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カスタマーサクセス読書感想(『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』)

今回の本

はじめに

『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』を読みました。

カスタマーサクセスに取り組む人たちにとっては最早バイブルのような扱いを受けている本であり、評判通りその内容は非常に示唆に富んでいました。

「そもそもカスタマーサクセスってなんだ!?」「カスタマーサクセスって何をすればいいんだろう?」と悩んでいる初心者は必読かと。私もある程度知識だけはついてきていますが、何度も読み返しながら血肉にしていきたい本だと思いました。

カスタマーサクセスの過去・現在・未来

本書を読んでいていいなと思ったのは、カスタマーサクセスの成立過程からかなり詳しく書いてあるところです。概念が成立してから長い歴史を誇るセールスやマーケティングだと諸々知っている前提で各論から論じられる書籍も多い一方、最近勃興した概念であるためとても慎重に説明を重ねてくれています。

カスタマーサクセスの思想をざっくりまとめるとこんな感じ。

発端は今やSaaSの王者であるSalesforce。
Salesforceがグイグイ成長していた2000年代前半、営業成績だけ見ると順調そのものだったのに解約率(月8%、1年で前年いた既存顧客の殆どが離脱する数字!)を見るとそう楽観していられない事に気付いた。
解約されない=顧客を繋ぎ止めるため、顧客に最大限製品価値を引き出してもらい製品(およびSalesforceと付き合う事)の有効性を実感してもらう事で離脱を防ごう!という事で“カスタマーサクセス”が生まれ、SaaSが一般的になった現在は他社も含めて試行錯誤が続けられている。

SaaSというサービス形態が成立してから発生した概念ということもあり、とても丁寧に論を進めてくれるのはありがたいなぁと思います。

そこから、具体的な打ち手(ヘルススコア設計やタッチの仕方等)からカスタマーサクセスが実現する未来まで、一直線のタイムラインをなめるように論が展開されていきます。内容としても「人付き合いの仕方」レベルの普遍的な心構えから書いてあるようなものなので、古びることは少ないでしょう。

そうした意味でも、本棚の片隅に本書を置いておくのはとても有益なことだと思います。

カスタマーサクセスは愛!とても健全な志向だと思う

そんな中で、カスタマーサクセスって何?という定義については、本書の中では「ロイヤルティ(特に心理的ロイヤルティ)の創出」であると言い切っています。

心理的ロイヤルティを更に言い換えると、「」です。そう!LOVE!

顧客との関係性を築いていくというのは、愛を育んでいくようなもの。顧客の状態に応じて気の利いた声かけをしてみたり、時にはぐいっとサポートに入ってみたり。そうして築かれた関係性の中で生まれた強い愛があれば、ちょっとの失敗なんてそんなの些細な事。「引き続き、宜しくお願い申し上げます!」の一言をメールの文末に置けるものです!

…ちょっとテンションがおかしくなりましたね。ちょっと落ち着いて…

心理的ロイヤルティというのは、いい意味での「依存心」だと思うんですよね。もっとライトにいうと「頼りたい」と思える関係という感じでしょうか。

顧客の課題の解決にフォーカスした製品を作り、しっかり製品を使ってもらえているか?と適切にフォローアップする事で関係性を構築し、頼ってもらう事で契約も持続する。こんな感じの関係性です。

とても健全な関係性ですよね?売って終わりみたいな愛の欠片もない関係とは違い、カスタマーサクセスはとても素敵な概念だと思うのです。

カスタマーサクセス≠カスタマーサポート

私の現状に一番ささったのは「カスタマーサクセスはカスタマーサポートではない」という章。

本書ではカスタマーサクセスとカスタマーサポートを以下のように区別しています。

カスタマーサクセス⇨先回り型で成功重視の収益ドライバー
カスタマーサポート⇨要望対応型で効率重視のコストセンター

そう、真逆の立ち位置なんですよね。これは私の感覚ともピタリときました。サクセスとサポートの志向はほぼ真逆に位置しているような状態で、同じノリで施策を動かしていくとどうしてもぶつかりがちになりそうです。
※勿論、組織にはどちらも必要で、あくまで役割と志向が違うという主張です。

いま私が所属している組織はサポート志向が強く、サクセスもこれから強化していこう!としているようなフェーズです(それに伴って私もジョインしました)。こういう企業さん、いま多いのではないでしょうか。

この相反する志向がぶつかって、施策がうまいこと前に進まないという雰囲気を少し感じていたので、その要因がストンと腹落ちしたという感じです。そのうち、組織ぐるみの対策を打たないといけないタイミングがそのうち来るのでしょうね。その際には本書で読んだ立ち位置の違いをより意識しながら、カスタマーサクセスに邁進していこうと思います。

まとめ

カスタマーサクセスの入門書としては最適な一冊だと思います。ここまでカスタマーサクセスについてまとまっている書籍は、当記事執筆時点で殆どみあたりません。内容も普遍的であるため、また10年後辺りに読み返しても輝きは失われていない一冊になっていそうだなと思いました。

顧客のことをグッと意識できるようになる本なので、カスタマーサクセス職の方だけでなく、仕事をする遍く全ての方にオススメできる本だと思いました。

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