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新しいコロナの時代に~必要なのは分断ではなく、優しさ~

新型コロナウィルスの新規感染者が、急増しています。
今まで経験したことない感染力に、どこの医療現場も大混乱しています。

ですが世間は楽観しているようです。
感染者の急増の中でも緊急事態宣言も発動されず、飲食店は時短のみで、イベントも開催されています。
世間の緊張度と、医療従事者の緊張度にだいぶ隔たりができています。
なぜこんな事になってしまったのでしょうか。

オミクロン流行初期と、現在の状況の印象

分断してしまった理由を順を追って考え、
その結果、現状はどんな状況になってるか。
そして、今後どういうところに注意すべきか。
それを考えてゆきたいと思います。

1.オミクロン株の特徴

1-1.待ちに待った弱毒化

コロナは最初の流行から2年がたち、流行のたびに感染力と重症化率を増してきました。
そしてA国の大統領のように、ノーマスクやコロナ陰謀論を唱えていた人も少しずつ勢いを失っていきました。

ただついに弱毒株が主流になりました。
ドイツの某学者は「新型コロナウイルスパンデミックの終息を繰り上げる『クリスマスプレゼント』になるかもしれない」
感染対策に抑圧されていた人たちは、福音に思えたと思います。
一般の人が「コロナはただの風邪」と言っているのを、よく耳にするようになりました。

新型コロナウィルス変異株ごとの入院率、死亡率

ただ我々医療従事者は、楽観できません。
(死亡者数)=(感染者数)×(死亡率)ですから、また感染者、入院、死亡者が増えるぞ!!と危惧していました。

1-2.特に若年者は重症化が少ない。ただ高齢者は・・・

そして第6波が襲来しました。
いまだかつてないほど感染者が増えました。

自分の診療した患者様で推察すると、
多くの若い人は「少しひどいインフルエンザ様症状」という印象です。

高齢者は症状は様々で、「軽い風邪のような症状」の人もいれば、「高熱が続いてあっと言う間に衰弱していく」人もいます。
その高齢者では、入院が必要となる人が散見されます。

第5波と第6波の年代別新規重傷者の内訳

厚労省の新型コロナアドバイザリーボードで公開されている数字をみても分かります。
弱毒化の恩恵は、特に若年者が強くうけているようです。

1-3.総じてみれば、インフルエンザよりは強毒だよ!!

では新型コロナはただの風邪なのでしょうか。
インフルエンザの死亡数については、そのシーズンの流行の型や、調査の仕方などで大きく異なります。
なので新型コロナウィルスと同じような手法で調査された、2009年の新型インフルエンザでデータを比較してみます。

2009年の新型インフルエンザと、コロナ第6波の比較

第6波のまだ初期の段階の死亡数で、すでの新型インフルエンザを上回っています。
ですが、死亡数はすでに新型インフルエンザを上回っています。
そして今後医療混乱の中で、死亡者は急増する予感さえします。

2.今の現状の社会

2-1.感じる社会の分断

~若者集団と高齢者集団の分断~
学校や会社には、70代以上の高齢者があまりいません。
おそらくコロナにかかっても、重篤化しなかった人たちが多いのではないでしょうか。

ですが高齢者がたくさんいる病院や介護施設は、具合の悪くなる人が少なからずいます。
感染力の強さのみならず、その毒性というコロナの怖さを目にします。

世間の新型コロナ(オミクロン)に対する考え方のイメージ

ですが、この考え方の違いが生じてしまうのは、ある意味仕方がないかなと思っています。

2-2.どこも病院はひっ迫している

~院内感染と戦い、どこも満床~
少し前にオミクロンの感染爆発を経験した沖縄や海外の情報から、以下のような情報が分かっていました。
・オミクロンは今までのような感染対策では防ぎきれないこと
・結果、院内感染や医療スタッフの欠員と戦うことになること
それをうけて、医療従事者のようなエッセンシャルワーカーは、濃厚接触者でも一定条件下で勤務することが可能になりました。
というか、働かされます。

要は院内感染のリスクよりも、病院機能の維持を重点においたのです。
お陰でほとんどの病院や介護施設は、職員の欠員と戦うのではなく、院内感染と戦っています。

また、院内感染をおこすと、その患者のコロナが陰性化するまで退院できません。またコロナから回復しても、その後長いリハビリが必要になり、退院できないことも多くあります。
必然的に病院はどこも満床になります。

東京ルール(救急搬送困難例)の件数・・・過去最大!!

