見出し画像

採用とモモ

2年前、ほぼ知識0の状態から採用活動を始めた。

当初は「文章を書く仕事」だと言われて、訳も分からず最初に書いたのが求人票だった。雇用条件通知書とかそんなものは一切フォーマットが無かった。

それから、1年間ほど一人で訳も分からず採用を続けた。中途・新卒含めて。

採用って人生の時間を買ってもらう営業

採用って要は営業だ。その人の一生を左右する決断をさせる訳だから。納得してもらい、働きたいと思ってもらい、弊社に時間を投資してもらう訳だから、高いお買い物をしてもらう訳だ。大体の人は人生でそんなに何回も転職を決断しない。そして、お客さんは職種ごとに全然違う。

例えば、セールス、営業マンといっても、物を売っているセールスと提案を売っているセールスでは営業の仕方が違う。在庫という概念があるかないかで、原価率の調整の仕方、時間軸も全然違う。ソリューションを売る時は、利益率は考えるけど、一律の掛け率は気にしなくても良いからだ。

また、物にも色々な種類がある。生鮮食品をスーパーに売り込んでいる人、洋服を百貨店に売り込む人、化粧品売り場でお客さん向けに店長をしている人だと、それぞれ全然違う。実は書店は本だけでなく雑貨も取り扱っているから、おもちゃとかぬいぐるみとか家電を売りたいと思った時に意外と近いことがある。

同じ商材を扱ってても、SV(スーパーバイザー)やエリアマネージャー、MD、メーカーの営業だと似ているようで商材に対する捉え方が違う。

そして、年代によっても仕事に対する意識や考え方が違う。

自分が関わって採用した人は、ソリューションセールス、プロダクトセールス、ディレクター、サーバーサイドエンジニア、ハードウェアエンジニア、経理、総務、人事。CxO系ではCOO、採用は出来なかったけど、VPoE(エンジニアの偉い人)、CFO(お金を集める偉い人)も探していた。全部それぞれ違う。

採用の大変だったこと

採用って一体何が大変なのか、周りからするとよく分からないことが多い。机とにらめっこしているけど、誰かに仕事の中身を見せられる訳ではない。

毎日知らない誰かと会い続けて、会社にとって良い人かどうか考えて、相談して、やっと会社にとって、その候補者にとって、ぴったりと思える人が来ても、会社の人事権のある人が採りたいと思わなければ、採用は出来ない。

そして、大体面接は、候補者が仕事を終えてから来ることが多いから夜になる。面接が終わってからも仕事をして。誰かに相談出来ないことが多くて、大変さをなかなか分かってもらえない。

しかも、対人スキル・文章スキル・ビジネスに関する知見など普通の職種だったら一つで良いスキルを沢山持っていないといけない。一人でやらないなら、誰に何をいつまでにお願いするか、プロジェクトマネジメントしないといけないのだ。

良い採用って

良い採用は「どんな人に来てもらいたいか決まっていること」「その人が本気で働きたいと思っていること」大体この2つで決まると思っている。

そして、この2つに関する精度は結構高かったと勝手に自負している。

でも、自分が会社のことを本気で愛していないと、この2つを担保することは出来ない。

前に自分が書いたことを、もう一度以下に記載する。

======================================================

「愛にあふれたマニアックさ」という点でいうと、卓球や医療と比べると(ロボットに対しては)蓄積もなく全然足りないなと感じていました。

そこで、自分が(ロボットを)愛せるポイント、仮説を一度考えてみたのです。

それはユカイ工学さんは「モモ」を量産している会社だということ。

どういうことか?

ミヒャエル・エンデの「モモ」という物語を遡ってみましょう。

モモは町外れに住む口数の少ない女の子で、彼女が一緒にいると色んなアイデアが思い浮かんだり、どんな悩みも打ち明けて解決出来たりする、人に癒しを与えてくれる存在です。

でも、ある時から、町の人たちは「時間泥棒」にそそのかされて、もっと忙しく働かなくてはと焦らされ、大切にすべき家族や恋人や両親のことをいつしかないがしろにしてしまう。

将来もらえるお金や時間の為に、今をあくせく生きる。まさに今自分たちがやりがちなことですね。

ユカイ工学が生み出すロボットは、

そんな人の本来の繋がりを思い出させてくれる「モモ」の様な存在なんじゃないか?と思いました。

実際、BOCCO(ボッコ)は、仕事が忙しくてなかなか家に帰れないお父さんお母さんが、子供とコミュニケーションをとるツールとしてとても重宝されています。

BOCCOはロボットだけど、何だか人間味があって、親しみを持てる存在なんです。

今年の秋に発送予定のQooboも同じエッセンスを持っています。犬や猫みたいに一緒にいるだけで癒される。そんな存在です。

もし、みんなで力を合わせて「モモ」が身近に沢山いる様な世界になったら、より生きやすい世の中になるんじゃないか。。そう思ったのです。

その為に、「モモ」をこれからも沢山作って、広めていく為にはどんなことが必要なのか?売れる仕組みなのか、もっと人が必要なのか、プロダクトが必要なのか、長くブランドを一緒に考えてくれる人が必要なのか、そんなことを考えます。

話は変わりますが、「SMALL GIANTS」という本をご存知でしょうか?

「SMALL GIANTS」は、会社の規模を成長させることだけに重きをおかず、どんな姿が自分達の会社にとって「成功」なのかを自分達の基準で決めている会社です。会社の規模は小さくても、提供している独自の価値はかけがえのないものがある。そんな会社です。

以下の書評メモにエッセンスが書かれています。

SMALL GIANTS (ボー・バーリンガム)(tokuriki.com 2010/4)

そういう意味では、ユカイ工学はすでに「SMALL GIANT」になっていると思うのです。

自分達のアイデアベースで、

誰も考えたことのない、人を癒すロボットを作って販売してしまうのだから。

社内ハッカソン合宿に行ってきました!(ユカイ工学 Wantedlyサイト2018/4/18)

正直、プロダクトを作る場面でも、販売する、ビジネスにする場面でも僕は今ほとんど何も出来ないのではないかと思います。

でも、SMALL GIANTSが大事にしている

「Mojo(その企業が大切にしている考え方)」を理解して、

できるだけ多くの人に知ってもらう、ということはもっと出来るんじゃないか

と思いました。

そんなことが出来ればいいなと思います。

======================================================

上に書いた気持ちは、採用活動を始める時の自分の軸になっていた。

癒しを与えるロボットが好きな人達は、思いやりがあって優しい人。

家族を大切にする人。生き物を大切にする人。

つまり、人を大切にする人。

そして、運良くうちの会社に来てくれるなら、それで良いなと思っていた。

でも、癒しを与える物を作っているはずの僕らが、いつの間にか「時間泥棒」の罠にハマっていないか、は気になっていた。そして、人間性を失っていくことを恐れていた。

町の人たちは「時間泥棒」にそそのかされて、もっと忙しく働かなくてはと焦らされ、大切にすべき家族や恋人や両親のことをいつしかないがしろにしてしまう。将来もらえるお金や時間の為に、今をあくせく生きる。まさに今自分たちがやりがちなことですね。

何回か、社長に「モモ」は読みましたか?と聞いたけど、全然読んでくれなかった。

児童書「モモ」はデキる大人の心にこそ刺さる~あなたも「灰色の男」の餌食になっていないか~(東洋経済ONLINE 2017/9/29)

モモ

モモ


サポートで下さったお金は、今後の創作やライティングに活用していきたいと思います!