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UX MILK Fest 2019 メモ

UX MILK FES 2019 に参加してきました。
備忘録として個人的にとったメモを要約してまとめてみます。

※自分が聞けたセッションの中の一部であり、全体のまとめではありません。
※聞き間違いや解釈の違いが含まれる可能性があります。

ツールではなく、チームに目を向けよう

ustwo London ltd. プロダクトデザインリード 東京オフィス
中村 麻由 さん

エンジニアとして働いたあと、イギリスでユーザー中心設計を学び、ustwo londonに入社。
ustwo londonでUXのプロセスを忠実に実行していたが、とにかく書類作りばかりで作業量が多い割になぜか上手く行かなかった。

・プロセス自体が目的化してしまっていた
・プロセスのチェックリストを埋めることに必死でなかなかデザインに注力できなかった
・一週間のアジャイルに適合できず、うまくチームに貢献できなかった

「UCDが完璧な星型だとしたら、チームがその星型にぎゅっと押し込められているかのようだった」

そんなとき、astwoにアジャイルコーチが入ったことで気づきを得られた。(アジャイルコーチ: チームメンバーがアジャイルのなかで自走できるようにサポートする役割)
アジャイルコーチは、アジャイルを熟知しているからこそどこまでそのプロセスを崩していいかを解っていた

機械のようにプロセスをこなすのではなく考えながら動くことの大切さを知った。

チームは今どんな状態なのかを考えるようになり、その時によって常に必要なアクションは変わるためバレーボールのようにこぼれたボールを拾いに行くような動きにした。


開発のレイヤーによって必要なアクションは変わる
1. ユーザーへの理解
2. ユーザーインサイトをデザインに変換する
3. 作ったものをユーザーと検証する

この3つの中でどの辺が欠けているのかを考えると、自分のすべきことが分かる。逆に、ここが欠けていないのであれば、やらない。そこに時間を使わない。

大切なのは、自分のポジションを「やること、作るもの」ではなく「目的」で考えること。
「ワイヤー作る人、インタビューする人」だと考えないこと。

目的ベースで考えると自分のやることがクリアになってくる。


まとめ
・完璧なプロセスが良いプロダクトを生むわけではない 自分たちに合わせて使うことが大切
・チームの状態を理解するのが第一歩
・HCDの視点から、どう動けば良いのかを目的ベースで考えて動く

個人的に思ったこと
このastwoという会社はあのモニュメントバレーを作った会社ということを後から知って驚きました。
※モニュメントバレーはAppleのGame of the Year 2014に選ばれた作品。
こんなにアーティスティックで情緒的なゲームが、HCDやUXのプロセスを重視する会社から生まれいていることが意外でした。
(実際、モニュメントバレーのチームがそのようなプロセスを使っていたのかはわかりませんが)



リサーチなしではじめるUXデザイン

DMM GAMES PFデザイン部UXデザイナー
井上 誠さん

ゲーム開発のチームでは、みんなが主観を持ち、主観をぶつけあってモノづくりをしていた。
デザイナーもエンジニアもディレクターもばんばん主張する。
ゲーム開発に従事する人は大抵はゲーマーだったので、サービスの開発とは違って自分自身がユーザーだった。
そのようにユーザーに共感できていると、自分だったらこうしてほしいから相手もこうしてほしいはずといった考えができるようになる。

ここから学んだことは、どんなに正しくリサーチしていても、このように「自分ごと」化できていなければ、良いデザインに繋がりにくいということ。
他人事の客観的なリサーチよりも、自分ごとの主観的な体験のほうが情報量が多い。
自分がユーザーであり、自分がペルソナであることが理想。

だた、自分はゲーマーではなかったので、ゲームの部署に入ってから闇落ちした。

どうやったら自分ごと化できるか?
1. 雑談ベースでもいいので、そのサービスが好きって人に根掘り葉掘り聞く
2. 自分が持つ似たような実体験で想像する
3. 機会があれば自分で体験してみる


誰のためのUX ?

