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ちょっとブレイク 「自家製納豆の醍醐味」


イタリアの空気には、なんとなくエスプレッソの残り香が漂っている。発酵途中の納豆のニオイか、エスプレッソのニオイなのかわからなくなり、ついでにこっくりした醤油せんべいが食べたくなったことを原体験としてよく覚えている。


フードライター白央氏の記事。

粒は「大粒派」。藁づと納豆だとなおうれしい。特に、水戸芸術館の帰りによる天狗本店の「黒豆大豆納豆」が好き。噛むと香ばしくてコクがあるから。赤ぶどう酒に合う「干し納豆」も必須で買い込む。
さて、本題はコメントにもあるように、納豆にコーヒーを入れる変化球がおいしいということ。

そのはじまりは、こうである。

イタリア在住時代、イタリアの食事がおいしすぎて、日本食が恋しくなることはなかったのだが、ときどきシンプルな食材「豆腐」「味噌」「梅干」「かつをぶし」「アジのひらき」「煎餅」に思いを馳せた。そのなかに「納豆」もあった。(※かつをぶし以外は全部つくってみた)

さて、自家製納豆のはなし。ミラノのアジア食材屋さんで高価な冷凍納豆を買い、半分たべて、半分は納豆菌として残す。残した納豆を湯でとき、茹でた大豆に入れて、スロベニア産の琺瑯のポットみたいなものに入れ、タオルでフタをしてリスカルダメント(温水循環式ヒーター)の上に一晩中おく。


* * *

翌朝、いつものようにマッキネッタで淹れたエスプレッソを前に、こっそり納豆を観察する。ぽとりと三粒ほどがカップに落ちる。それを食べる…なんだ同じニオイ?醤油みたいな香り?甘み増した?と感動。

ヒーターの上の納豆は、完璧ではなかったが、ほんのりネバネバになったので、大発見よ!と友だちに電話した。 醤油も貴重だから、香味づけにエスプレッソを入れると何倍も日本の味がするよ!と話して、数人の日本人でうほうほ食べた。以降も、ときどき納豆をつくってはエスプレッソをたらした。帰国してからすっかりやっていないが、そんな思い出がよみがえった。

豆腐や味噌はもちろん、アジのひらき、サクラマスの塩鮭、ルバーブの梅干風とか、完璧でなくても自家製はすごくおいしかった。人間は、恵まれているより「ない」ときこそ、発見が生まれるのだな。




INFORMATION

我妻珠美 陶展 -秋を炊く-
Tamami Azuma
Ceramic Art Exhibition

Ecru+HM(Ginza Tokyo)
2018年11月16日~24日
※21日休廊
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル4F

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