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「しない」という決断

こんにちは、muracoの村上です。

一つ前の記事で、「なんとかしたいから、なにかする」組織でありたいということを書きましたが、今回はさらに真逆で、「なんとかしたいから、しない」という決断を「した」話をしようと思います。

昨年夏から無くなった「大物」の注文

実はコロナ禍になってから、特に昨年2020年の夏頃から僕の会社の製造事業部(金属切削加工部門)はかなり数字的に厳しい状態が続き、8月、9月あたりは週休4日にして、雇用調整助成金を申請するところまでいきました。

その中で、当社で最も大きな旋盤(22インチ)で加工する、いわゆる「大物」と呼ばれる種類の注文が入らなくなりました。特に交通インフラ関連のとある部品は年間通して注文すると言われて、手間のかかる割には・・・という単価ではあるものの、付き合いもあって、受託したワークでした。

そのワークは社内でも先述の22インチの大型旋盤でのみ加工でき熟練の技術者が大物ワーク独特の癖を鑑みながら1本1本丁寧に加工している仕事です。22インチクラスの旋盤ともなると設備自体も相当高額となり、さらにそれを扱うオペレーターの技術レベルも相応に求められます。それ故にその仕事はどこでもできる仕事ではなく、巡り巡って当社に辿り着いたような代物でした。

しかし加工単価を考えると、おそらく当社の前に担当していた別の下請企業が毎年のように値下げ要求を受けていたのだと想像がつくほど厳しい単価です。量産品なので、ある程度安いのは仕方がないにしろ、年間通して受注できるというのが条件になります。そのワークの注文が止まって既に9ヶ月。

製造業の概況

さらに、それに増して我々が取り扱う鋼材は毎年のように値上りしている状況です。それなのに、我々加工業は値上げを口にすると「安いところに出すよ」と言われる怖さがあります。当然のことなのですが、これが理由で我々の業界は日々、利幅が減らされていく状況になっています。それに増して、毎年の定期昇給、年5日の有給休暇の強制取得、年間休日の増加、残業の上限設定など、働かせてくれず、経費は増え、利益は削られていく状況が続いています。

これはコロナ禍ではなく、コロナ前もそうですし、後も続いていくでしょう。

決断

そんな状況の中、当社は今後「大物の加工をしない」という決断をしました。もちろん不安です。しかし現時点で半年以上も受注しないものを今後も追いかけるわけにはいきません。景気が戻ってきたらまた注文が来るでしょう。でもまた今回のような不確定要因で注文が止まるでしょう。

一方で自社工場生産のmuracoプロダクトは欠品しがちで、十分な量を市場供給できているとはいえません。muracoの卸先様は2021年3月現在、全国で約60店舗程あり、その殆どがmuracoを取扱いたいと打診をいただいた販売店様ばかりです。さらに新しい可能性を求めて転職してきてくれた社員の為にも、安定供給を目指した生産体制の整備が急務です。

そして今年、設備更新を決意しました。先述の大型旋盤を下取りに出し、新たにDMG森精機の高回転型で非常に複雑な加工が可能な複合旋盤を導入します。この機械では主に焚火台をはじめとした、muracoプロダクトに関わる部品の加工を主に担当します。いよいよ6月半ばに納入になります。そしてその機械は通常はホワイトのボディなのですが今回は特別にお願いしてmuracoプロダクトの塗装の際に使用する、指定色のブラックに塗装され納入される予定です。

↓通常はこの白です。

「見た目だけ変えても意味ないでしょ」

おそらく近所の町工場の職人の方々には、黒く塗装することなんて意味ないでしょと思われてしまうでしょう。色で加工するんじゃない、技術は別物だと。もちろんそれは正論です。

でも当社にとっては非常に重要で、様々な意味が込められています。

1: muracoは確立した事業なんだというメッセージ。(対社員)

2: ブランドロイヤリティや信頼感の醸成。(対エンドユーザ様)

3: 取引金額以上の期待感を持っていただく(対取引先様)

4: 機械メーカーの納入先事例化(対機械メーカー)

そしてこれらは会社自体のブランド化を実現するための重要なピースになると信じています。

ということで、もうすぐリニューアルが終わる(と思う)株式会社シンワ のWebサイトでは、6月以降、黒い機械の写真を掲載予定です!是非そちらもチェックして欲しいです。

なんだかんだ、最後にはすべき事をする話になってしまいました。あいすいません。

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