tamito(詩と小説)

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tamito(詩と小説)

マガジン

  • my favorite stories

    これまでnoteで読ませていただいたみなさんの物語を、お気に入りとして束ねました。基本的に一人一遍です。

  • 20年の不在

    再会の物語です。 4つの章に分けて掲載します。

  • 詩集「赤い月」

    詩集マガジンをつくりました。 “恋愛”と”女性”に関する詩を中心に集めた【赤い月】。 イラストは、猫野サラさんからお借りしました。 『夕凪を写しに』シリーズの主人公で詩人の星野しずかです。 お時間のあるときにでも、ゆっくりお楽しみください!

  • 詩集【青い月】

    詩集マガジンをつくりました。 やや“少年”の趣のある詩を集めた【青い月】。 イラストは、猫野サラさんからお借りしました。 『夕凪を写しに』シリーズの主人公で詩人の星野しずかです。  お時間のあるときにでも、ゆっくりお楽しみください!

  • シークエンス ~いつものふたり~

    いつまでも煮え切らないふたりのトーク集。彼らの会話は他愛もないじゃれあいなのか、それとも人生の深淵に臨む試みなのか。舞台劇のようなお馴染のふたりの会話をマガジンでまとめてお楽しみください!

最近の記事

  • 固定された記事

坂本さんの右腕

【詩】 坂本さんのことを覚えていますか そう大学2年の夏にゆくえがわからなくなった あのとき彼と最後に話したのはどうやら 僕だったらしいのですよ 僕は大学の図書館へ行くために駅に向かい ホームでばったり坂本さんに会ったのです ベンチに腰かけている彼に僕は声をかけた 「こんにちは」「暑いですね」 「どちらに行かれるのですか」 そんなあたり障りのない言葉だったはずです 「ああ君か」「今日はちょっと暑いね」 「なに銀座の画廊まで知人の絵を見にね」 たぶん彼

    • 桜ハナミズキ

      【詩】 きみは天使のようだ、ときみが言う ぼくがきみにしてあげられることは 当たり前のことばかりなのに 季節はめぐり桜からハナミズキ 朝のドラマはいつも眠るまえに見る きみが愛おしいよ、ときみが言う ぼくの内の鍵のかかった部屋 あること知ってか知らずか 窓を開ければ東風から薫風 進まぬしおり挟み眠れない夜 枯れ葉が土に還るようにぼくが朽ち果てる いつかのそんなビジョンきみに抱かせたくなくて 今日は戯けていよう きみは笑っていてください きみは幸せなの?ときみが問う ぼ

      • こんなにハート汚れてますが

        【詩】   いつか描いた未来に立って 自分を認めることができるのでしょうか ぼくはいつかのきみなのです 白茶けた顔してますが よく見てもらえばわかります いつか描いた未来に立って 自分を許すことができるのでしょうか ぼくはあの日のきみなのです 無罪のふりをしてますが よく見てもらえば有罪です いつか描いた未来に立って 自分を愛することができるのでしょうか ぼくは寂しいきみなのです 傍若無人に見えますが それほど強くはないのです いつか描いた未来に立って 自分を放つことが

        • 鼓動 -repost-

          【詩】 くるくると回りながらきみ 薺を一輪手折って笑う その花の痛みを知らずに笑う るらるらと歌いながらきみ ふと声を詰まらせて泣く 悲しみなんて知らないと泣く 異なる時間を異なるきみが生きて 泣いたり笑ったり過ごす きみの鼓動にぼくの心臓が同期して 「ああ、生きている」と気づく 「赤い花」ときみが言うと 「赤い花」とぼくは気づく 「青い空」ときみが言うと 「青い空」とぼくは気づく 壊れたロボットのプラグにきみが ボルトの異なる鼓動を注ぐ 動かない動かない手足に心は

        • 固定された記事

        坂本さんの右腕

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          5本
        • 詩集「赤い月」
          40本
        • 詩集【青い月】
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        • シークエンス ~いつものふたり~
          24本
        • 深海より愛をこめて
          11本

        記事

          きみの脱け殻が床に転がっていて、それを踏まないように気をつけながら、ぼくは日々を過ごしている。

          きみの脱け殻が床に転がっていて、それを踏まないように気をつけながら、ぼくは日々を過ごしている。

          彼女の悲しみ -repost-

          【詩】   彼女はいつも自分を完璧にコントロールして 間違った判断をしないよう細心の注意をはらった そしてこの世界をうまく渡り歩いて いつのまにか半生と言える年齢を過ぎた 彼女のまわりには彼女を愛する人たちがたくさんいて 自分は幸せだと思うことに疑問を挟む余地はなかった 彼女は思うきっとこのまま残りの半生も これまでのように過ごしてゆけると 知人の葬儀からの帰りに線路沿いの道で 満開の紫陽花をしばらく眺めふと 毬のような一輪を折り手にした 重なるよう

          彼女の悲しみ -repost-

          ふたり -repost-

          【詩】   ある日、不確かな僕と確かな僕が ふたりに分かれて別々の道を歩き出した それまでの人生を比較的 確かな僕がリードしてきただけに 不確かな僕は道標を失い 思いのままに道を進み 雨が降れば何日でも足をとめた 確かな僕は不確かな僕を遠目に見ながら それでもその日その日の糧を得るべく行動した ある日、不確かな僕が海辺を歩いていると 釣りをしている少年に出会った 少年は不確かな僕や確かな僕の子供の頃に似ていて 不確かな僕になついて日が暮れるまで一緒

