エレキギターでの音作り(本体とアンプの基礎解説)

最初に

何よりもチューニング(オクターブチューニング)!まずはそこから。

記事の対象者

  • ギター始めて機材を用意したけど、どうやって音を変えたら良いのかわからない方

  • 思ったように音色を調整できない方

記事の目的

各操作部および設定について

  • 作用が理解できるようになる

  • 効果が予測できるようになる

対象とする機材

  • エレキギター本体

  • ギターアンプ本体(ビルトインのエフェクタも除きます)

  • アンプは自宅で利用されるような小型コンボアンプを想定しています。

大前提

音の作り方、音色自身に正解はありません。ついついネットで調べて出てきた、標準的なお手本の枠に縛られてしまいがちです。私もそうでした。しかし、実際あれこれやっていると、これでいいの?という極端な設定がハマることもあります。”常識”にとらわれることなく、自分の耳に、感性に従いましょう!


ギターアンプ編

ギターアンプの知識を踏まえたほうが、エレキギターの作用も理解がしやすいです。そのため、ギターアンプについて先に解説をします。
ギターアンプについては、アンプ部、キャビネット+スピーカーユニット部に分けて解説します。

アンプ部

1.アンプを構成する機能ブロック
大きくは①プリアンプ部、②パワーアンプ部、③キャビネット部に分けられます。ギターが生み出す音声信号はとても微小であり、スピーカーユニットを鳴らすだけの力がありません。プリアンプ、パワーアンプで増幅することにより十分な電力になります。

アンプの機能ブロック

2.増幅ブロック(+歪み)
ここで重要なことは”歪み"です。いわゆる”ドライブサウンド”、”オーバードライブ"、”ディストーション”といったギャリギャリ、ギシャギシャしたロックギターサウンドのことを”歪んだ音”と呼びます。元来歪は”オーバードライブ”の文字通り、過大入力による音割れ音に端を発します。現代のアンプでは、A)過大入力による信号の変形、B)ダイオードなどにより強制的に変形の2パターンがあります。なおダイオードを使う場合、一定の電圧が超えた分を捨てるようなイメージです。そうすると上図のように一部が欠けたような波形が出来上がります。ここからもわかるように、ギター音声の音量と歪み量には関係があります。ここ大事! ギターアンプの”GAIN"ノブは増幅率を小←→大させるものであり、大きくすればその分歪が強くなります。

※なおオーディオ機器では歪は厳禁ですが、ギターアンプでは音色を作る要素として歪むことを織り込んだ設計になっています。

3.イコライザー(EQと記されます)
イコライザー自体は、一般的なオーディオ製品(それに相当するスマホアプリなど)でも利用される機器なのでご存じの方も多いと思います。
ポピュラーなのは、低音域・中音域・高音域からなる3バンドEQがポピュラーです。小型アンプの場合、コストおよびスペース削減のため、2バンドの製品も多く見かけます。ギターアンプ上では、BASS(LOW)/MIDDLE(MID)/TREBLE(HIGH)と表記されていることが一般的です。

EQ設定で大切なことは、低/中/高音域、それぞれ影響し合うということです。これは聴覚上、電気回路上の両方にいえることです。

まず聴覚上についてです。たとえば低音域を強くすると高音域が聞こえづらくなります。低音域を弱くすると高音域が際立ちます。高音域を変化させた場合も、低音域に対して同様の変化が感じられます。ほしい音域を強めたい場合、他の音域を弱めるという方法もあるわけです。

次に電気回路上についてです。EQ回路にも多様な回路が存在しており、他の音域がどのように変化するかは様々です。しかし影響するものと考えていただいて差し支えないと思います。水が入ったタンクに、”低”、”中”、”高”という3つの蛇口があるとします。”高”だけ開けると元気よく水が出ていましたが、”低”と”中”も開けると”高”があまりでなくなります。EQ回路でもこれと同じようなことが起きています。ぜひこれらを想像しながらノブを操作してみてください。

4.ボリューム
ボリュームってヒネると音が大きくなるので、なんとなく”増幅”するイメージがありませんか?しかし実際には逆で、プリアンプの出口についている蛇口であり、止めているものを少しずつ開放しています。

5.高音域について
高音域を上げると歪み成分もよく感じられます。GAIN調整時にはぜひTREBLEも合わせて調整してみてください。
それから、私のそばにあるPEAVEYとIBANEZ、どちらもTREBLEは2程度です。これらのアンプ、TREBLEを5まで上げたらもうダメです。音量を大きめで使っていることもありますが、極端な設定も試してみてください。大きく印象が変わるかもしれません。

