絡するという方法もありますし、行政相談に相談するという方法もあります。
 実際に体験したこととしては、総務省から問い合わせがあって、状況の説明をしたということはありましたから、行政相談によって状況が進展するということもあると思われます。
 行政処分や行政指導という不利益を受けた側であれば、訴訟や審査請求という法的対応も考えられますが、本来的には通報対象の事業者等がご自身に不利益を与えているのであって、ご自身が行政の活動によって直接不利益を受けているわけではないというところからしますと、法的対応も取りづらく、これまで説明したところが現実的な方法論になってくるのではないかと思われます。
 行政機関の対応に不満があるという方の相談を受けられる方の参考になればと思って、今回の記事を書きました。