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登山中の雷と平地スポーツ主催者の落雷事故への法的責任

山の落雷で何度か怖い思いをしたことがあります。

最も怖かったのは、8月上旬に朝日岳山頂下で経験した落雷です。
その日は、栂海新道を日本海まで歩いてみたいと思い、蓮華温泉から五輪尾根を登り、幕営地として予定していた朝日小屋を目指していました。
朝日岳山頂近くまで来た時、突然、少し離れた場所で雷が落ちる音が聞こえ、間もなく、閃光となんとも言いようのない臭いがしたと思うと、落雷の大音声が周囲に響き渡りました。
立ち止まり、様子を見たのですが、立て続けに落雷が続き、落雷は近づいてくるようでした。
そこで、手にしていたストックとザックを置くと、ハイマツの中に身をかがめ雷をやり過ごそうとしたのですが、落雷はは行き過ぎたと思ったら戻ってくるような感じで、相当な時間、怖い思いをすることとなりました。

また、3年前のやはり8月上旬、薬師沢から雲ノの平へ登り返すところでも怖い思いをしました。
その日は、折立から幕営地として予定していた雲の平を目指していたのですが、昼頃に太郎平から薬師沢へ下り始めたところで強い雨が降り始めました。
日程的な問題もあり、薬師沢へ着いたのは2時過ぎだったと思います。
未だ、薬師沢は問題なく渡れたのですが、登り返したところで、雷が落ちる音が聞こえてきました。
次第に雷は近づいてきたことから、樹の根元から少し離れたところで立ち止まり、様子をみることとしました。
しかし、雷は遠のくことなく、近づいてきました。その後、相当時間、周囲を巻くように落ち続け、雨の中、長時間待つしかありませんでした。
その日は5時半頃にようやく雲の平の幕営地にたどり着き、テントを張ったのですが、翌日も三俣で落雷にあい、更に翌々日は、テントを張った烏帽子小屋から薬師岳方面で落雷が続いているのがみえました。

8月に入ると落雷が多くなりますので、セオリーとおり午前中で行動を終了するのが肝要ではあります。
しかし、休みも限られていることから、このセオリーを実践するのは中々困難なことではありますが・・・。

落雷は山だけではなく、平地でも問題となります。
スポーツ競技場での落雷に関しては、競技の中断が関係することもあり、その対応に際し、難しい判断を迫られることがあります。
近時では、特定地点の天気予報の精度も上がってきてはいるようですが、自然現象であることから、その完全な予測は困難だと思われます。
また、競技の主催者も通常は落雷のメカニズムの専門家ではないことから、正確な情報を競技中の落雷対応に反映させ、ベストの対応をおこなうことには一定のハードルが存在するともいえます。

そこで、競技中の落雷事故によりプレーヤーが死傷した場合、主催者にどのような法的責任が生じ得るのかが、問題となります。
このような場合、結果が生じたから責任がある(結果責任)とされるのではなく、主催者の過失責任が問題となります。
特に当時の具体的な状況において、落雷事故を回避することを期待でき、また、回避することを法的に義務付けることが出来るのかという点が問題となり得ます。

果たして、どのような場合に気象の専門家でない主催者に過失責任が認定されるかという点は、自然現象だけにケースによって異なることとなります
過失責任の認定の際に、どのいような点が重視されるのかということについては、サッカー中の落雷事故の法的責任が問題となった事件が参考になります。
事務所のホームページでこの事件について扱った下記のブログ記事を公開していますので、ご興味をお持ちの方はご覧いただければ幸いです。

類似の事件としては、ゴルフ場の落雷事故においてゴルフ場関係者の法的責任が問題となった裁判もあります。
この裁判についても同様に事務所のホームページ上のブログ記事で扱っていますので、ご興味をお持ちの方はご覧いただければ幸いです。


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