トリミングP8091743

ガラスの中の香港

あのまなざしが忘れらない。


6月と9月キャセイ航空を利用した。トランジットで降りた香港空港は、にぎやかに買い物したり楽しそうにおしゃべりするアジア人、すこし疲れた顔、なんだか浮かれている足取りの、様々な国籍をもつ人でいっぱいだった。

空港の分厚いガラスはすこしブルーがかっていて、彼らの赤いエネルギーはかき消されていたし、黒い山もフェイクな水色に変わっていた。


搭乗した機内。頭上に収納しようとバッゲージを勢いよく持ち上げると、流暢な英語で「上げましょうか?」と声をかけてくれた青年がいた。「降りる時もご心配なく」と紳士的に手を貸してくれた青年。斜め前の青年も「いつでも声かけて」と言ってくれた。お礼を言ったあと「香港に?」と、濁した言葉で質問すると、「香港に帰ります」と一言。自分の国の名前を、あれだけたくさんの意味をふくめて名乗ったことはあるだろうか。

あの声と、あのまなざしが忘れられない。

山にせめゆくように生え群がる高層ビルは、高度を上げて雲の中に消えてゆく機内の窓になにかを訴えていた。

どうか自由な未来がひらかれますように。

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