SPEEDA / 株式会社デスケル リードデザイナー
平野 友規さん

参加型デザインの必要性を感じた原体験は、RICHOさんの社内スタートアップ「THETA」の初期段階から彼らのチームを支援していたときのこと。

その時は巻き込み型デザインの必要性は分かっていなかったが、答えは自分の中ではなく、彼らの中にあると分かった。

チームを「巻き込み」ながら少しづつ利用体験の解像度を高めていくことが大切。

巻き込むステップ
1. 信頼を作る
2. 巻き込む
3. 一緒に考える
4. 景色を交換する
5. アイデアを実践する

(1の「信頼を作る」ステップでは、頼まれてもないことを勝手にやるのが良い。)


誰のためのUXか?
信条としては、プロダクトやサービスに関わる組織のため。
組織にカルチャーとしてUXを埋め込めば、必然的に素敵なUXのプロダクトは生まれる。

組織のマーケ、セールス、カスタマーサクセスとも連携してUXのカルチャーを推進している。

例えば、カスタマーサクセスとUXの連携として、SPEEDAカフェというものを作ってユーザーを招く取り組みをしている。

また、週1で「SPEEDA FAN MTG」という全員参加のMTGを開催し、ワークショップをしたりSPEEDAのプロダクトはどうあるべきかをみんなで話し合ったりしている。

クライアントワークの事例

原体験から情熱をつくり、巻き込む
多くのアイデアが社内政治によって社会実装されない問題があったので、"絵日記"で原体験を伝えるようにサポートした

プレイフルに巻き込む
アイデア出しを音楽を流したり装飾したりしてお祭りっぽくすることでやりやすく工夫した

圧倒的スピードで巻き込む
速いスピードでUXのプロセスを回すと組織に情熱が生まれやすい

当事者を登場させて巻き込む
当事者の等身大パネルなどを社内に置いて距離を近づけた


なぜUXを組織で巻き込むべきなのか?

それは19世紀の歴史が教えてくれる。
ベルリンの壁によって分断された人々の間では争いが起きた。

人をグループ化すると敵対するようになってしまうことは「動物泥棒実験」でも証明されている。

組織のサイロ化が強まると他の組織を手助けしなくなっていき争いが起き始める。

「分けないこと」と「異能であること」をいかに両立するかが大切。

とにかく共通目標を持って一気通貫でやっていくこと。
そのためにUXを組織で巻き込む。



BtoBtoCサービスのデザイナーがユーザーに近づくために実施したこと

株式会社ヤプリ UIデザイナー
城 由美さん

yappliは簡単にアプリを開発できるようなサービス。

BtoBtoCなので登場人物が多く、ユーザーまでの距離が遠い。
色んな人の色んな主張がある。

そんな中でユーザーと近づくために実践したこと

1. 小さな実践を始める

リサーチなしではデザイナーには "加工された情報" が届く状態になってしまう。
役員や色んなチームから色んな意見が出てくるが、実際にユーザーの話を聞くと全く違うことを感じている場合などがある。
そうするとユーザーが実際に抱えている課題などが見えずに開発が進んでいってしまって微妙な改善を繰り返してしまう。

しかし根本的に組織を変えようとすると煙たがられてしまうので小さく始めることが大切。
・ユーザー属性に近い社員にインタビューしてみる
・社内のデータを漁る
・クライアント訪問に同行してヒアリング
・CSがやってるイベントに参加
など。


2. 共感者を増やす

リサーチの成果を共有することで社内でリサーチへの納得感を持ってもらえるようになる。
・取り組んだ理由
・結果の報告

他の職種の人達にも彼らの業務とリサーチの繋がりが見えるようになってくる。

3. 仕組みづくりをする

社内で共感してもらえると
CSのデータからアンケートを実施したり
予算をかけたユーザーインタビューなどをさせてもらえるようになる。

お金を使ったユーザーインタビューではプロと一緒に行うことで質の高い情報を得られた。



2軸で考えるプロダクトデザインのシンプルな意思決定方法

Pivotalジャパン株式会社
坂田 一倫さん

2by2という手法についての紹介。

2つの軸を持つシンプルな図を使ってチームでのアイデアの優先順位付けなどの意思決定をスムーズに行っていくことができる。

例えば、
ユーザーインタビューで広げた課題から2x2によって優先度の高い課題に絞り込み、
今度は解決策をブレストで広げたらまた2x2によって解決策を絞り込む
というようなフローで使っている。

