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シェリー 〜エアアジアが神だった話

波乱の幕開けとなった。
4日、関空21:45発のフライトでひとまずマレーシアはクアラルンプールをめざした。ワーホリ前に観光をするためだ。関空を発つまでも「お寿司一気食い事件」や「バスがない事件」などもあったのだがそれは割愛させていただこう。

フライトは快調。ほどなくして経由地である台北に着いた。トランジットがあることは知っていたが、一つ盲点だったのが「降りなければいけないことを知らなかった」ということだ。どうせ同じ飛行機の同じ座席で再出発するのだから、そのまま乗っておけばいいと高を括っていた。実際、マルタのときのエミレーツ航空がそうであったからだ。
しかし、ぞろぞろと周りの乗客が降り始め、ついには僕1人になった。おいおい話が違うぞ。関空の姉ちゃんも「そのまま乗っとけばいい」と言ってたのに!!

どうやら検査があるらしく、一度降りなければいけないとのこと。へぇー、エアアジアは勝手が違うのね、とか思いつつ機内を出る。
そこで、困った。

僕はどこへ行けばいいのか?

言い訳させていただくと完全に寝起きだったため頭が動かなかった。集団の流れからは完全に遅れをとったため、クアラン行き組はどこへ行ったのか全く分からない。この時点でかなりパニックである。どうしよう、どうしようと思っている間に、

台湾に入国してしまった。

いや、もう病気です。私は。冷静に考えれば分かることなのにね。日本の恥です。笑ってくださいみなさん。

さて、台湾に入国してしまったわけだが、そのときの僕はその事実にまだ気がついていなかった。持てる英語力の全てを発揮し、どうにかクアラルンプール行きのルートを探すが、曖昧な返事しか返ってこない。当たり前だ。ここにはこれから台湾に用がある人しかいないのだから。

そこで日本人観光客を見つける。関空から一緒だったおばちゃんだ。
「あの……クアラルンプール行きたいんですけど」
「は?トランジットやろ?あんた入国してしもうてるやないの」

ここで初めて入国の事実を知る。

「え、どうすればいいんですか」
「あそこにエアアジアの人おる!早く行き!時間ないで」

おばちゃんに礼を言う余裕すらなく、一目散に赤い服を着たエアアジアのCAさんに声をかける。

「あの、すいません」と言った瞬間、
「あー!!!」と言うではないか。そして何やらスマホで他の従業員と連絡を取り始める。中国語なのでよく分からなかったが「あの日本人いたぞ」みたいなことを言ってる。どうやら僕を探していたようだ。
「Run! Run!」と言い、走り始めるお姉さん。一瞬鈴木蘭々、あるいは人気を博したあのパンダが頭をよぎったが「走る」のランだと気がつくと同時にお姉さんの後を追いかけた。あとで名前を聞いたのだが、そのお姉さんはシェリーというらしい。このシェリーがいなければ今ごろとんでもないことになっていただろう。

そこからゲートまで走る!走る!
入国審査場で「さっきこいつ入国したけどやっぱ取り消して!」というのもシャリーがやってくれた。そのとき女神は、確実にいた。

入国ゲートを逆走し、次は荷物検査所まで走る!走る!もちろん検査所には誰もいない。僕のために特別に動かしてくれた。エアアジア神すぎる。
果たして間に合うのか。シェリーはそんな僕を見かねてか、「もうここまで来れば大丈夫よ」と励ましてくれた。ずっと走っていたため分かりづらかったがお顔は非常に整っている。どうやらこの人は僕の運命の人のようだ。

ここから誘導員はシェリーから別の女性にバトンタッチ。シェリー、僕の女神よ。いつか日本に来たら……なんて別れを惜しむ暇もなく、代わったお姉さんが図太い声で「Run!!!!!」と叫ぶ。そしてその彼女、足が異常に速い。台北空港を全力疾走するサル邦人と台湾人CA。待合所の観光客からの好奇の目を一手に浴びる。空港であんなに走ってる奴はまずいない。
しかし、この彼女の全力疾走は、いかに僕がエアアジアに迷惑をかけているかが読み取れるものだった。間違いなく、たくさんの大人が僕を待っている。
にも関わらずジャーナリズム精神を抑えきれなかった僕はとりあえず写真を撮った。

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カタコトで「TAKUROさーん!」という声が聞こえるほうに走る。いや、「MATSUMOTOさん」だったかもしれない。ひとまずそれは置いといて、飛行機がついに見えた。そして、何とか間に合ったのであった。間に合ったというか、間に合わせてもらったというか……。

そういうわけで、エアアジアは神である。皆さんも他の航空会社の方が安かろうが、早かろうが、とりあえずエアアジアを使って欲しい。直通便があろうとも、一回エアアジアを使ってどこかを経由してから目的地に行っていただきたい。

そして今は無事にクアラルンプールの都市部へ移動でき、ショッピングモール内にあるバーガーキングでこれを書いている。マレーシアという国もこれまた面白い。後日まとめて書きます。

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サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。