現在東京都は救急車を呼んでも、(特に入院が必要そうな方は)受け入れ先がなく混乱しています。
かつてないレベルで医療はひっ迫・混乱しています。

2-3.病院や介護施設は安全ではない

~入院は感染のリスクよりも、病気を治すメリットの方が大きいときに~
現在はベッドが空くと、近隣のクリニックや介護施設、救急隊からすぐに患者の受け入れ要請の電話が殺到します。

昨日は誤嚥性肺炎の高齢者を受け入れました。
病院は今、感染防護はしているが、院内感染のリスクが十分にありうる事をお話ししました。
自宅や、まだ感染がおきていない介護施設であれば、患者がもし亡くなっても、最期を迎える時や火葬は立ち会えるでしょう。
ですがコロナに感染してその隔離期間に亡くなってしまうと、最期の時や火葬は立ち会えないこともあります(施設や地域にもよります)。
そのリスクを冒してでも、入院するか。

以前は「病院に入院させるのが、何かあっても安心だから」「介護施設に入所させる方が、介護をしっかりやってくれる」そう考えておられたと思います。
確かにそういうサービスを提供する場でしたが、今は病院や介護施設は安全ではありません。

心苦しくはありますが、感染のリスクよりも、病気を治すメリットの方が大きいときに入院してもらう場、そういう風に考えています。

3.第6波の中で注意して欲しい人・事

3-1.「コロナはただの風邪」と思わずに注意してほしい人

もちろん高齢者は感染に気を付けなければいけません。
ですが、病院や高齢者施設で働く職員も勿論感染に注意が必要です。

他、オミクロンの感染源で多いのは、圧倒的に家族内感染です。
高齢者がいる大家族は感染に気を付けなければいけません。

感染に気を付けて欲しい社会集団

逆に核家族の方や、高齢者のいない会社の人は、積極的に社会活動をして欲しいと思っています。
自分の行きつけのビアバルやランニングイベントなど、自分が社会活動ができるようになった時にも残してもらうため、是非積極的にお願いします。

なくなっていたら大泣きします!!

3-2.医療は崩壊~事故や急病は避けて下さい~

今、救急車の搬送困難の件数が爆増しています。
そして搬送困難なのは、コロナ患者だけではありません。
一般の病気の人も、搬送、受け入れが困難になっています。

本来助かるはずの病気が、助からなくなることがあります。
外傷を負っても、搬送先が見つからないかもしれません。
事故で怪我を負わせてしまったとき、助からないかもしれません。
結果多額の補償金が生じるかもしれません。

もちろん病気や事故は、なりたくてなるものではありません。
でも今だに
「酒に酔って転倒して頭を打って救急搬送」
「風の強い日に、自転車で風にあおられて転倒」
という方もいます。
飲み過ぎや、不摂生に気を付けて下さい。
自転車や車の運転では、周囲の人も怪我をさせないよう注意して下さい。

3-3.年配の方に優しく、マスクも

現在若い方を中心に、ノーマスク、反ワクチン運動をする方もいます。
やっと弱毒化したウィルス、開放的になりたい気持ちも分かります。

ノーマスク、若い方の集団では仕方ないですが・・・

ただ年配の人は致命的になる可能性があります。
自分のことだけではなく、年配者のことも考えて下さい。
電車バスやスーパーなどの店舗といった高齢者のいる環境では、相手に気遣ってしっかり感染対策して欲しいものです。

3-4.医療従事者を責めないでください

残念ながら入院中にコロナに感染する方も出てきています。
そして残念ながら、お亡くなりになる方もいます。
先述したようにコロナに感染していると、最期の時に立ち会えません。
また葬儀の際も、直接体を見たり、触れることはできません。

「病院に入院しているのに何で!?」
と理解してもらえない人もいます。
疲弊している中、心無い言葉をもらう事もあります。

コロナの診療をしてもうすぐ2年です。
はっきり言うと、数が多すぎて今までで一番キツいです。

半分ぶっ壊れた医療体制でご心配をおかけしますが、
どうか、責めたり罵ったりしないでください。

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