「僕たちはおかげさまでここにいる」イベントレポ
「不要不急」だけど、生きていく上でホントは必要なことって、たくさんありますよね。
たとえば、気のあった仲間と飲みに行くとか。
でも、今はそれができない。しないほうがいい。すべきではない。
それが結局は仲間のためになる。
わかってはいるけど、ちと寂しい。
そんなあなたにご提案です。
必要なものは、YouTubeが再生できる環境と、お好みの飲み物とおつまみ。
ご覧いただくのは、「酒を飲むオジサマ3人による2時間の与太話」。
あ、そこのお兄さん、ちょっと待って、ちょっと待って、まだ行かないで。
大丈夫、「21歳グラビアアイドル」が出てくるかもしれないから。
ダマされたと思って、最後まで観てください。
面白いことは保証します。
「僕たちはおかげさまでここにいる」
https://www.youtube.com/watch?v=uKQqG7K18Tc
いかがでしたか?
え? まだ観ていない?
では、まだ観ていない方のために、この動画についてご案内いたします。
こちらは2020年3月11日の20時から配信された、田中泰延さん、前田将多さん、上田豪さんによるトークライブです。
田中泰延さんはコピーライターとして電通で24年間勤務後、「青年失業家」として活動。昨年上梓された『読みたいことを、書けばいい。』がベストセラーになりました。
前田将多さんも電通でコピーライターとして勤務後、カナダでカウボーイとなり、『カウボーイ・サマー 8000エイカーの仕事場で』を上梓。現在はレザーショップ「スナワチ」を大阪で営んでおられます。
上田豪さんは博報堂にデザイナーとして出向後、クリエーティブディレクター/アートディレクターとして独立。現在は広告制作会社「ビースタッフカンパニー」の代表取締役をされています。
御三方の共通点は、広告業を長く経験され、大企業のこともフリーランスのこともよくご存じであること。酒と煙草を愛する「ナイスミドル」(ちょっと死語)であること。
御三方は、仕事を一緒にすることはなく、友人としてお付き合いされているそうです。
配信場所は「ヒマナイヌスタジオ高円寺」。
元々は居抜きのイタリアンレストランだったこのスタジオは、環状七号線に面しています。
御三方が煙草をバンバン吸うので窓を開けていたら、外から車の音が聞こえてくる、という一風変わったスタジオでした。
え? なんでそれを知っているかって?
ご挨拶が遅れました。
わたくし、宮下卓也と申しまして、トークライブの配信中はスタジオにいたんです。
わかります? 豪さんがトイレに行かれたとき、将多さんの煙草のけむりで一瞬だけ背後霊のように浮かび上がった男がいますよね?
あ、スイマセン、どうでもいいですね、そこは。
このイベントには、わたしを含め6名のギャラリーがいらっしゃいました。
そのなかには、大阪在住の泰延さんが東京に来るときには「めおと」のようにそばにいると噂される、あの方も。『読みたいこと、書けばいい。』の名編集者、ダイヤモンド社の今野さん。
さて、この配信は、一応「視聴者から寄せられた悩み相談に三人が答える」という構成になっています。
しかしこの配信の醍醐味は、悩みの話から脱線に脱線を重ねるところにあります。酔いも手伝ってなんの相談だったか3人ともわからなくなり、「で、なんの話やったっけ?」となるルーティーンが真骨頂なんです。
ちなみにこの配信は今回で3回目になります。
初回は2018年12年6日、「僕たちは何を考えて仕事をしているのか」と題して配信されました。
https://www.youtube.com/watch?v=efhdjKCwzug
当時はまだ『読みたいことを、書けばいい。』の執筆前だった泰延さん。「青年失業家」なのに休みがないという矛盾した生活をされていました。初回の配信で以下のような名言を吐かれました。
まず、理想を持つこと。
訓練だけが人を輝かせる。
暴力はなにも解決しない。
2回目は、「僕たちだってこんなことで悩んでいる」というタイトルで、2019年4月17日に配信。
https://www.youtube.com/watch?v=SFZ4gIRSMzk
このときは『読みたいことを、書けばいい。』を印刷所にまわす直前だった泰延さん。SNS上で失礼な態度で接してくる奴に対する、以下の名言が飛び出したのがこの回でした。
上田豪やったら即ブロやぞ。
さて、本題の第3回目ですが、正直、エラそうに解説みたいなことを書くのは野暮なんですよね。「YouTube観てください」と言えばいいだけなんですが、一応どんな質問と回答があったのかはざっくりあげてみましょう。
Q1:「吹潮社」(泰延さんがTwitter上で展開する架空の出版社)は本当に出来るのか?
A1:社名は違うが、出版社は近日中に会社を登記する予定。(おめでとうございます!)
Q2:結局のところ、努力は報われるのか?
A2:(豪さん)報われることは少ないが、努力しないと報われることはない。
(将多さん)努力したことがない。(はたから見たら努力に見えても)自分ではそれを「努力」だと思ってやっていない。
(泰延さん)努力の方向性が大事。好きじゃないとうまくいかない。
Q3:フリーランスになるのではなく、会社勤めをしながら好きなことする生き方ってどうか?