          茶色い瞳 -repost-

          【詩】   今日が消えてゆくのです、次から次へと。 その男はイスに座るなり、唐突にそう言った。 見た目にはこざっぱりとした今どきの会社員風で、26~27歳くらいだろうか。 今日が消えてゆくのです、目の前から遠ざかって。掴もうとして手を伸ばしても届かない。追いかけても追いかけても逃げてゆくのです。 僕は促すように二度頷いた。 朝、目覚めると確かに今日はそこにあって、太陽は東の空を昇っている。だけど、通勤電車の吊革につかまって、上司につまらない小言を言われて、パワー

          茶色い瞳 -repost-

          ひとりぼっちのONE

          【詩】 ひとりぼっちのONEはくるくる回っている ひとりぼっちだと気づかずにくるくる回っている ときおりの遠方からの旅人は彼女を遠巻きに眺め 或いは彼女の心を不躾に傷つける ひとりぼっちのONEはくるくる回っている 重い荷物を背負いくるくる回っている 親兄妹ともソーシャルディスタンスを保ち 不可思議なワームの片隅で踊り続けている ひとりぼっちのONEはくるくる回っている 途方もない時の彼方でくるくる回っている ひとりぼっちのONEはアナタでありワタ

          ひとりぼっちのONE

          此の岸に立って -repost-

          【詩】 彼の岸へとわたる人たちを 此の岸に立ち見送っている 霧が流れきてかすむ後ろ姿 渡りきるさま見届けられず 別れはぼんやりと不明瞭に 送る者のうちに降り積もる 沈殿したやるせなさのうえ 何気ない毎日が通りすぎて ちいさな痛みがまたひとつ 無意識の空に浮かんでいる 生きるほどに喜びと悲しみ 彼の岸からかえり見るのか 此の岸に立ち手を振るまた tamito #詩

          此の岸に立って -repost-

          少年の1peace 【repost】

          【シークエンス】   少年は海を見ている。 海岸沿いの低い堤防のうえに座り、もう半時ほど海を見ている。 空は晴れてはいるが雲がまばらにあり、日が差したり翳ったりしている。 鳶が風に乗り羽ばたきもせずに中空を漂っている。一羽、二羽、と少年は数える。見える範囲で五羽まで捉える。 少年は十三歳で、この春中学二年生になった。 昨年の夏まで、少年はこんな風に海を見ることはなかった。 海は生まれたときから身近な遊び場で、通学路から見えるありふれた日常の景色だった。それが昨年の夏休みに

          少年の1peace 【repost】

          彼女の1peace 【repost】

          【シークエンス】    不満があるわけじゃない日常。不安があるわけじゃない生活。語りかけてくるタイムライン。先々まで埋まる週末の予定。だけど、彼女の心は満たされない。  何故なのかと心に問う。多少やっかいな同僚はいるけど仕事は充実している。互いに100%ではなくても彼との関係は安定している。親の心配もいまのところはない。では、何故なのか。どうしても何かが欠けている気がしてならない。ジグソーパズルの最後の1ピースが埋まらず、いつまでも探している。サイドボードの引き出しのな

          彼女の1peace 【repost】

          この空の在り様 -repost-

          【詩】 この空の在り様が少なからず 人の心の在り様に映えるならば 彼らは毎夜てるてる坊主を軒下に吊るし 田畑の作物のことなど気にもせず 怪しげな祈祷師さえ恃み祈り続けることでしょう けれども僕は夏の篠突く雨も秋の霖雨も 刺すように冷たい冬の凍雨さえも愛おしく この青い空にひと粒の水滴を求めてしまいます いつか 晴れた日にいつか 公園の芝に寝ころがり青い空を見あげ 一滴の雨粒も望まずにいつか 微笑む日がくるのだと いつか tamito #詩

          この空の在り様 -repost-

          きみの声聴いてた

          【詩】   靴ばかり見ていた 地下鉄のつり革 傘もささずに どしゃ降りのなか 空ばかり見ていた 鼓動数えながら 構えもせずに 眼差しのなか きみの声聴いてた 在るものと無いもの 泣き叫ぶよに 誰にともなく 何年も求めて 影ばかり追いかけ 公園の池 畔のヘビイチゴ くりかえし聴いてた あかね雲の先 1987年 西の街に焦がれて ダイヤルを回した 坂道の公衆電話 桂花が鼻の奥 ツンと痛んだ 線路沿い歩いた 誇りを抱えて 時計の針が止まり 大丈夫?と訊いた 桜の回

          きみの声聴いてた

          二等辺三角形のようなきみの公平

          【詩】   二等辺三角形のようなきみの公平に 憧れを抱いていた窓際の席 片足重心のようにバランスを欠いた ぼくの右側がいつまでも痛い 胸の底の底では理解し合いながら はぐらかしては笑いに変えた 回収せずにこぼれた懐かしさに 戻れずに時の狭間で立ち尽くしている ユースティティアのようなきみの平等に うちひしがれていた理科棟の踊り場 シンメトリーには程遠く非対称にゆがむ 不恰好な片頬が鏡のなかで傷む シアン100パーセントの空の下で 視線外しては笑顔繕った 北北

          二等辺三角形のようなきみの公平

          ひとつ残らずあなたのことを

          【詩】   昨夜はひとり止まり木で あなたの孤独に会いました 思いの外に冷たくて わたしの右手は役立たず ごめんなさいと繰り返し どうしてそんなに苛むの 正解なんて時のなか うつろい揺らぎ消えるもの 叶わなかった夢のこと 縛られていた胸のうち 幼い〈わたし〉を閉じ込めて 壊れたオモチャ握りしめ あなたの〈ホント〉に会いたくて 扉をひとつ開けました 届かないまでも手を伸ばし 扉をひとつ開けました 昨夜はひとり止まり木で あなたの孤独に会いました 届かないまでも手を伸

          ひとつ残らずあなたのことを