Pivotalの会議(デザインスプリントのようなもの)
・プロダクト開発に関わっているPM, Designer, Engineer, 意思決定権がある人が参加する
・1時間で行う
・付箋、ホワイトボード、付箋、マーカーなどを使う
1. リサーチしてきたユーザーの課題を2by2で優先順位付けする
2. 優先順位の高い課題を抽出したら、"デザインスタジオ"を行う
デザインスタジオでは、メンバーそれぞれがが課題に対する解決策とデザインを描いて壁に貼り、投票を行う

2by2のコツ
・右上にあつめすぎないこと。ほとんどが右上に集まってしまいがちなので、各領域に同じ枚数が散らばるようにする。
・みんなが同じ色のペンを使うこと。「誰が言ったか」に引っ張られない工夫をすることが大切。
・右上に集まったもの以外は破いて捨てる。大事なことは何度も出てくる。
・5分で考える。人間は5分などに制限すると頭が回転しやすい。



情緒の設計

クックパッド株式会社 デザイナー
倉光 美和さん

情緒とは、ことに触れて起こる様々な微妙な感情。
また、その感情を起こさせる特殊な雰囲気。

情緒を生むことは、心理的障壁を少なくし、人の行動を変え、プロダクトの個性にもなる。

例えば、Headspaceという瞑想をサポートするアプリがある。
これは瞑想に精通した人が作ったアプリで、アニメーションなどを多用しており「これなら瞑想をやってみようかな」と思えるようなアプリ。

瞑想のやり方をただテキストで列挙した場合とはやりやすさが全く違う。

"鍛えよう、情緒筋💪"


情緒筋をどうやって鍛えるか?

1. 地道な筋トレをする

・週報で「今週の良かった」でチームメンバーが心が動いた体験などを語る

2. 具現と抽象の反復横跳びで具現化力を鍛える

・Crazy8sで瞬発力のリミッターを外す練習をする

→「デザイナーの逆推論」を鍛えることに繋がる。

3. 主観と客観のスイッチング

主観: 感じてほしい世界観をどう構築するか?
客観: 他人が体験するとどのように感情が動くか?

・ユーザーストーリーシート(ユーザーの発言を吹き出しに書いてユーザーストーリーを組む手法)を使って、強制的に開発者視点をリセットする
・アクティングアウト(チームで寸劇を行ってユーザーストーリーを再現する手法)でチームの理解を深める


情緒を使う事例紹介

倉光さんが三瓶さん(UX MILKのディレクター)からUX MILKのロゴリニューアルの仕事を受けたときの例。

以下の流れを三瓶さんと行いUX MILKの新たなロゴを制作した

MILK BOYのイメージのキーワードを決めた「シニカル、かわいすぎず、無味無臭、マット」
  ↓
ムードボードで「いいね!」と「なんかちがう?」の2種類で集める。👉具体と抽象の反復横跳び】
  ↓
「なんか違う」は重要な手がかり。
今回の場合、これは違うとわかった。「サブカル、おしゃれ、子供っぽい、女の子っぽい」
  ↓
とりあえず描いてみる。描きまくる。
  ↓
見てもらって、イメージに近いものを抽出する
  ↓
"UX MILKの進化"を言語化する
  ↓
『キャラが「配達者」から「生産者」に変わることで、情報を届けるだけではなく、生み出す役割も担う存在に生まれ変わります!ってのはどう?』と思いつき、提案
  ↓
「あの世界だとあの人」を考える【👉主観と客観のスイッチング】
- ヒーロー/物語/実在の人物など
- デザインで表現したい思想/印象がすぐ伝わる
  ↓
イメージ「ウォーキング・デッド シーズン3あたりで何故か生き残っている能天気な農場の人々」
  ↓
コンセプト「能天気でいいやつ」「1ミリのうさんくささ」
  ↓
またラフを書いて共有

決まったらイラレで仕上げて完成

"いいセッションが、良い情緒を生む"
※倉光さんはアイデアを打ち合うMTGをセッションと呼んでいる

まとめ

UXやデザインにまつわる多くのセッションを聞くことで、新たな学びや気付きがあったり自分の中で疑問に思っていたことが言語化されたりしてとても参考になりました!
対話形式の質疑応答(Ask me Anything)など双方向のコミュニケーションをとる工夫がされており理解がさらに深まりました。

お昼のカレーも美味しかった。
来年も参加したいなァ〜。

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