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きっとだれよりもコロポックル§3

ーエゾハルゼミー

触りたいならば、さわってみればいい。

念願の美術館に着いてもピントこなくて夢かと思ったのは、芝生やまわりの木々が蛍光ペンの緑色みたいに美しく、まるで「こびとす」のこびとになって模型の世界にでもいるようだったから。「入ってもいいのかな?」ふたりに出会ってから質問ばかりしているような気がする。ふたりは一瞬、不思議そうな顔をして「あ、よいでしょう」と言い、ダダダダと触りに行った。あの大きな石を。

パコーンといい音がなって、ビー玉眼の彼女と「石じゃない」と笑ったら、もっと光ってたビー玉が。そうだと思っていたものが、ちがうことってあるでしょ。それが、すきまというもので、とても面白い。次のペタは冷たくて気持ちがよくて夢ではないとわかった。きっとイタリアで見たあの石だ。触りたいならば、さわってみればいい。

ないている迷宮をかけまわるギーゲーギーゲージージージー。
「この声はだれどこ?」ふたりにまた質問してしまった。「セミでしょう」というけれど、カエルだと思っていたから「なぜセミですか?」と触りたい心臓が先走る。ふたりは聴きなれていて気にしたことがないという。3人で「彼らもセミの一生なんですかね」としみじみ語りながら、セミの大合唱っをぼうっと聴いた。この声の正体に会ったことはないというのだから、ふたりはきっとだれよりもすてきな蕗の葉の下で、これからも暮らすのだろう。


エゾハルゼミWikipedia 鳴き声ありエゾと名がつくが北海道にかぎらず生息しているらしい。静かな森で5~7月くらいにしか鳴かない。北海道では長い冬があけ短い春もつかの間、一番に鳴くセミで、あぁ夏がくるねえという風物詩でもあるそうだ。

※ちなみにアイヌ語ではセミを「ヤキ」というそうで、伝承者のおばあちゃまのコメントがなまらめんこいのでペタ。

ものがたるコッチョリーノ「きっとだれよりもコロポックル2
ものがたるコッチョリーノ「きっとだれよりもコロポックル4」

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