補足.ギターアンプのノブ操作について
各ノブ大体は1~10の幅を持っています。その中のほんの僅かなところに美味しいポイントを持つこともあります。私の好きな音って、歪みがディストーション!ってなるところの少し前、強く弾いたときにブリっとした歪み方をするところが好きです。ギターのボリュームととても微妙なところを探って、コレコレッという音を探しています。レビュー動画のような雑な操作では、到底美味しいところは見つけられないと思います。時間はかかりますが、自分のアンプとギターの美味しいところ見つけてあげてください。

キャビネット+スピーカーユニット部

1.ギターアンプとしての特徴
ギターアンプはオーディオ製品とは大きく異なっています。オーディオ製品は、入力された音を可能な限り再現することが求められます。しかし、ギターアンプでは違います。音が変わっても良いんです、良い音ならば。

ギターアンプで再生できる音域も狭くなっています。特に高音域は顕著です。5KHzをピークとし、それ以上の高音域の音圧は徐々に下がっていきます。ギターという楽器の特徴である中音域を活かすものになっています。これはスピーカーユニットもキャビネットにも言えます。なので一般的なオーディオスピーカーを変わりにつないでも、いい音~とはならないのです。

想像がつくと思いますが、サイズが大きくなればなるほど低音が豊かになります。小さなアンプの音は安っぽくなりがちですが、キャビネットのボリュームがあれば、それだけで本格的な音に近く感じます。特に奥行きの違いは大きいと感じます。’80年代ごろまでの安価なものは特に奥行きの薄いものが多い印象です。ヘビーなサウンドが生まれ、少しずつ増えていったことと関係があるのでしょうか。

2.向き・位置
ギターは正面・中央に近いほど高音が強く聞こえます。自分が聞く音、マイクで拾う音、大きく違ってきます。個人的には明後日の方向を向いたアンプの音が好きです。これはEQ調整したものとは違うんです。

3.置き方
小型アンプは全般的に高音により気味です。耳が痛かったり、なんだか小さい所で鳴ってる感がでてしまいます。アンプの設置方法一つで音を変えることができます。正解はありません。壁に向ける、机の下におく、前に何をおく・・・などなど。机の下で壁に向けておくと、壁からの反射音、そして机自体がキャビネットのように働き、豊かな音になります。おもしろいです。ぜひ色々試してください。

4.音量と音色
小型アンプは音量上げると共に中~高音域が目立ってきます。私は音量を上げるのに合わせBASSを少し上げることが多いです。

5.各サイズについて
キャビネットの高x幅が30cm角ぐらいの大きさの場合、正直うるさーって思うぐらいの音量にしないと、高音カシャカシャ気味のゴチャ付いた音しか出ません。いつも小さな音で鳴らしている方は、一度思い切ってボリュームを上げてみてください。音が抜ける、という表現がわかると思います。
Let's crank up the volume!

6.最近の傾向(オーディオ的アプローチ)
ここまでの話からすれば・・ある程度の大きさのアンプをでっかい音で鳴らせ、となります。確かにそうなんだけれど、実際には大きな音は出せないことが殆どです。これは日本だけの話ではないでしょう。

そこで近ごろのアンプは、小さい音量でもいい音することを目指し、達成している製品が出てきています。個人的な考えですが、パワーアンプ・キャビネット・スピーカーユニットについては、オーディオ的に再現性を高いものにする。そしてギターアンプとしての音は、プリアンプまでに作り上げるという設計です。有名ギターやエフェクタの音を再現するモデリング技術の向上も、この設計に大きく寄与しています。BLACKSTAR社のDEBUTは、見た目は伝統的なギターアンプデザインですが、オーディオリスニングすることも想定していることがアピールされています。


エレキギター本体編

1.ボリュームとトーン
ボリュームはアンプのボリュームと同じ仕組みです。しかしアンプから見ると音声信号の大小を変えることになります。その結果、歪み加減が変化します。アンプを歪ませておいても、ギターのボリュームを絞ればクリーンに近づいていくのです。もう一つ音の変化として大きく違って感じられるのは、高音域の変化です。ボリュームを10→9と絞ると、その時点でだいぶ高音部が抑えられた甘い音になってきます。私自身、ボリューム10では単音メロディーで十分な歪み具合に設定し、リズムパートは8~9で弾く、という設定にしています。(ま、実際には何も弾けませんけれど💦)

