雨の影響により。

「今週は雨が降るな。」
私は偏頭痛持ちで、雨の日や気圧が激しく変化するその日、またその数日前から、高確率で頭痛に襲われる。(一部怠惰によるダラケや生理痛を含むが。)

年に3回くらい、自分では「爆弾」と呼ぶ偏頭痛が天候の事情により投下される。
その時の状況を詳しく説明すると、まず頭痛の1日、2日前くらいからチカチカと銀色の粉のようなものが視界に舞う。舞っている時間はほんの1分だったり、長くても10分くらいだと思う。それが1日のうちに何度が起こる。
そしていよいよぐわんぐわんと頭をゆらす頭痛がやってくると、吐き気、胸焼け、げっぷ、額が強ばる気持ち悪さ、便意や屁。そういったものが一挙に襲ってくる。
まるで身体中の空気が、穴という穴から飛び出そうとするようだ。額が内側からの圧で割れるんじゃないかと思う。
吐き気はついに嘔吐と化し、横になることが出来る状況であればそこら辺の床やベンチに横になる。どうにもならないときは、トイレに駆け込み、吐いて個室でうずくまっている。
「いい加減にして欲しい」と嘔吐のつらさと、思うように動けない悔しさの涙を流すのだ。
去年の超大型の台風19号では、台風が沖縄を通過するあたりから頭痛で一日中臥せっていた。おまけに台風が、住んでいる地域の目前まで迫ったときに膀胱炎になった。浸水する危険度が非常に高い地域で、風呂釜に水を満タンに貯めて準備していた矢先、尿意の収まらない膀胱炎はさすがにまずいと思って逆に笑ってしまった。

自分でも気の毒だと思う。

余談だが、私は何故か「反応」することが多い。
やたらに興奮して夜眠れないと思ったら満月の前後や新月の日だったりする。
目眩や欠伸が頻繁に起こると、空模様が怪しくなる。
気味悪くて全体的に灰色のような、暗い場所だと思ったら盛り塩なんかがしてあったりする。
お葬式では気持ち悪くなって、頭痛や吐き気に見舞われることがあった。
自分の気にしすぎだと思いたいのがやまやまである。

そんな私だが、雨の日は意外に嫌いではない。

まずは音が好きだ。
ボツ、ボツ、だったりポツポツだったり、ドドドドドドド、だったり、プツプツだったり、雨足の強さでいつも音が変わってくる。ボツ、ボツ、のなかに細かい雨粒がタタタタタッと窓ガラスにぶつかってくるのも面白い。
そんな音をなんとなく聞いていると、リズムが聞こえてくる。「これはあの曲リズムだな、いや、ゆっくりめの拍子をとればこっちの曲かも。」なんて1人でも充分楽しめる。
勝手な連想だが、夜空に輝く数多の星をどうにかこうにかして結びつけて、星座を作りあげた方々は、自分と同じ感覚を持ち合わせていたのではないだろうか。無数に散らばる大小さまざまな粒を、地道にかつ自分の見たいように、聞こえるように、好きなように繋ぎ合わせる子どものような身勝手さがあるようだ。

次に、お気に入りの雨具が使える特別な日だ。
通勤用のシンプルな、でも高級感のある折り畳み傘。自分が買ったのは、濡れた状態でもいれることの出来る、チャック付きのスマートなケースがあるものだ。屋根のある駅につけば、これ見よがしにスマートに専用のケースに入れて、バッグにするんと滑らせる。
スーパーのサリサリしたビニール袋に折り畳み傘を突っ込むおじさんとは一線を画す。
休みの日は、大阪のアミューズメント施設で購入したスヌーピーの白い長傘。手に取る度に楽しい思い出がよみがえる。
その他にもレインブーツでつやつやした足元がお気に入りである。

そしてまだ、雨の日が意外と嫌いでない理由がある。
それはショッピングが楽しくなること。
雨の日は人の出がぐんと少なくなる。おかげで店内は広々と歩きやすく、周りに気を遣わずたっぷりと商品を吟味できる。スタッフのかたも雨の日はお客が少なく暇なのか、心なしかより丁寧に接してくれる気がする。
そしてさらに、雨の日限定のサービスがある。お店のポイントが倍になったり、オマケをつけてくれたりする。
ここでひとつ、注意すべきことがある。あんまり楽しくお買い物してしまうと、お店に傘を忘れる。初歩的なミスで、なぜか恥ずかしいのに、この癖はなかなか直らない厄介なものだ。

その他にも、道路を走る車が飛沫をあげて綺麗だとか、水たまりを避けながら歩くのが面白いだとか、晴耕雨読、読書がすすむだとか、幼い頃は傘でちゃんばらごっこしたとか、意外にも雨が楽しい理由は、多々ある。

よく、雨の日が大嫌いで、雨の予報を聞けば「どうしよう、なにしようかな~。雨だからなにもできないなぁ。」なんていう人や、外を歩いてるときに雨に降られて不機嫌になる人もいる。
その気持ちは確かに、分からないではない。だがしかし、天の邪鬼な私はそんな人たちに対してあえてこう思う。
「雨を楽しめないようじゃ、人間として器が小さいね。この世に楽しみを見つける才能が枯渇しているのかもしれない。」

もしかしたら、散々低気圧に悩まされている私だからこそ、身体が動く雨の日は意地になってあえて楽しもうとしているのかもしれない。
とんでもないエピソードだが、台風の通過中、大雨のなか自転車で街を走り回ったことがある。あんな大量の水を空から浴びることは、めったにあることではない。雨でメガネがずれ落ち、睫毛には一秒のうちに何度も何度も大粒の雨が落とされ、瞬きもままならなかった。
危険だが、忘れることの出来ない楽しい遊びだった。
雨嫌いの人は、恐らく一度も、雨のなかで楽しい思いをしたことがないのかもしれない。同時に、濡れたものを処理する手間を厭わしく思っている面倒くさがりであるかもしれない。

私が思うに、こちらから門戸を開いて雨を受け入れさえすれば、その先には快適な雨の日ライフが待ち受けているはずだ。

雨の日は、濡れたものを扱うことが多くなるから、手間がかかってイライラすることも多いだろう。大事な書類が濡れてしまったり、パンツの裾に泥がついたりすることも確かにある。
しかし、その手間を丁寧にスマートに処理さえすれば、晴れや曇りの日よりも、お得なサービスやユーモア、スリルを持った雨の日を格段に楽しめるものだと思っている。

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