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本は「売る」ものであって「売らされるもの」ではない。『まちの本屋』(田口 幹人)【読書メモ】_09

本好き、本屋好きにとってとても悲しくなる記事を見かけた直後、青山ブックセンター六本木店に、三省堂書店京都駅店などの書店閉店ニュースが立て続いていて切ない今日この頃。

なんだか無性に読み返したくなった、『まちの本屋』(著:田口幹人、編集:斉藤尚美、編集協力:上阪徹/ポプラ社)を再読。2015年11月に販売された当時、「ああ、いつか田口さんに『この本を売る!』と思ってもらえる本の作り手になりたい」と思ったものです。

出版界隈の人には、いまさらの説明ですが、著者の田口幹人さんは、岩手県・盛岡駅の駅ビルにある「さわや書店フェザン店」の店長。

「売る」と決めた本は、あらゆる工夫をして徹底的に売ることでも有名で、さわや書店から生まれたベストセラーは多い。

「文庫X」として話題になった清水潔さんの『殺人犯はそこにいる—隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件—』(新潮文庫)を仕掛けたのもさわや書店です(という事実を、この読書メモを書いていて改めて認識。そのおかげであの本に出会えたのか。ありがとう、さわや書店さん!)

「これだ」と決めた本は、2000冊は売る。でも、その数字だけが注目されるのは嫌だと田口さんは言う。まったく売れなくても、その本が棚にあることで他の本が動くこともある、と。「本屋の理想」は語らず、出しゃばりすぎず、あくまでお客さまにとっての理想の本屋を追求し続ける。

日本中、こんな本屋さんだらけだったら、世の中に本好きの人がどれだけ増えるだろう。本屋で書店員さんに声をかけることってほとんどないけれど、もっと声をかけてみたいと思った。

ところで、さわや書店のツイッターを見ていて思ったのだけれど、店舗ごとにSNSを運用している本屋ってどれぐらいあるんだろう。
「○○書店、今週のおすすめはコレ!」みたいなのPOP付きで投稿してくれたら、その本屋の特徴も分かるし、「ああ、帰りに寄ってみようかな」となりそうな気がした。

(出展:日本著者販促センター

20年で約1万店舗が減少している本屋。当事者のわたしたち、未来はどう作っていけるだろう。とりあえず、明日も頑張ろう。

・まちには本屋が絶対に必要
・本には“旬”がある。新刊=旬ではない
・本屋の現場からミリオンセラーは作れる
・狭い店舗だから、朝と夜で平積み商品を入れ替える(来店層が違うから)
本棚が日頃から“耕されている”ことが大切(本屋の人、ここメモ必須…!)
・「売らされる本」より「売りたい本」
・「売りたい本」は「売らなければいけない本」
・独自色を鮮明に打ち出す
・これぞと思った本は店のあちこちに置く(これ、確かに手に取る)
・「寄り添う」けれど「すり寄らない」
★データに依存しない。データは過去の蓄積。
・データにコントロールされると、本は「売らされる」ものになる
・売れる本にも売れない本にも、それぞれ必ず理由がある
・自分たちがやりたいことより、「お客さまにとっての理想」を考える

#読書メモ


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