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べっどるーむ・まんどりん <今ひとつマイナーな楽器への考察と対策#4>

難しい楽器だ・・・さて、どうしよう?

初めにも触れましたが、私はずっとギターを演奏していたので、初めてマンドリンを手にしたとき「なんて弾き難い楽器なんだろう」と思いました。
自宅録音やセッションで他の楽器も少なからず演奏した事もあり、「同じ撥弦楽器だし」とだいぶ簡単に考えていたという事はありましたが・・・それでも「弾き難い」のです(笑
慣れの問題でもあるのかもしれませんが、試行錯誤、悪戦苦闘の結果をまとめてみることにします。

演奏フォームについて

ボディが小さいと、構えやすく、演奏もし易くなるかというとそうでもありません。物事にはなんでも程度というものがあります。バイオリンのように肩に載せるスタイルであったり、一部の民族楽器のように座った姿勢で、膝の上に立てたりといった姿勢であればともかく、前に抱えるような体勢で演奏する場合は、やはりギターのようにある程度のサイズがあった方が、楽器が安定しますし姿勢も楽です。
実はギターもそうなのですが、楽器は体の正面でなく少し斜め、体から離れた状態が理想だと思います。右利きの場合、ネックは左手で握りますが、この時左手を少し体の前に伸ばしているイメージです。そしてネックは上に向いた状態です。
マンドリンの場合はボディが小さいので、ここからさらに動かして、極端に言えば「脇の下に挟む」ぐらいのポジションで良いと思います。フラットマンドリンの場合は、なるべくストラップを使うことで座って演奏する場合でも足で支えるイメージは捨てて、上半身だけで楽器を支えているイメージの方が安定するように思います。

前回ご紹介したEva Scowのフォームが近いですね。
ボウルバックの場合、動画などでは(ボディの厚みもあるせいか)大体膝の上にのせるか、足台の使用というのが一般的のようです。ただあれでは結構大変だと・・・・まあ、クラシック方面は諸事情が多いようなのでスルーということで(笑

左手は?
ネックが細いので、どんなに手の小さい人でも握り込めます。ギターではそれもアリですが、最近では握り込まずに親指の腹をネックの背に当てるのが主流のようです。マンドリンの場合、基本はもう少しずらして親指第二関節をネックの側面に当てる感じでしょうか。ワイドストレッチが必要な場合などは、そこから自然に背面へ移動するイメージです。
そして指は極力立てます。フレットの間隔も狭いので、ギターで一つのポジションを指3本で押弦するぐらいの感覚でやると、上手く行くように思います。特に解放弦を使ったフレーズなどでは、きちんと立てないと隣の弦に干渉してしまいます。

ピッキング位置は?
前述したフォームで自然に腕を曲げるとかなりネック寄、指先は指板の上まで来てしまう場合もあるかと思います。
ギターではあまり使わないポジションですが、マンドリンの場合、音色面からみても、だいたいこの付近で演奏できるようになっておいた方が良いと思います。

楽器のセッティングについて(弦、弦高、チューニング等)

使用弦
私が初めてマンドリンを購入した楽器店は、ブルーグラスやカントリーのプレイヤーもターゲットにしたお店でした。その時、弦を1セットサービスしていただき、どんな弦が希望か質問されました。弦の知識もあまりなかったので「一番よく使われる太さで、オススメのモノを」と伝えたところ、「これを使ってる人が多い。もっと細いゲージもあるが良い音がしない」と渡された弦をしばらく使っていました。
・・・これがテンションがキツいのなんの(笑 
ギターは、アコースティックもエレキも演奏しますし、レギュラーゲージを使っているので問題ないと思っていましたが、甘かった。
初めはいいのですが、長い時間は弾いてられない。昔からギター界隈ではこの手の話をすると「気合」が足りん!と叱責されたりもしますが(笑 、私の場合だいぶ以前にそういったナニは放棄しているので、すぐに別のセットに変更し今に至ります。実際、押弦のストレスは大幅に軽減されました。

現在の使用弦は以下のセットです。

<アコースティック>
Daddario マンドリン弦(ブロンズ):10 / 14 / 24 / 34 ✖️2
Optima マンドリン弦(スチール):10 / 13 / 22 / 35 ✖️2
注:Optimaはボウルバックタイプに使われる弦のようですが、試しに張ってみて好みの音色だった楽器については、この弦を使っています。
<エレクトリック>
Daddario エレクトリックギター弦(ニッケル):11 / 16 / 24 / 32 / 42(5弦仕様の 場合)
注:エレクトリック・ギター用の弦を2弦目から順に張っています。最初は複数のセットを混ぜて使っていましたが、コストの問題と音色も大きな違いがなかった為、これに落ち着きました。

ギターもそうですが、弦についてはなるべく入手し易いモノを選んでいます。確かにもっと高い価格帯や素材や太さに拘った弦を使えば、音は良くなる場合も少なくないですが、うっかり手持ちを切らしたり、現地調達となった場面で、問題となる場合があったりするからです。
そんな事よりは、演奏の方に注力した方が良いと考えています。

弦高
やはりこれは低い方が演奏し易いです。ただギターよりもセッティングがシビアというか、あまり細かく追い込めない感じがします。ギターでも低くしすぎると当然ハイポジションでビビったりしますが、調整範囲がギターよりも狭いように思います。ただ微妙な差とはいえ、専門店などできちんとセッティングされたものとそうでないものでは、弾き心地が全然違います。

チューニング
一般的には、

E / A / D / G /(1弦から)

とチューニングします。バイオリンと同じですね。ギターと比べてみると、高低が逆になっているという事です。

私の場合ですが、テンションの問題を解決する意図もあってオープンチューニングにしています。

C / G / C / G /(1弦から)5弦仕様の場合は、低音弦Cを追加。

というチューニングです。これは色々な太さの弦を実際に張って、押弦しながら試してみてこのチューニングとなりました。

ライブなどでチューニングについて質問をいただいた時、このチューニングの話をすると、「え!そんなチューニングって・・・」と驚かれる事があります。実は他にもこのチューニングのミュージシャンがいます。

実は U. Shrinivas がそうなのです。私は知らなかったのですが、このチューニングを使うようになって、彼の動画を観ていてフレーズと運指がなんとなく似て気がして調べたところそうでした。何でも「インドの音楽を演奏するのに適したチューニングだ」とのことらしいです。
他に同じではないのですが、似たようなチューニングを使用しているミュージシャンとして James Blood Ulmer がいます。

ウルマーも私が大好きなミュージシャンの一人です。チューニングについては彼のソロライブのDVDで知りました。彼の場合はEとAからスタートするチューニングで、並びが逆ですが4度と5度が隣り合っているところが同じです。

チューニングを変えるという事は、ギターで使っていたコードフォームやスケールの並びが使えなくなるので、初めからからやり直さないといけないというデメリットはあります(そのままでもギターとは逆なので違うのですが)。私も新しいチューニングにしてからしばらくは、今までできていたことが出来なくなり、セッションなどもミス連発で、折れそうになった事もしばしばでした(笑
ただ、きちんと整理していけば、スケールもコードも一定の規則の中に収まっていますし、通常より低くチューニングする事で、テンションが低くなって押弦し易くもなり、音色も落ち着いた感じに変わるというメリットもあります。いずれにせよ基本4弦(コース)で表現しなければなりませんので工夫は必要ですから、最初から自由なチューニングを試してみるのは有効だと思います。

次回は、奏法について書いてみようと思います。



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