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うつわマガジン2019

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#料理

うつわに寄りかかる

うつわに寄りかかる

つかれたら、悲しくなったら、寄りかかりたくなるでしょう。元気なら、愉快なときなら、寄りかかってもらえてうれしいと思うでしょう。

「静かに寄りかかる」30年前、20年前、10年前、5年前と、うつわの存在が良い方向に変わってきている。土鍋の扱かわれかたもどんどん明るい世界に動いている。

小売についてではない。なんとなく、うつわがスポットを浴びてがんばっているなと。一時期のゴールデンエポックには、

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土鍋プリンは12月の足あと

土鍋プリンは12月の足あと

ちいさな影陶芸道において路頭に迷ったり、逆走したり。たくさんのものは手に入らない。けれども、ちいさな影に救われることもあるでしょう。

石畳にうつる影イタリア弟子時代をおもいだせばシャキンとする。

幾度目かの渡航で、帰りのチケットを放棄し、以降ヴィザも切れて、隣国に出国してまた帰国した。帰りのエアチケットすら危い毎日だった。

モバイルフォンもインターネットもない。イタリアにすてきな街はたくさん

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たっぷり「みそ豚汁」からカレースパイスでアレンジまで!

たっぷり「みそ豚汁」からカレースパイスでアレンジまで!

1. コツははないもない、ただ「たっぷり」ね大きなコッチョリーノ土鍋に、白菜をザクザク切って、ニンジンやジャガイモ、冷蔵庫にある野菜を入れちゃえ。豚肉を切って入れ、具材ひたひたになるくらいの水、つまみの塩をしてグツグツ蒸し煮にする。煮えたころにもやしをザバッと入れ、水を足し、再び煮立ったら、みそをとき味を整えるだけ。こんにゃくなんかも欲しかったな。

冷蔵庫にあるものをゴッタ煮にすれば良いのだか

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「ねこ」と「さんま」

「ねこ」と「さんま」

言ってたっけな、「ねこ」が。
最近、地道に耕している人のものを盗んで、なんでもわかっている素ぶりをする人が多いねって。吾輩は猫である「ねこ」は、おさんの三馬(さんま)をぬすんだとき、胸がつかえるほど辛かったものだから、それがどんな気持ちがよくわかる。

今年はさんまが不漁だ。身はやせていて、捕獲量も激減しているという。気候温暖化はしんしんと迫っている。水温上昇で魚群が北方海域に移ったこと、それと隣

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旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(後編)

旅する土鍋2019 「途立つ誕生日のスケルツォ」(後編)

(前編よりつづき)

後半目次

3. ドレスと口紅時速100〜 120キロくらいで飛ばせば、リグーリアからミラノまで2時間ほどで到着する。そんな道中も、おかしな話は継続的に、まじめに語られた。

ミラノに着いて一度解散。わたしは、居候している師匠宅のギャラリーの窓を開け風を通したり、洗濯物をゴソゴソやっていた。数時間後、驚くことにイーゥインちゃんは背中が大きくあいたドレスを身に着け、真っ赤な口

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「旅する土鍋2019」魚醤をもとめ能登へ

「旅する土鍋2019」魚醤をもとめ能登へ

イタリアにきて一週間。出発前ぎりぎりに飛んでいった能登への旅記録をトスカーナの景色を見ながら書いているが、どうも湿度が違ってうまく書けない。

しかしながら、なぜ毎年イタリアに毎年足を運び、すぐに答えが出ない、もっとダイレクトに言ってしまえば、すぐにビジネスに結びつかない活動をしているのか。その答えが分かりやすく感じた国内の旅であったので、イタリア紀行をはじめる前に書きとめておこうと思う。

イタ

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ヨーグルトがピンク色にそまるときの味

ヨーグルトがピンク色にそまるときの味

白いまちと白いヨーグルト

春の気配がないままに3月のビリニュス(リトアニア)には真白な世界が広がっていた。眼前の景色のような真白なヨーグルトを朝食でたっぷりいただく。

リトアニアは酪農国。
古くから日本同様に発酵文化をもつ国。

塩味でいただく白い世界

ヨーグルトといえばギリシアと思われるが、ご多聞にもれず東欧もヨーグルト国家。そのひとつにヤギ皮の袋に乳と菌を入れて発酵させていたケフィアヨー

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迷宮からうまれた「旅する土鍋」

迷宮からうまれた「旅する土鍋」

あるとき土鍋をかかえてイタリアの広場に座ってまどろんでいたら、自分がどんどん小さくなって土鍋のなかに入りこんでしまった。かれこれ30年も時がながれた陶歴のなかで、うつわの迷宮にはいりこんだのは2回目だった。

