「はしか」「免疫」「アセチルサリチル酸」

まずこちら、AFP通信の記事をどうぞ

【はしか感染で免疫システム「リセット」】

記事中のいちばん気になる部分はここ↓

(記事より一部抜粋)はしかウイルスは、過去にかかった病気を「記憶」する血液中のタンパク質である抗体を11~73%消し去る。免疫力が新生児ほどにまで低下する子どももいた。(抜粋おわり)

<病気を「記憶」する血液中のたんぱく質である抗体>とありますが、病原体を記憶するのはB細胞です。抗体が記憶しているわけではありません。B細胞は必要に応じて抗体を作るために病原体に関する情報を記憶するかのようなふるまいをするために、記憶細胞とも呼ばれます。

では抗体とは?

まず、カラダのなかをパトロールしいらないものややっかいなふるまいをするものを見つけたら、回収して無力化するパトカー兼清掃車の役割をする免疫細胞がいます。マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、好中球などです。

この中の特にマクロファージがいらないもの(抗原)の厄介度に応じて「抗体を作ってください」という指令を出します(抗原提示)。「早くたくさん!」だったり、「とりあえずちょっと…「」 だったり抗原性の強さ弱さ(高さ低さ)によって、抗原提示の仕方はちがいます。

病原体をみつけて抗原提示がなされると、T細胞やB細胞が協力して「抗体」がつくられます。つくられた抗体は病原体や病原体が出した毒素にくっついて悪さをさせないよう活動を抑制します。抗体がくっつくと、むやみに増殖できなくなり、毒素が出せなくなり、出した毒素も毒性を失います。

抗体とは「ゴキブリホイホイ」「ネズミ捕り」または「ハエトリ紙」のようなもので抗体には病原体や毒素を取り除く力はありません。この抗体がくっついたものをマクロファージなどの食細胞がお片付けしていってくれて、クリーンでノーマルな状況に戻るのです。

ゴキブリがかかったホイホイを、ねずみがかかったチュークルンを、ハエがくっついたハエとり紙を、ゴミ袋に入れて、ゴミ収集所に出して、清掃車がもって行ってくれてようやくミッション完了!になるように食細胞のはたらき無くしてクリーンでノーマルな体は維持できません。

どんな病原体がやってきて、どんな抗体を作ったのかはB細胞が記憶すると言われています。ひとつのB細胞はひとつの病原体(抗原)を記憶し、1種類の抗体をつくります。抗原1種類に対して抗体も1種類。抗原と抗体は鍵穴とカギの関係。ある病原体に感染して抗体ができたら、その記憶をもつB細胞が生きている間は、つぎにその病原体に出会ったときにすみやかに抗体がつくられて発症を防ぐことができます。

それが「抗体」

はしかはかつて「いのちさだめ」と言われていました。7才までにほとんどの子どもがかかって、これを乗り越えたあとはぐんと生存率が上がる(感染症に強くなるという意味だと思います)ことからイニシエーションのような病気と位置づけられていたのでしょう。もしも、この記事にあるように<免疫システムがリセット>されるのであればはしかにかかったあとは風邪に簡単にかかってバタバタ死ぬという状況になってイニシエーションどころではなかったと思うのです。

そもそも「抗体があること」=「免疫が高い」とするのは、医療製薬業界がワクチンを語るときに限って用いる独特の「文法」のようなもので抗体が激減したことを「免疫システムのリセット」と表現するのはいささか飛躍しすぎなのではないかと思うのです。

抗体は必要に応じてつくられるもので必要がなくなれば食細胞が片づけてしまいます。これはゴキブリのいない家にゴキブリホイホイを仕掛けたり、ハエのいなくなった家にハエトリ紙をいつまでもぶら下げておいたり、ネズミがいなくなったのにネズミ捕りを置いたりする人がいないのと同じです。

現れた時の対処法を覚えておけば、必要なものはどこかにしまっておけば済む話でふだんから出しっぱなしにしないように、抗体も用がすめば減り、病原体(抗原)を記憶している記憶細胞がいてくれればこんど必要な時にまた作ることができるのです。

この記事を読むと「抗体が無くなる!」「免疫が無くなる!」「無防備になる!」「たいへんだ!!!」と思っちゃいがちですが、そもそも「抗体=免疫」というのが不正確(間違いではありませんが)で免疫システムの中の抗体が減っても白血球やリンパ球がいるのですから免疫システム全体がリセットされたわけではなのです。

はしかの死亡率はワクチンの定期接種導入前にすでに下がり始めていて決して、ワクチンのおかげだけでさがったわけではないのは各国のグラフを見ればわかります。栄養状態、住環境、医療水準の向上など複数の要素が絡み合っていろんな感染症の死亡率が下がりました。とくに、アセチルサリチル酸(アスピリン)がウィルス感染による発熱のときに使うとライ症候群や脳症のリスクが高まるとわかって使われなくなってから、グンと死亡率が下がっています。FDA(アメリカの食品医薬品局)は、アセチルサリチル酸を主成分とする消炎鎮痛剤には以下の警告文を付けるよう義務付けています

Warning~Reye's syndrome: Children and teenagers who have or are recovering from chicken pox or flu-like symptoms should not use this product. When using this product, if changes in behavior with nausea and vomiting occur, consult a doctor because these symptoms could be an early sign of Reye's syndrome, a rare but serious illness.

