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夢眠書店

夢眠ねむちゃんが、今年の1月にでんぱ組を卒業し、芸能界からも引退をした。

彼女と初めて会ったのは10年ほど前、まだポストポッパーズというアートグループで活動していた梅沢和木君とマルチネのtomad、2人の若手クリエイター対談といった趣向のトークショーがあり、そこに観客として来ていた彼女をたまたま居合わせた共通の知人に紹介してもらったのが初めてだったと思う。

それからは何度か僕の撮影案件でモデルをしてもらったり、ディアステージに遊びに行ったり、でんぱ組のアートディレクションやライブ映像演出をさせてもらったりした。(彼女のおかげで僕は2度も武道館で映像演出させてもらうことができた)

映像のツアースタッフとして、でんぱ組の全国ツアーに帯同させてもらったこともあった。舞台監督をはじめとするツアースタッフ方々は体育会系ノリの人達ばかりで、デザイン業界の雰囲気とガラッと変わった空気になかなか馴染めなかったことや、皆、裏方として演者と距離を取っていたこともあり、僕もその雰囲気に押されてツアー中、彼女になんだか余所余所しく接してしまったこともあったが、いつも黙々と独りでMacと向かい合っている日常では感じる事の出来ない経験の連続で、日本各地を周ることがとても楽しかった。

そんな彼女が、かねてから構想していた「夢眠書店」という本屋のオープンに向け準備しているそうで、ゴールデンウィークの数日、お店の内装工事を手伝ってきた。体のなまった自分にとってはいい運動だったし、同じく手伝いに来ていた友人知人とも久しぶりに会えてとても充実感があった。なによりも、何かが始まる予感に寄り添える事はとても嬉しい。

僕の両親は、ゲームやTV、マンガに対して偏見を持っていて、あまり触れさせてくれなかったが、本だけは無条件に好きなだけ買ってくれる方針だったので、僕はたくさんの本で育った。インターネット以前は海外のデザイン事情を知る為に洋書屋に足繁く通ったし、神保町を掘りまくって知らない本と巡り合うのが楽しかった。でんぱ組のツアー中も現地の古本屋を必ず周っていた。

好きな本屋はたくさんあるが、強く印象に残っているのは2003年から2005年まで(※うろ覚え)原宿のプロペラ通りにあった「PHILOSOPHY BOOK STORE」だ。いくつかのアパレルブランドを手掛けているデザイナーの西山徹氏が創作に行き詰まり、ブランドを休止していた時期に運営していた店舗で、本屋というには、商品点数も少なく、商売っ気のないサロンの様な場所だったが、西山徹の哲学が色濃くセレクトされた僅かな本の数々はどれも強烈な影響ときっかけを与えてくれた。少ない点数だからこそ、並べられた本から文脈が生まれてきてまるでDJプレイをみているかのようでもあった。

夢眠書店も本をベースにしながらも、彼女の描く、たぬきゅんというキャラクターのグッズショップや展示スペースの併設、ワークショップを行うスペースもあるようで、様々な人の集まるコミューンのような場所になるのだろうか、そしてそんな場所に僕の本も並んでいたらとても嬉しい。

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