見出し画像

自然と対峙する為の英知

 2001年宇宙の旅、映画の冒頭で、猿が道具を使い始めるシーンを用いてキューブリックは人類の誕生を表現した。人類の進化はそのまま道具の進化とも言え、日々世界中で開発されている様々な道具やガジェットの類をチェックしながら、その道具に込められたデザイナーの設計思想や哲学を読み解いていくことがとても大好きだ。

 その中でも登山・キャンプ用の山道具は、圧倒的な自然の力に対してどう抵抗、共存できるのかという、人類が常に対峙してきたある種、根源的なテーマの元、保温性、通気性、防水性、軽量性、そしてコストなど様々なバランスを考え抜いた道具や、最先端の繊維技術や加工技術、はたまた自然との新たな対峙哲学を用いて、今までのセオリーをひっくり返してしまうような道具も多く、都市で過ごしてばかりの僕でも、僻地用シェルジャケットを羽織ったり、ベッドルームではLEDランタンを灯したり、徹夜仕事の後は寝袋で仮眠したりと、オーバースペックな物を日常使いしながら道具を読み解くことを楽しんでいたが、ある時、既に自分が持っている道具だけでアウトドアを楽しむには十分な装備が揃っている事や(実際は体力だけがまだ揃っていないのだが。。)、実際に山道具が自然の中でどのように機能するのか確かめたくなり、インドア派だった僕は足繁くキャンプ地へ通うようになっていった。

 自然の中で使う山道具達は、都市で使っていた時とまったく違う表情見せ、悪環境の中で使うことによって分かる道具に込められた様々な知恵とアイデアに驚かされる。全ての道具が目的を達成する為だけにただストイックに都市とは違った存在感を放っている。

 襲われるような強い風と凍えるような極寒の気温、真っ暗闇の夜の中、独りテントに入る。LEDの明かりを灯し寝袋に包まった時の「暖かさ」と「安心感」が何万年にも及ぶ先人達の知恵と哲学の積み重ねによる英知の結晶だということを噛み締めつつ、スマホを眺めながら自然の中で眠りつく。これが自分にとって今とても贅沢な時間である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?