TOKYO COMPLEX「武蔵小金井は東京なのか?」

受験前日。
当日、道に迷わないように試験地を下見することにした。

僕の出身校は東京学芸大学という大学。
北海道に住んでいた僕はオープンキャンパスに行くこともなく、学びたい勉強があるか、ということを中心に大学案内とネットの情報、予備校講師によるアドバイスで東京学芸大学を受験することになった。
そのため大学周辺の地理的情報をほとんど知らずにいた。

今でもよく言われるのが「じゃあ、最寄駅は『学芸大学』だね」ということ。
学芸大学は東横線の駅名であり、人気の街だ。
あの東横線だ。なぜか路線ヒエラルキーの上位に属する、あの東横線だ。
しかも、目黒区ときたもんだ。そんなオシャレタウンに住んでいる。
そんな幻想を抱く人が多くいた。現に僕もその一人だった。
しかも、受験地を調べるためにGoogleを使うとGoogleマップで表示されたのが東横線の学芸大学。

しかし、大学案内を調べるとどうも違う。
学芸大学という名前は確かに大学名から来ているのだが、1964年に移転しており、今では附属高校があるだけと知る。
であれば、今、どこにあるのか。

小金井市だった。

23区外ではない、ということに僕は少しばかりのショックを抱いた。
この時、コーネリアスが好きで彼が住んでいた中目黒の近くに住める、とワクワクしていた。家賃、どうしよう、とドキドキしていた。
現実は小金井だった。聞いたことがない。
想像するのも難しい。果たしてどんな街なのか。

大学へのアクセスが二つあり、JR中央線の武蔵小金井からバスに乗る方法か、国分寺から徒歩で行く方法。
国分寺からはそこそこ距離があったため、武蔵小金井からバスで行くルートを選んだ。

受験前日。
羽田から品川へ行き、山手線に乗り新宿から中央線に乗り換え、武蔵小金井へ。
その間、テレビなどで聞いたことがある地名が聞こえる。
中野、高円寺、阿佐ヶ谷、吉祥寺。。
期待が膨らむ中、少しばかりの不安を抱く。
景色が自然豊かになっていく。
東京って都会じゃなかったっけ。
そんな疑問を抱きつつ、武蔵小金井に到着。

素直な感想として、札幌の琴似を大きくした街、というものだった。
駅の目の前にやけにでかい西友と長崎屋があるのが印象的だったが、それ以外は大きな感動はなかった。

大学へ向かうバスに乗るとさらに自然色は強くなり、大学周辺となると東京感は全く感じなかった。

試験地の下見を終え、帰りは歩いて駅まで向かう。

畑があり、驚いた。

目黒のイメージはそこにはもう、なかった。

こう書くとネガティブな印象を抱かれるかもしれないが、驚きつつも東京という土地にいることに期待と興奮を覚えていたのも事実だった。
駅に戻る途中、雰囲気がよさげなお店も多々あった(その全てが行くこともなく東京を離れたのだが)。
期待に胸を膨らませ、宿を取っていた八王子へと向かった。

武蔵小金井は東京なのか?

確かに、武蔵小金井は東京だった。


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