AbemaTVはサイバーエージェントの税金対策なのか?

サイバーエージェントが18年9月期の業績を発表、投資家の注目は18年9月期の着地よりはむしろ19年9月期の業績予想。それはすなわち、「2年連続して200億PL投資をしたAbemaTV事業は、今期どうなるのか?」という問いです。

果たして、来期の業績予想は営業利益300億と今期と横ばい、AbemaTV事業についても「マスメディアまで育てる」というスタンスは変わらず200億のPL赤字というものでした。

「せめて赤字幅の縮小を。。」という期待があったのか、翌日の終値は7%超の下落と、株式市場はネガティブに反応しました(個人的にはメルカリ含め、企業側が投資ステージを明言している事業に対する、株式市場からの早期の黒字化プレッシャーはいかがなものかと思いますが。。)。

これを受け、メディア側からもAbemaTVを不安視する記事が出てきています。例えば下記。

エントリーの中身は極めてフラットで、下記の指摘もまさしくそのとおり。

アベマTVの一番のリスクはむしろ、「(サイバーエージェント本体の)広告やゲームの既存事業が失速して、先行投資を続けられなくなること」(藤田社長)だという。広告もゲームも足元は好調だが、特にゲームは市場が頭打ち状態にあり、いつまでも稼げるとは限らない。組織内の結束を固め、新たな放送局として早期に勝ちパターンを見つけたいところ


とはいえ、藤田社長はamebaの育成、スマホシフトへの複数事業の舵取りを成功させてきており、この点に対する株式市場の信頼度は高いのではないでしょうか。


個人的に気になったのは、東洋経済の記事に対する、はてぶのコメント欄で「AbameTVは税金対策」なるコメントに☆が集まっていたこと。


●AbemaTVはサイバーエージェントの税金対策なのか?

結論1stでいうと、明確に「No」です。下記図表の「税負担率」をみてください。AbemaTVへの投資を開始した2016年以降、税負担率が高くなっているのがわかります。法人税率40%というのが目安となる水準かと思いますが、今期のサイバーは稼いだ利益のなんと57.9%も税金として持っていかれることになります。税金対策どころの話じゃありません。

なんでこんな事が起こっているのか?税負担率を構成する税前利益(同①)はAbemaTVへの投資もありむしろ減少してますが、もう1つの法人税等(同②)はほぼ同水準で推移しています。

これは、会計と税務の違いによるものです。すなわち、サイバーはAbemaTV社で生じたの会計上の損失をうまく使えていないということです。税務上も損失として認めらもらうには「連結納税」という制度を使う必要があるのですが、そのための条件が「完全支配」というもの、簡単に言うとAbemaTVがサイバーの100%子会社だったら、利益と損失を相殺して「税金対策」に利用をすることもできたはずです。ところが実際は、AbemaTVにはテレ朝(さらに今後は電通・博報堂も)という少数株主がいます。

すると「100%子会社でやればよかったのに」というツッコミもはいるでしょう。そこはテレ朝が有するコンテンツ制作力をサイバーが評価したということでしょう。税務上これだけのデメリットがありつつテレ朝と提携したサイバー藤田社長の覚悟が伺えます。


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