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データ分析は料理である!数式のないデータ分析入門書(『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』著:伊藤公一朗)

今回の本

はじめに

カスタマーサクセスに取り組むにあたって、データ分析における考え方をインプットしたいと思い、『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』という本を読みました。

意図的に数式を一切出さない構成となっているため、非常にサクサクと読み進められる内容でした。各種手法についての細かい説明は本書に任せるとして、以下、読んでいて心に残ったポイントです。

データ分析は"調理法"が大事

データ分析のプロセスは寿司職人の仕事と類似しています。仕入れたネタを調理して、お客さんに差し出すという作業です。

私が以前仕事でお世話になったデータ分析が得意な方も仰っており、やはり本書でも述べられておりました。

データ分析の切り口とはいわば「料理」みたいなもので、素材(=データ)がどれだけ良くても、調理法(=分析)次第でどんな料理(=分析結果)にもなってしまいます。

テクノロジーが発達したことでデータの取得は簡単になったものの、それを有効活用するためには、効果的な分析を行える切り口を見つけるセンスや思考法を知っておく必要があります。

数字に親しみがないとなかなか難しい事ですが、本書ではみっちりとそのセンスや思考法について述べられています。

因果関係と相関関係の取り違いに注意!(他に要因はないか?)

物事を決定する際に鍵となるのは多くの場合「因果関係」であり、相関関係ではないのです。

特に口酸っぱく言及されているのが、因果関係と相関関係の違いについてです。

因果関係は、「とある要因が、とある事象を発生させた原因であると明確に言えるであろう」関係性です。一方で、相関関係は「とある事象が発生すると同時にとある事象が発生している」という、あくまでも事象が同時に発生しているだけの関係性で、原因とは必ずしもいい切れません。

因果関係と相関関係、どちらにフォーカスした施策を打つべきかというと、勿論原因を特定している因果関係の方です。しかし、世の中には相関関係に注目してしまい、トンチンカンなアクションを起こしてしまっている事例が多々あるとの事。

本書では、「電気を付けたまま子供を寝かせると近視になる」という研究を発表した際の例が取り上げられています。論文では"相関関係が見られる"と表現しているにも関わらず因果関係のように世間に広められてしまい多くの親たちが信じてしまったものの、その後「親が近視だと遺伝で子供も近視になりやすく、その近視の親が寝る時に電気を付けていた」という、電気の付けっぱなしが直接的な原因ではないと明確に表した別の研究結果が出てきたというオチがついた話です。

上記、結論を知っていれば笑い話ですが、実際に分析する側及び報告を受ける側に立つと、注意していないと容易に因果関係と相関関係を取り違えそうだなぁと感じます。なぜなら分析結果が"それっぽい"ですもの。

本書では因果関係を抽出するための考え方やフレームについて事例とともに豊富に掲載されており、いかに因果関係にフォーカスするかの重要性をバシバシ叩き込んでくれます。因果関係 is 大事。

データ分析には不完全性も限界もある

どんなに寿司職人の腕が良くともネタ自体が腐っていては話になりません。

本書では優れた分析手法についてまとめられていると同時に、データ分析の不完全性や限界についても触れられています。

取得したデータがそもそも良くなかったり、データ分析の結果がデータ取得元のグループ以外に適用できるかであったり、因果関係が認められなかった分析が世に出て来にくかったり…

データ分析にはそうした色んな懸念点もあり、それらを考慮した上で分析を行っていかなければならないと意識付けすることができました。何でも完全なものなんてありませんが、それを知った上で動くかどうかは全く結論は変わってくるだろうな、と。

まとめ

300ページないくらいの新書ですが、私にとってはみっちりした内容でした。これまで学問として体系的にデータ分析を勉強した事はない私ですが、データ分析を行う上でのマインドセットを得るには十分だったような読後感です。

データ分析を行う事になりそうな方、特に非エンジニア層の方はデータ分析について知る取っ掛かりとして最適ではないでしょうか。私もまだ本書で知った気になっているだけですが、関連書籍に手を伸ばしていって知識を深めていければと思います!

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