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旅 中東欧

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#リトアニア

ヨーグルトがピンク色にそまるときの味

ヨーグルトがピンク色にそまるときの味

白いまちと白いヨーグルト

春の気配がないままに3月のビリニュス(リトアニア)には真白な世界が広がっていた。眼前の景色のような真白なヨーグルトを朝食でたっぷりいただく。

リトアニアは酪農国。
古くから日本同様に発酵文化をもつ国。

塩味でいただく白い世界

ヨーグルトといえばギリシアと思われるが、ご多聞にもれず東欧もヨーグルト国家。そのひとつにヤギ皮の袋に乳と菌を入れて発酵させていたケフィアヨー

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旅する土鍋 リトアニア⑦「謎めく食材」

旅する土鍋 リトアニア⑦「謎めく食材」

「これはなんですか?」目の前の食材をゆびさして、英語教科書の最初のページのような会話をする。

「ネー」「ニェ」「ニエット」など、NOにあたる音が相手から聞こえてきたら、もうどうしようもないのだ。店の人が「英語わかりません」と言ってるということ。それなのに、彼らのはにかんだ笑顔をみると、早々あきらめられない。好奇心のボルテージは上がるが、寒さにふるえる足をもバタバタさせながら、もう一度チャレンジす

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旅する土鍋「リトアニア⑥」東京で見つけた瓶のなかのリトアニア

旅する土鍋「リトアニア⑥」東京で見つけた瓶のなかのリトアニア

舌のうえにのこる記憶旅先にご縁が残る場合は、意識していなくとも帰国後もかの地のあれこれが舞い込んでくるもので。

写真の瓶づめインスタント「ボルシチ」は、徒歩3分のところにあるスーパーで家族がみつけて買ってきてくれた。旅した者の余韻が、家族にも興味関心として伝わることはとてもうれしいことだ。

ボルシチ:ロシアの伝統的な料理で、鮮やかな深紅色をした煮込みスープで、ベラルーシ、ポーランド、モルドバ、

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「旅する土鍋 リトアニア⑤」ライ麦パンのスープに想う

「旅する土鍋 リトアニア⑤」ライ麦パンのスープに想う

静かな誇り彼らの顔はもはや満足気であり、静かな誇りに満ちている。

陶、籐、鉄、木、麻、綿、毛など、素朴な素材をつかった工芸品・民芸品が数えられないほどのテント下にならぶ3日間。リトアニアの守護人カジミエラスの命日を祝うためのカジューカス祭り。

厳冬のあいだに職人やアーティストがつくり溜めた工芸品や伝統食材のお披露目の3日間でもあり、近づく復活祭の飾りを入手する機会でもあるようだ。

静かな美

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「旅する土鍋 リトアニア④」屋台料理を食べながら

「旅する土鍋 リトアニア④」屋台料理を食べながら

前回は、無知ながらも独立国家の成り立ちについてかいつまんだが、同時にナチスによる悲劇も忘れてはならない。

街の人々はおだやかな歩みで、いまは未来を見ている。

リトアニアの首都ビリニュスの街中いっぱいに華やかな工芸品がならぶマーケット(カジューカス祭)を歩きながら。

さまざまな歴史が、人間性をもつくるのかとふと思う。静かで穏やかな人々。日本人以上にシャイである印象を受けた。アジア人であるわたし

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「旅する土鍋 リトアニア③」東欧の歴史とスープに想う

「旅する土鍋 リトアニア③」東欧の歴史とスープに想う

1.「宗」と「史」前回は、宗教と食、工芸は切り離せないということを書いたが、さらには統治や戦争、人種問題など歴史的な事柄も根強く食や工芸に残っているということ。今回の訪欧では、歴史、宗教において、はるかに勉強不足を感じた。食と工芸を結びつけた仕事をするには、まだまだ知り得るべきことがたくさんある。知りたいことが倍増し、さらなる興味と好奇心が広がったことは、旅する土鍋リトアニアとポーランド視察の道に

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「旅する土鍋 リトアニア①」世界で同じように手を動かしている喜びを分かち合いたいだけなのかもしれない

「旅する土鍋 リトアニア①」世界で同じように手を動かしている喜びを分かち合いたいだけなのかもしれない

その国の新聞にひとつひとつ包まれたうつわと真っ黒になった手。梱包をといて、うつわをひとつずつ台に並べてゆく疲れた笑顔。極寒な空気のなかで動く無骨な硬い指。乾いた唇からはしゃがれた声。流暢でない言葉のネックレス。

これまでに、どれだけの陶芸家と握手をかわしてきただろう。

40代以上の職人とはなかなか英語が通じない。けれど粘土や焼成温度については、なんとなく通じ合える。

知りたいことがあるわけで

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