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キュンとしたこと

ロンドンに着いた。

10時間の深夜トランジット待ち時間から、ぶっ通し12時間のフライト(カモン・エコノミー症候群)からの、ホテルのチェックインまで5時間くらいをデパートで過ごすことになり、体が浮いている感覚の中でフラフラと歩いていた。
(リュックを前に背負っているとだいぶ浮くことにも気づいた)

早朝のデパート。面積は日本の5倍はありそうな巨大デパートだ。でも並ぶ店には日本で見るブランドも多いから、世界は大体メガブランドに牛耳られているなあと改めて思う。

通り過ぎる人を一人一人、小さな黄色人種女性の命綱(パスポート、ケータイ、財布)を狙っているヤツではないかと警戒しつつ、やっと椅子に落ち着いた。

特に近づいてくる怪しい人もおらず、安心していたのも束の間、早速話しかけられて思わずバッグに手が伸びる。ほがらかな声の主は一見綺麗な身なりで、Hello ~! とイギリスらしい発音で他人である私に挨拶してきた。

キタ!!警戒MAXで横のリュックの持ち手を掴みながら、Hello.と手短に切り返す。
何か言ってきたが聞き取れず適当に相槌を打つ。向こうは「この席は店のものだ」とか言ってることがわかり、そうかそうかと席を離れた。

「店」と言っても、ロンドンのデパートはオープンスペースでやっている形状の店もあって、私はどうやらその店の開店準備の邪魔だったらしい。彼女が本当にその店のスタッフだったのか、ジプシーなどの手慣れたスリさんだったのか、今後のロンドン生活を経ればいつか分かってくるのかも知れない。

キュンとした話は、これではない。
つい、前段が長くなってしまった。

そうやってまたフラフラとデパートを浮遊する中で、柱の手前に立つ男性を見かけた。何やら真剣に斜め下を見ている。
彼女が見えた。よく、日本でも公共の場で別れ話をする人がいるが、それかと思ってみれば、女性が男性に甘えていた。

そう、キュンとしたのはその瞬間である。
黒い肌とふくよかな体型、細かいカールがかかったボリューミーなヘアを持つその女性を見て、日頃東京で「白めの肌と細身で小柄な体型、ストレートまたはよく整った髪」に見慣れていた私はキュンとしてしまったのである。

3秒くらいは続いたか。キュンが。
なんでだ?とすぐ考えた。
単に女性が相手の男性に甘えているよくあるシーンなのだが、「白め〜整った髪」が普通と思い込んでいた私がいたと気づいた。
キュンとした理由は、ああ世界共通だな!という気持ちと、何か固定の「理想の女性」を追いかけすぎることの滑稽さから解放された気がしたからだと思う。

東アジア(日中韓らへん)では大体、美しさ・可愛さの定義が決まってる気がする。アイドルも割と似たところを目指し、一般人がそれに倣うような構造になっていないだろうか。
それがここロンドンくらい多様な人種が集まることによって、一気に色んな形に広がってる気がした。

自分もどこかでそれに縛られていたのが、やっぱりありのままの自分で愛し合える関係がいいものだと再確認できた。
美しさを諦めるのではなく、ただ自分を捻じ曲げる必要はないと。

ロンドンではもっぱら「小柄な黄色人種女性」に徹する私であるが、そんな私なりの魅力はなんだろうか。見つけて伸ばせたらいいなと思う。

以上!夜中3時のロンドンより。

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