トーンはEQに似たものです。ギターアンプでも小さなものだとEQの代わりにTONEが1つ付いている物も良くあります。ギターに備えられているトーン回路は、高音域の逃し具合を調整する回路になっています。コンデンサ(キャパシタ)という部品があります。この部品は特定音域だけが通り抜けやすくなっています。トーンノブを10にすると、この抜き道へのドアが閉じられている状態になることで、ギターアンプへ高音域が全て送られます。逆にトーンを0にすると、ドアが全開になり、高音域はギターアンプへは行かずに近道して帰っていくのです。だから丸い音になります。

2.弦高
弦高で変わることは2つです。一つは音程、もう一つは弦の振動具合です。

まずは音程についてです。弦高が高いと押弦による音程の上昇(いわゆる#シャープ)が大きくなります。オクターブ調整により幾分は補えますが、やはり影響はあります。

次に弦の振動。極端に言えば弦高をグーンと下げると、押弦箇所~ブリッジの間でフレットに触れてしまい、いわゆるビビる、バズ音が出る、という状態になります。音色もおかしいし、音も伸びずにすぐ途絶えます。普通になっているようでも、ほんの僅かに干渉しているケースもあります。5弦ルートのパワーコードEの気持ちよさで3弦の弦高が十分かを私はいつも気にしています。3弦が1オクターブ上の音になるのですが、これがしっかり鳴らないとパワーコードも薄い感じなるからです。

3.ピックアップの高さ
エレキギターのピックアップは、ネジを調整することで高さを帰ることができます。高さと音色にはどのような関係があるのでしょうか。

高い(弦が近い)

出力が大きくなる
 →強く歪むようになる
 →やり過ぎると音が潰れる
高音がハッキリする
音が伸びなくなる
 ピックアップの磁力が弦を引っ張り振動を抑えるためです
音程が悪くなる
 これも弦が引っ張られることによってです

低い(弦が遠い)

(高い場合の逆なので割愛します)

正解はなく、自分の耳が聴いて判断するしかありません。気をつけるとしたらバランスだけでしょうか。ネック側←→ブリッジ側、6弦側←→1弦側、それぞれの出力を揃えるのが基本で、そこから好みに応じて微調整になります。極端なケースとしては、ブリッジ側ピックアップしか使わないなら、それ以外のピックアップはできるるだけ低くし、影響を小さくする、なんていうのもありです。

なお、2.に記した弦高の調整、弦高を変えればピックアップ高さも変わることになります。まず弦高を整えてからピックアップの高さも調整しましょう。


おまけ.録音に関して

皆さん、SNSやYoutubeなどで演奏動画をみておられると思います。あんな音は出んぞーっとなっていませんか?録音方法には次の3つがあります。

1.ライン録音
マイクを使わず、プリアンプやアンプのレコーディング用出力端子などから取り出した音を録音するものです。
特徴としてはとてもクリアです。高音部のメリハリがしっかりしています。ただ個人的には違和感が強く好きではありません。キャビネットシミュレーターやイコライジングなどで、本物っぽさを強めてあげることが必要なのだと思います。

2.オンマイク録音
マイクをアンプのスピーカー近くに設置して録音するものです。スピーカーユニットそのもののを音を多く拾います。そのため、普段人が耳にする音のイメージよりライン録音に近い、余計な音の少ないハッキリした音になります。マイクをスピーカーのエッジ部へ移すと高音が減り、低音が増えます。複数のマイクで異なる音を集音しミックスすることもよくあります。

3.ルームマイク録音
これはスマホ撮影のように、部屋に鳴り響いている音を広く集音するものです。普段部屋で演奏している際の音に近く、リアルな感じがするので自分はとても好きです。ただスマホマイクだと低音が十分に拾われないこともある気がします。

上記1および2の音は、自分の演奏の音からはだいぶ違ってきます。また本格的にされている方は、イコライズやエフェクトなどの処理を施しています。安価なギターやアンプでも、この処理を経ることで一気にそれっぽく聞こえます。この差は大きいです。直接聞く自分の演奏、同じような音にならないのはある程度やむを得ません。あまり何かを追いかけるより、自分の環境での、自分の音を探す方が良いと考えています。


最後に

自分はギターを始めてから相当長い間、自分の音が気持ちよくない日々が続きました。ピックアップを変えてみたり、ギターも買ってみたり。それでもダメでした。自分なり気持ち良い音が出だしたのは、弦高→ピックアップ高さ→ボリュームの気づきを得てからでした。

相当遠回りしてきました。少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。ギターライフを楽しみましょう。

以上、ありがとうございました。

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