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青く途立つ(みちたつ)
永遠につづく旅はない。人の命にも、親子の関係にも永遠はない。
風まで青い夏、もうすぐ成人になる息子と大型難民船をヴェネツィアの運河で見ていた。リビアの青年はなにを思っていたのか。
ふたり旅ではイライラしても怒らない、親という立場を捨て、そこにいるのは「ある青年」と思おうと心に誓っていたのに。ついさっき、こんなに青い空の下、ぐっと抑えながらも声を荒げた。展示会場で「もう知らないから」と、別々の方
きっとだれよりもコロポックル §1
ー蕗の葉ー
会わずともだれより心を寄せあえる人というものはいる。きっとだれよりも臆病者なのに好奇心はあって、人見知りなのにだれよりもおしゃべりで、だれよりも気を配ろうとするのにだれよりもそれに気づき、気がついたら目にいっぱいの涙をためて、その涙さえだれかにあげようとする。そんなタイプの3人が集まって、いっぱい話をした。
彼は「こんにちは遠くまでありがとうございます」と照れているのにピシッと足を
きっとだれよりもコロポックル §2
ーきょうはピクニックだからねー
今朝、大きな蕗の葉に声をかけられた。ふたりのビー玉みたいな眼をみて、やたらと涙があふれそうになり「空気が乾いていてああ空が青いですね」ばかりくり返し、同時にこれが蕗の葉に返す言葉だったのかと気づく。
「ヤマちゃんパン屋によってね」と彼女がたちまち羽の生えた妖精になった。それなのに「どこかでナイフをかってください、それもわりとしっかりしたものを」と、かなり怪しい言
きっとだれよりもコロポックル§3
ーエゾハルゼミー
触りたいならば、さわってみればいい。
念願の美術館に着いてもピントこなくて夢かと思ったのは、芝生やまわりの木々が蛍光ペンの緑色みたいに美しく、まるで「こびとす」のこびとになって模型の世界にでもいるようだったから。「入ってもいいのかな?」ふたりに出会ってから質問ばかりしているような気がする。ふたりは一瞬、不思議そうな顔をして「あ、よいでしょう」と言い、ダダダダと触りに行った