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お友だちに会いに

うちの近くに
入場料無料の
「自然観察の森」がある。

ごっこ遊びや妄想が
好きなくせに
こどものごっこ遊びに
付き合うのは苦手

そんなわがままな私が
こどもとの時間を
持て余したときには

散歩が一番

自然観察の森での散歩にも
何度か出かけたことがある。


この森は整備されていて
観察コースは何ルートかあり
平坦な道もあれば
アップダウンもある。

さらにはターザンロードと
名付けられた
急でワイルドな道なき道も。

中2長男が園児だった頃か
閉園の1時間くらい前に二人で来て
調子よく散策していたのだけれど

閉園時間が迫ってきて
近道しようと
ターザンロードへ
足を踏み入れたところ

私一人でも精一杯
長男一人では歩けるわけもなく
私が長男を抱っこして
下りることもできず

焦って救助依頼の電話をかけようかと
真剣に考えたこともあった。

結局電話はかけなかったが
どうやって戻ったのか
よく覚えていない。


コースを散策中に
一羽のうさぎに
出会ったこともあった。

ピーターラビットを思い起こすような
茶色い毛並みのうさぎ

少し離れたところにいたこども達を
急いで呼んで戻ってみたら
もう姿はなかった。

森に住んでいる野生のうさぎなのか
それとも誰かが飼っていて
放されたうさぎなのか。

とにかくこんなところで
うさぎに出会ったことに
私はものすごく興奮した。


センターには
展示、体験コーナーがあり
こども達はここでも
ずいぶん楽しむことができる。

このセンターには
「ひみつのお部屋」があり

扉には
「新しいお友だちがいますよ」
「注意してあけてください」
と張り紙されている。

扉前の足元にはドクロマーク。

ドキドキしながら
重いドアを少しだけ開けてみれば

すぐ目の前にイノシシの剥製!

電気のついていない
薄暗い部屋にたたずむイノシシの
牙とギランとした瞳に息をのみ
慌てて扉を閉めてしまう。


長いこの夏休み
自由人の私とこども達は
それぞれに好きなことを
楽しんでいるのだけど

久しぶりに
森のお友だちに会いたくなって
こども達を散歩に誘ってみた。

センターで受付したらすぐに
「新しいお友だち」をご訪問。

自分から会いにきたくせに
何度も訪れてわかっていても

初めてのときと同じく
このお友だちとのご対面は
数秒で終わらせてしまう。


木が生い茂る森の中は
木陰で涼しいと感じたけれど

近寄ってくる蚊から逃げるように
急な階段を急いで登れば
一気に汗が噴き出してきた。

汗と虫刺されの代償として
自分の住んでる町を見下ろす
景色をいただく。

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遭難しかけたターザンロードを
避けるのは絶対条件。

それでも木の枝が折れて倒れ
行く手を遮っている箇所に
出くわした。

泥棒が防犯用赤外線を
避けていくかのように
木の枝をくぐったりまたいだりして
なんとか通り抜けることに成功

無事センターまで帰ってこれた。

結局この日の散策では
幻のお友だちとは会えなかった。


きっとこれからも私は
時々会いに行きたくなるんだろう。

必ず出迎えてくれる
「お友だち」と
また会えるかどうかわからない
「お友だち」に。

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