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一生使える靴のお手入れ 基礎編

今回からテーマごとに数回に分けて、ご自分で行っていただける靴のお手入れについて更新していきます。

「簡単なお手入れなら自分でやりたい」
「とにかく上手く磨けるようになりたい」
「プロみたいな艶を出したい」

これまでにお客様から頂いた沢山ご意見と今の状況が重なり、今回の記事作成に至りました。

個人的にも、日常の簡単なお手入れはご自分で行っていただき、数ヶ月に一度プロにご依頼頂く、というのが靴にとってベストだと考えています。

普段はお店に任せっぱなしという方も、この機会にお手入れしていただくことで、より一層ご自分の靴に愛着が湧くのではないでしょうか。

第1回は基本のケアについてご説明します。
難しいものではないので、ぜひ一度チャレンジしてみて下さい。

お手入れの流れ

①馬毛ブラシでブラッシング
②クリーナーで汚れ落とし
③クリームで保革・補色
④豚毛ブラシでブラッシング
⑤布で乾拭き

基本的なケアはこの5つのステップです。
月に1回程度この工程を行っていただくのがお勧めですが、普段は①のブラッシングのみで問題ありません。
*BerlutiやCorthayなどのパティーヌ靴はトラブルが起こりやすいため、慣れないうちは正規店かプロにお任せいただくのがお勧めです

ここからは各工程についてご説明します。

①馬毛ブラシでブラッシング

適度なコシのある馬毛のブラシで靴全体をくまなくブラッシングし、靴についた比較的大きなチリなどの汚れを落とします。

コツ
力を入れてゴシゴシと擦るのではなく、毛先を使って汚れを払い落とすような感覚で行っていただくと効率よく作業が進められます。ホウキの使い方とよく似ています。

注意するポイント
ウエルトとアッパーの隙間のチリなども毛先使って掻き出しましょう。

②クリーナーで汚れ落し

布に液状、または固形のクリーナーを含ませ、靴についた古いクリームや①で落とせない汚れを落とします。
鏡面の落とし方については別途記事を作成しますが、クリームや通常の汚れは強力なクリーナーでなくとも十分落ちます。

コツ
指に布を巻き、指先が湿る程度の量のクリーナーを含ませた布で撫でるように拭き取って下さい。

注意するポイント
革を傷めないよう、同じ場所を強く擦らないことが大切です。

③クリームで保革・補色

クリームを革に塗り込んで柔軟性を高めます。
自然な色抜けを楽しみたいという方以外は、補色もできる有色のクリームがお勧めです。大きく分けて油性と乳化性があり、前者は発色と強い艶、後者は自然な仕上がりとなる製品が多いです。
個人的な好みもありますが、基本的にお客様の靴も私物も乳化性で仕上げています。

コツ
あまり知られていない話ですが、この段階でクリームがある程度乾燥するまで塗り伸ばしきることで、後の工程が行いやすくなります。

注意するポイント
塗り込む量よりもこの後のブラッシングと乾拭きが重要です。
大量の乳化性クリームを塗りこむ有名店もあるように、多少塗りすぎても後の工程がきちんとこなせればトラブルは発生しません。使用するクリームによっても変わりますが、個人的にもしっかりと塗りこむ方が良いと考えています。
強いて言えば油性(クレムやアーティストパレット)は比較的シミになりやすいので塗りすぎに注意。

④豚毛ブラシでブラッシング

馬毛よりもコシのある豚毛のブラシで塗り込んだクリームを革に馴染ませます。
パーツごとの境目やブローグ(穴飾り)にも念入りにブラシをかけます。
コードバンには馬毛を使う方もおられますが、傷は付かないので豚毛がお勧めです。

コツ
説明でよく使われる「思い切り力を入れて」というよりは、しなり過ぎない程度の力で毛先を使う方がクリームを上手く散らすことができます。
用途は少し違いますが、歯ブラシの上手い使い方に近いものがあります。

注意するポイント
ここでしっかりとブラシをかけないと仕上がりの艶が鈍くなったり、埃が付着しやすくなります。お店だと所作にこだわる所もありますが、ご自宅で磨かれる際はとにかく質より量で満遍なくブラッシングすることが大切です。

⑤布で乾拭き

豚毛ブラシで散らした余分なクリームを布で拭き取ります。布の面を変えながら、付着する色が薄くなるまで2〜3回繰り返すことで艶が出て埃も付きにくくなります。使用する布は着古したTシャツなど、何でも結構です。

コツ
力を入れずに軽く拭き取るようなイメージで布の滑りが良くなるまで行います。

注意するポイント
とにかくしっかりと拭き取る
ことが大切です。
この工程をしっかりと行うことで、艶も曇りにくくなります。

*締めに山羊毛のブラシでブラッシングすると艶がよりまとまるので、お持ちの方はお試し下さい。

まとめ

①馬毛ブラシでブラッシング
毛先を使って払い落とすような感覚

②クリーナーで汚れ落とし
同じ場所を強く擦らない

③クリームで保革・補色
塗り込む量よりも④⑤が重要

④豚毛ブラシでブラッシング
しなり過ぎない程度の力で毛先を使う

⑤布で乾拭き
とにかくしっかりと拭き取る


ここまでが通常のケアとなります。
文章にすると長いですが、慣れれば全工程を10分前後で行えるようになります。
別途記事を作成しますが、鏡面磨きが必要な際はこの後に行っていただくことでより綺麗な仕上がりとなります。


適当に磨いてもそれなりに綺麗になるものですが、きちんと工程ごとの役割を理解して行うだけで仕上がりは大きく変わります。

今回は全体の大まかな流れを掴んでいただくための記事なので浅く広くなっていますが、今後はブラシやクリームなど、一つのテーマごとに深掘りした記事を書いていきますので、そちらも併せてお読みいただければと思います。

自粛明け、綺麗な靴でお会いしましょう!

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