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今ここに立っていられるのは

様々な友人、知人から多くの影響を受け、今の自分が形成されている。自分とは違う他人の価値観に感化され、新たな発見が見つかるのはとても素晴らしい瞬間だが、それと同じくらい独りで篭り内面的な自分と会話するのも大切な日課だ。グラフィックの制作もある意味、答えのない禅問答を自分と繰り広げているようなもので、スタジオで独り黙々と作業することは自分と向き合う時間でもある。

だからこそスタジオでは独りで集中したいし、身軽でいることに魅力を感じているので、積極的にアシスタントを入れることは無かったが、8月の頭から美大でデザインを学ぶ女性にインターンのアシスタントとして来てもらっている。

インターンの募集もしていないのに、面識もまったくない彼女から届いたポートフォリオと履歴書のファイル、普段だったら丁重にお断りしてしまうのだが、添えられたメールの文面からは不思議な上品さというか気持ちのようなモノが漂っていて、それを僕は無下にすることができなかった。何よりもかつて自分が通いたかった美大でデザインを学んでいること、そして自分が育ち今も実家のある地域に彼女が住んでいる事も何か縁があるようで気持ちを加速させた。

無責任に、インターンをタダ働きしてくれる若者くらいに思っている人も多いが、インターンを受け入れるのであれば、お金ではない価値をしっかり与えるべきで、そういう意識で緊張感を持って接している。グラフィックに対する向き合い方、プロセス、ノウハウや、仕事の進め方、現場での立ち振る舞いかた等々、僕が培って来た様々なことを吸収していって欲しいと切に願う。

今、僕には3歳の息子がいて、彼を育て、接することで、幼い頃、何もできなかった自分の忘れていた感情や記憶が蘇って新たな発見や問いを見出すことが多い。それと同じで彼女と接すると、初めてデザイナーとして社会に出た頃の自分の未熟さや、生意気ばかり言っていた自分に、会社の先輩たちがどれだけ真剣に接してくれていたのか今なら痛いほど分かる。自分もまわりから沢山のモノのを与えてもらったからこそ、今ここにデザイナーとして立っていられる。彼女が来てくれた事で、それを強く実感している。

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