1回目は30年前の学生時代、冷たいろくろ引きのうつわの中で水没しそうに慌てふためいていたが、2回目は妙に肝がすわっていた。

「このまま旅したい」そうそう、みなさんにこれを説明すると驚かれる

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ちょっとブレイク「土鍋でみかんサラダ」

ちょっとブレイク「土鍋でみかんサラダ」

表面ではわからない酸っぱさ表にでている分かりやすい現象に飽きることがある。ただの天邪鬼かもしれないし、だからモノをつくる仕事をしているのかもしれない。

「夏みかん」は、晩秋には色づいても酸味が強くて食べられない。冬に収穫したあと貯蔵して酸をぬく、または木なりで春から初夏まで完熟させてから収穫する。表面ではわからないのだ、酸っぱさは。

むいてしぼってわかる酸っぱさ

写真は、先月、料理家である友

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ちょっとブレイク「うつくしく許されるいっぱいぶんの土鍋」

ちょっとブレイク「うつくしく許されるいっぱいぶんの土鍋」

4分後にはうつくしき温かいおうどん160ccのお湯をそそぐだけのインスタントうどん(お椀で食べるどん兵衛/日清食品)が「ミニミニ土鍋」(約200cc)にジャストなのだ。

とにかく時間が足りない。鉛のカラダをだまして動かしている。仕方なく窯をつけっぱなしで外出し、てっぽう玉のように帰宅した。たまらなくおなかが空いているのだ、あれを食べよう。

白い霧が晴れるころ、4分後には温かいおうどんがいただけ

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ちょっとブレイク「うつわと食器棚」

ちょっとブレイク「うつわと食器棚」

パスクア(イースター/復活祭)であった昨日は、第二の故郷であるイタリアの友人たちから「よき復活祭を!」「おめでとう!」というような(メリクリ、あけおめ的な)メッセージとタマゴの写真が次々と届いた。

返信用に、ぐいのみをエッグスタンドに見立て、リトアニアのニット作家が編んだ帽子をタマゴにかぶせて写真を撮った。中央が最近の試作品、両サイドはミラノ修行時代の作。ただのタマゴが、わたしをはじめ肌の色が異

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ちょっとブレイク「春の土鍋」タンポポちらしのポタージュ

ちょっとブレイク「春の土鍋」タンポポちらしのポタージュ

冬のバターナッツと春のタンポポがスープの中で出会ったら

冷暗な場所で冬のあいだ保存していた古参バターナッツかぼちゃと、庭の新人タンポポが出会う。春の新タマネギも仲介役で。出会いというものは、理想から現実の味にかわる瞬間だ。

「バターナッツのポタージュ」
Cocciorinoの土鍋(白)

かれこれ15年~16年くらい、山梨の個人農場に野菜の宅配をおねがいしている。彼らの有機農法(一部自然農法)

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ちょっとブレイク「春のうつわ」レシピをよむ

ちょっとブレイク「春のうつわ」レシピをよむ

うつわに物語があるのだから料理の物語も読みたいと思うようになったのはいつごろからだろう。

料理は好きだし、一人暮らしや海外生活の経験からか、食材や道具は代用品を考えるクセもついた。つくるのに困ることもなかったので、レシピをわざわざ見ながらつくったり、料理教室に行ったこともなかった。それが一転したのはいつごろかな。

伝えたい想いがあるのだから料理教室もレシピ本も、物語を読み解きたい。上手につくる

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ちょっとブレイク「春の土鍋」グリンピースごはんと、てやんでぇ

ちょっとブレイク「春の土鍋」グリンピースごはんと、てやんでぇ

「きらいな食べものものがない」先日、家族でこんな話をした。特別おいしい食事をつくっているわけではない。

我が家は、手がゆずれる人(決して時間があるわけではない)が、冷蔵庫にあるもの(食材を買いにいくこともある)でごはんをつくる。食べさせている、させられているという感覚はなく、むしろ、みんなの好みの味を知ることができる。

誰もつくれなかったら買う、外食に出るなど。しかし経済的に考えると、忙しくと

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