A3:(御三方)それができれば、それが一番いい。
Q4:広告業界で20年。辞めてやっていけるか?
A4:(将多さん)(豪さん)広告の仕事は汎用性が高い。仕事について多角的に考えるから。
(泰延さん)写真家のワタナベアニさんは、30代は広告会社のアートディレクターだった。40代でカメラマンになり、50代で本(『ロバート・ツルッパゲとの対話』)を書いた。むちゃくちゃ好きなものがあれば、なんとかなるのかも。
Q5:最近だれかに怒られましたか?
A5:(豪さん)毎日、社員や家族に怒られている。でも、おかげで気づきがある。
Q6:「人の心をつかむ」とは?
A6:(泰延さん)「人と違うことをする」ということ。
(将多さん)文章を書くときは、自分の心に正直に「本当のことを書く」ようにしている。そして「アホウのふりをして」書いている。
(豪さん)ブランド論に似ている。作り手の人格や思想に共感してもらえるかどうか。小手先の話ではない。
Q7:おとうさんの思い出について教えてください。
A7:(泰延さん)毛虫嫌いの父親が、病室にまぎれこんだ毛虫をみて「殺すな!カワイイやないか!」と言ったこと。自分の死がわかると、生きているものすべてがいとおしく思えるらしい。それをみて、自分も死ぬのは悪くないと思った。
Q8:「いい女」とはどんな女性?
A8:(豪さん)いつも機嫌がいい人。自分にも周りの人にも機嫌よくしようとしている。
(将多さん)自分の欲望に忠実な女性。
Q9:他人から言われて驚いた意見や評価はありますか?
A9:(泰延さん)他人にどう思われているかを気にする必要はない。自分の限界は自分がわかっているから、自分がベストを思えることをやれば、おのずと道は開ける。
あああああああああああああああああああああ!
こんなこと書いても、この配信の面白さを100分の1も表現できないよ!
御三方のトークの魅力は、「会話のプロレス」なんです。
真面目と不真面目、真実と嘘、格闘技でありながらエンタメでもある。暗黙のルールがあり、ときには場外乱闘もあります。
例えば。
「お父さんは偉いのよ」という泣かせる話を受けて、「映画『仁義なき戦い』の山守組長ですね!」と将多さんが叫ぶ。続けて、カン高い声で「エエ女やのう!あの女、×××の毛も触らせへん!」と放送禁止な金子信雄のモノマネをはじめるところ。
SNSで失礼のあった女性をブロックしていた泰延さんが、将多さん、豪さんに説得されて配信中にブロック解除するところ。
泰延さんのボケを完全スルーして、豪さんが次の話をはじめるところ。
「人に「機嫌が悪いね」と言われたことがない」という泰延さんに、「いや、そんなことはない」と異を唱える豪さん。(少し不機嫌になって)「なんだと!聞き捨てならねぇな、表に出ろ!」という泰延さん。「これが終わったら話つけようじゃねぇか!」と答える豪さん。
人生の本質をふれる深い話のあとに、エロ話がある。真摯に仕事に向き合ってきたからこそいえる言葉のあとに、どうでもいいジョークが入る。
教養とバカ話、知的で抽象的な話と泥臭いリアルな話。縦横無尽にアクロバティックな会話が展開し、あっというまに2時間が終わります。
でもこの配信の素晴らしさの根底にあるのは、ベタな表現で恐縮ですが、御三方の「人柄」だと思います。
御三方とも偉ぶらず、悩んでいる方に上から目線で語らず、あくまで「ひとりの人間として」対等に向き合おうとされています。
さて、このレポートは、配信のハイライトである、泰延さんのお父さんやお兄さんのエピソードを紹介して終わる予定でした。
ところが、わたしの筆力ではその魅力がどうしても伝えきれないので、ぜひそこは動画をご覧になっていただきたいです。
今回の配信は、前回、前々回とは異なり、視聴者から募った援助資金で行われました。最初にYouTubeに配信された版とは異なり、豪さんが編集した版には、エンドロールに援助者の名前がリストアップされています。
https://www.youtube.com/watch?v=zvc7L7w8P4U&t=71s
配信を観て「いいな」と思った方は、将多さんのnoteから今後の配信分の援助もできる(はず)なので、参加してみてはいかがでしょうか?
https://note.com/shota_maeda/n/naeb0b3a11ec4
YouTubeに上がっている動画を、自宅で酒を飲みながら観ていると、「彼らと一緒に酒を飲んでいる」気分になれます。
いまのような時期にはぴったりの動画だと思います。
【おまけ】
このイベント後に、高円寺の居酒屋で打ち上げがありました。
以前、大阪でのイベントの二次会に参加された方が、Twitterに次のような投稿をしておられたんですね。
「泰延さんが食べきれない揚げ物をオーダーして、みんなで死ぬ思いで食べました」
「揚げ物地獄です」
それをみて、正直、「これだから笑いをとるために話を大袈裟に“盛る”関西人はイヤなんだよ」と苦々しく思っていました。
ゴメンナサイ。
仰る通りでした。
あれ以来、揚げ物をみるたび、高円寺の夜を思い出して、「ウォエッ」となります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?