警告~ライ症候群:はしかやインフルエンザのような症状のこども及びティーンエイジャーは本製品を用いてはなりません。本剤使用中に行動異常、吐き気、嘔吐が起きたら医師に相談してください。これらの症状はライ症候群の兆候であり、稀ではありますがとても深刻な病気です。(筆者訳)

風邪症状の多くがウィルス感染によるもので、風邪のときの発熱にアセチルサリチル酸を使うことが危険だという認識は必要ですが、そもそも風邪で熱が出ているときは病原体の活性が下がって免疫細胞たちが活躍してくれているのでわざわざ下げなくてよいのです。何より必要なのは水分と休息。

ライ症候群や脳症の心配はない、安全な解熱鎮痛剤としてアセトアミノフェンが使われていますが妊娠中に用いると発達障害(ADHDやAutism)のリスクが高まるという論文もでてきました。(論文はこちら

発達障害ではほかにも、ワクチンに含まれる水銀やアルミニウムなどが発達障害に関係しているという説もありますが、賛否両論あるようにしばらくはカウンターもあるでしょう。でも公害や薬害の歴史を見ればわかるように、被害の原因物質が特定されてもそれが公式に認められるまでには長い時間がかかりそれまで被害は拡大しつづけるのです。そういう意味では公的に「安全」と言われているものの多くが「いまのところ危険性がみとめられない」「直ちに健康に影響はない」というレベルの安全であって、実際のところどんな危険があるのかないのか広く長く使われてはじめてわかることもたくさんある…ということを忘れちゃいけないと思うのです。解熱鎮痛剤としてのアセチルサリチル酸が特に子どもには危険ということが認められたのも市場に出てから何十年もたってからですし、そこからさらに何年もたってから「ちょびっと使えば血栓予防になる」ことがわかりライフサイクルを伸ばしていたりするくらいですから、今使われているお薬の多くが「〇〇には効果があるけどどんな危険性があるのかないのか他にどんな作用があるのかないのか、わからないこともいっぱいある……でも〇〇には効くので使ってね」というものなのでしょうその恩恵に与れればありがたいですが、まだ知られていない不測の事態を経験した人は「ツイてない」で済むこともあれば「冗談じゃない」ということもあり得ます。それがいわゆる「お薬」

冒頭の記事から伝わる「はしかって怖い!」というムードはさておき、記事からわかる事実は「はしかにかかった後あらゆる抗体の数が減る」ということだけです。ただ、それが何を意味するのかは何を信じるかによって違ってきます。「抗体=免疫」と信じるなら、抗体がなくなることは恐ろしいことでしょう。

「免疫とは」複雑なシステムだけれど仕事はシンプル(いるものといらないものの分別、いらないものを排出、壊れたところの修復)。いらないものを片付ける主役はマクロファージや好中球をはじめとする食細胞である…という理解で、実際にはしかにかかったあと風邪が重篤化しないことを知っていれば「ほほう」と言う以上の印象には至りません。


うがった見方をすれば、この「はしか怖い!」という印象を強くするこの記事は、ワクチンの接種率をあげるためのキャンペーンなのかもしれないな…と思ったりもするのです。

先日、オーストリア人の女性がひょっこり訪ねてきてわたしの本棚のホメオパシーのコーナーにくぎ付けになっていました。息子と同年代の人ですが、お母さんがホメオパシー大好きで、ワクチンをひとつも受けたことが無いそうです。世界各地でパーマカルチャーを学んできて日本に流れ着き、日本大好きなんだけど、日本ではワクチンをとても大切にしているようで「必要なのかどうか悩んでいた」といいます。「抗体=免疫」と信じるならばワクチンが素晴らしいものでしょうが、ホメオパシーをはじめとするホリスティック医学や生物学では、抗体は免疫システムの一部に過ぎないので、なんでもかんでもワクチンで予防するという発想にはならない…ということをお話しすると「なるほど」と納得していました。

コンピュータだけでなく、科学情報だってどんどんアップデートされます。これまで信じていたことの、どこを上書きし、なにを採用するのか、ムードに巻き込まれっぱなしになるのではなく、落ち着いてチョイスしたいものです。

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