カルロス・ゴーンの経営論 「圧倒的な王道で、圧倒的な結果を残してきたプロ経営者が、大企業経営とは何かを教えてくれる本」

現在ルノーのCEO、そして日産と三菱自動車の会長を務めるカルロス・ゴーンさんが講座で話したQ&Aを元に、それらをアカデミックな理論体系でとらえ直して解説するというスタイルで書かれた素晴らしい良著。

この類の経営本はその人の経験のステージごとに理解の仕方が異なり、また刺さるポイントも違う、というものだと思う。弊社も創業から20年たち、丁度ベンチャーから大企業への経営へと変遷している途中だ。その中で大企業プロ経営者であるゴーンさんの生の声で「経営とは何か」という考えを読むのはとても感慨深かった。大企業には賛否両論あると思うが、企業が大きくなれば大企業になるわけで、その現実を真っ直ぐに捉えたときの企業経営の醍醐味、面白さ、またその意義をゴーンさんは教えてくれる。

以下、ゴーンさんの言葉と共に、今の私に印象深かった事項です。

  1.まずゴーンさんはなぜ偉大か。当時倒産寸前とも言われた危機的状況にあった日産にCOOとして招聘され、1999年に「日産リバイバルプラン」を発表。そこでは「(一年後の)2000年度に黒字化」「2002年度に営業利益率4.5%以上」「2002年度末までに自動車事業の負債を7000億円以下」のうちどれか一つでも達成できなければ退任する、という約束をした。そしてそれらすべてを見事達成し、のち、日産、ルノー両社のCEOとなった。その後も日産は早期からEVへの参入、自動運転の技術革新など、素晴らしい先見性で企業運営をしている。ちゃんとゴーンさんの業績を知らなかったのでこれらの事実には圧倒された。

  2.「どれだけの成果を出したかがマネージャーの評価の尺度」

ご自分の業績もしかり、ゴーンさんはマネージャー、リーダーは結果を出さなければどこにもいかない、という当たり前ながら、極めて重要な事実を何度も述べる。自分の成果に満足せず、結果をより厳しく評価し、よりよい成果のために学び、努力を続けれることはめちゃめちゃ大切。どこまで成果にこだわり、でかい成果を目指せるかということ。

  3.「嫌なことを、モチベーションを維持しながら実施させることが真のリーダーシップ」

誰もが従来通りでいいというなかで、自分だけ「ノー」と言える人こそリーダーだ、というゴーンさん。その挑戦的な意思決定をするだけでなく、その後にオペレーションも徹底して関わり、担当チームをフォロー、サポートし、結果を出すことがリーダーシップだという。大組織にいると非常に腹落ちする言葉。人数が膨れ上がれば、より同じ方向を向かせることは難しくなる。それが分かっていても実行し、そして結果を出すこと。

  4.「制度に絶対的な良し悪しはない。その組織でその制度が機能しているかで評価すべき」

グローバル経営というトピックでは日本組織の問題点、などが指摘されることがあるが、ゴーンさんのそれらに対する答えはとても地に足のついた(上記の)ものだった。弊社には本当に様々な仕組みがあり、賛否両論あるが、最終的には機能しているかどうか、つまり結果がついてきているかどうか、が一番重要だということ。これは私自身も日々経営手法を振り返っているときに立ち戻る原点だが、改めてゴーンさんの言葉を読んで、重要だと思った。仕組みを他の会社から学ぶのはどんどんやるべきだが、他の会社がどうだから自分の会社がどう、と評価するのは本質的な思考法ではない。

  5.「限界に極めて近い目標を設定するには、会社のことを本当によく知らなければならない」

高い目標設定は重要だが、達成ができない目標設定はコミットしきれないから意味がない。日々数値の目標設定を考える上でこのことについて考え、よりぎりぎりのラインを見定めていかなければいけない。

  6.コミュニケーションスタイルは状況次第に使い分けなければいけない。次の四つがあるといわれている。

「境界連結型:情報収集や関係調節などを管理するスタイル」

「促進型:情報を共有し、決定への参加を促すスタイル」

「革新型:質問や疑問を投げかけて新しい方向性に目を向けさせるスタイル」

「指示型:何かを教示したり、優先順位、期限、基準を設定するスタイル」 

ゴーンさんも時と場合、状況に応じてこれらのスタイルを使い分けて物事を進めていたようだ。

  7.グローバルリーダーに必要とされる資質。なるほどなぁ、そうやってまとめるのか、と思ったので列挙しておきます。

ビジネスにおける見識:事業分野の知見の深さや専門家としての技能など。

関係性の管理:ステークホールダー志向や組織全体への洞察、影響力など。

個人としての効果:強いアカウンタビリティや複雑性と矛盾を受け入れる力、驚きと不確実性に機会を求める思考など。

CEOとなったゴーンさんをCOOとして支えてきた志賀さんがゴーンさんを評していうには

「意思決定が思慮深いながらも大胆である」

「その背後には揺るぎない本質と大義が常に存在している」

「経営手法は極めて基本に忠実である」

まさにそれらを節々に感じるゴーンさんの言葉だった。

ゴーンさんの深い経験と洞察に基づいた言葉も多く、自分自身を振り返るとても良い機会となった。世の中はゴーンさんのような良心をもった才能と胆力溢れる人によって少しずつよくしていただいているのだなと、強く感じた。私も彼に学ばせて頂き、世の中に貢献していきたい。



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北川拓也

Kitagawa book review

北川による(かなり主観的に)な本の解釈、解説です。「本を読まなくても読んだ気になれる」とよく言っていただきます笑  アクティブラーニングとして本と自分の思考との対話をまとめています。本の内容から学んだこと、そこの世界観を広げて思考の深化につなげていければ。
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