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旅 中東欧

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2019年3月の記事一覧

旅する土鍋「リトアニア⑥」東京で見つけた瓶のなかのリトアニア

旅する土鍋「リトアニア⑥」東京で見つけた瓶のなかのリトアニア

舌のうえにのこる記憶旅先にご縁が残る場合は、意識していなくとも帰国後もかの地のあれこれが舞い込んでくるもので。

写真の瓶づめインスタント「ボルシチ」は、徒歩3分のところにあるスーパーで家族がみつけて買ってきてくれた。旅した者の余韻が、家族にも興味関心として伝わることはとてもうれしいことだ。

ボルシチ:ロシアの伝統的な料理で、鮮やかな深紅色をした煮込みスープで、ベラルーシ、ポーランド、モルドバ、

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「旅する土鍋 リトアニア⑤」ライ麦パンのスープに想う

「旅する土鍋 リトアニア⑤」ライ麦パンのスープに想う

静かな誇り彼らの顔はもはや満足気であり、静かな誇りに満ちている。

陶、籐、鉄、木、麻、綿、毛など、素朴な素材をつかった工芸品・民芸品が数えられないほどのテント下にならぶ3日間。リトアニアの守護人カジミエラスの命日を祝うためのカジューカス祭り。

厳冬のあいだに職人やアーティストがつくり溜めた工芸品や伝統食材のお披露目の3日間でもあり、近づく復活祭の飾りを入手する機会でもあるようだ。

静かな美

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「旅する土鍋 リトアニア④」屋台料理を食べながら

「旅する土鍋 リトアニア④」屋台料理を食べながら

前回は、無知ながらも独立国家の成り立ちについてかいつまんだが、同時にナチスによる悲劇も忘れてはならない。

街の人々はおだやかな歩みで、いまは未来を見ている。

リトアニアの首都ビリニュスの街中いっぱいに華やかな工芸品がならぶマーケット(カジューカス祭)を歩きながら。

さまざまな歴史が、人間性をもつくるのかとふと思う。静かで穏やかな人々。日本人以上にシャイである印象を受けた。アジア人であるわたし

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「旅する土鍋 リトアニア③」東欧の歴史とスープに想う

「旅する土鍋 リトアニア③」東欧の歴史とスープに想う

1.「宗」と「史」前回は、宗教と食、工芸は切り離せないということを書いたが、さらには統治や戦争、人種問題など歴史的な事柄も根強く食や工芸に残っているということ。今回の訪欧では、歴史、宗教において、はるかに勉強不足を感じた。食と工芸を結びつけた仕事をするには、まだまだ知り得るべきことがたくさんある。知りたいことが倍増し、さらなる興味と好奇心が広がったことは、旅する土鍋リトアニアとポーランド視察の道に

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「旅する土鍋 ポーランド編①」ポンチキな「あぶらの木曜日」

「旅する土鍋 ポーランド編①」ポンチキな「あぶらの木曜日」

「あぶらの木曜日」

ぎょっとするような木曜日だ。今年は2/28日であったようで。

復活祭前のポーランドでの行いのひとつで、断食前に脂っぽいものを食べる=「ポンチキを食べる」習慣となっているそうだが、この「コンチクショウ」でも「ポン吉」でも「ファミチキ」でもない「ポンチキ」(Pączki ポンチュキとも聞こえる)というお菓子のネーミングが、宗教色に反してどうにも陽気だし、お菓子もお店もかわいらし

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「旅する土鍋 リトアニア①」世界で同じように手を動かしている喜びを分かち合いたいだけなのかもしれない

「旅する土鍋 リトアニア①」世界で同じように手を動かしている喜びを分かち合いたいだけなのかもしれない

その国の新聞にひとつひとつ包まれたうつわと真っ黒になった手。梱包をといて、うつわをひとつずつ台に並べてゆく疲れた笑顔。極寒な空気のなかで動く無骨な硬い指。乾いた唇からはしゃがれた声。流暢でない言葉のネックレス。

これまでに、どれだけの陶芸家と握手をかわしてきただろう。

40代以上の職人とはなかなか英語が通じない。けれど粘土や焼成温度については、なんとなく通じ合える。

知りたいことがあるわけで

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‪中東欧 プリミティブ “時間が呼んでいた”

‪中東欧 プリミティブ “時間が呼んでいた”

仕事への焦燥感いだきながら旅に出た。

オーダー作品の納品半ばにして出発するリスキーな日々。ストレスという敵をつくっては「あたらしいものをつくる」仕事は本末転倒だ。

この数年で作品にガバッと新しい魂を注入したくなっていた。今回はリトアニアとポーランドのプリミティブな伝統工芸をこの目でみてそれが生まれた風土をこの足で感じたかったのだ。

町が近代化してゆく様子。刻々と国は変わる。‬わたし自身のゆら

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