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昭和世代を否定するのは思考停止。活躍する平成世代は「世代間ギャップは異文化理解の機会」と捉える

インターネットが当たり前にある時代に生まれ、SNSで自分を自由に発信して育った「平成世代」。彼らの中には、昭和世代を中心とする会社の旧態依然としたカルチャーに悶々とし、会社を早々に飛び出す人も少なくないようです。

平成5年生まれの25歳、TAMでデジタルマーケターとして働く佐藤佳穂さんは社会人3年目のとき、新卒で入社した大手不動産会社を辞めて転職。一見、典型的な平成世代の一人のように映る佐藤さん。しかし、その考え方は真逆で・・・

「私の場合、転職は『平成世代の自分が一人の人間としてどう生きていきたいか』を考えての決断でした。単に昭和世代を否定するのは思考停止だと思います。世代間ギャップは『異文化理解の機会』。大切なことは、いろんな文化の良さ、厳しさを知ったうえで、『じゃあ自分は何を選ぶのか?』ということではないでしょうか」

そう語る佐藤さんの真意――平成世代ならではの自由とその反面、突きつけられる厳しさ、平成世代のポテンシャルを引き出すTAMのカルチャーについてお話を伺いました。

平成世代が昭和世代に抱く「ギャップ」の正体

新卒で入社したのは大手不動産会社でした。就活生だったころの私は、そこまでなにも考えていなくて・・・ まさか自分がこんなに仕事を好きになったり、仕事に打ち込むような人になったりするだなんて思っていなかったから、多くの就活生と同じようにネームバリューがあって、安定した大企業に入ろうと思っていました。

入ってみると、イメージどおり「The 社会人」な毎日。スーツを着て、満員電車に揺られ、遅くまで働き、毎晩のように飲みに行く。新人は一番に出社して、オフィスの電気をつけて、掃除をする。ランチの席取りをして、先輩が帰るまでは帰らない。部長が荷物をまとめて席を立ったら「今日はどのお店にしますか?」と声をかけて、その場で店を予約する・・・ “体育会系”ですよね。

たぶん、昭和世代の先輩たちは、一体感・・・というか、一緒にクライアントのところに通って、一緒に残業して夜遅くまで働いて、一緒にがんばったよね、みたいな、誰かと時間と場所をともにすることで「感情」を共有して人とつながることができる、という価値観だったと思うんです。

それが、私のような平成世代の場合、TwitterやLINEで育って、人と「情報」を共有することが大事。人間関係は自分から相手にメリットがある情報を渡すところから始まるものだってことがからだに染みついていて、そのジェネレーションギャップはあるなあと感じていました。

でも別に、それが嫌だってわけでは決してなくて。職場には仕事ができて、尊敬できる先輩がたくさんいて、その下で働いたり、話を聞いたりしてたくさんのことを学びました。なにより新人の自分はなんの利益も生み出していないわけだから、なにはともあれ先輩が仕事をしやすいように動くが自分の役割、そう思っていましたし。

それでも、毎日Webの記事やTwitterでベンチャーや海外で働く友人の日常を垣間見るわけじゃないですか。そのうちに、たしかに私は今、大企業で大きな仕事、組織の動かし方を学んでいるけれど、たとえ規模は小さくとも、よりスピード感のある環境で、自分が働きたいように働く道もあるんじゃないか――。

そうして、転職を考え始めました。


平成世代に合う誰もが一人の「個人」として関わり合う組織

TAMとの出会いは、とある転職エージェント経由でした。当時の私はまだ大手志向、安定志向が抜けきれていなくて、転職活動も、自分の好きな会社に自分から飛び込むというより、大手の転職サイトで「自分に合う会社を教えてください」ってやっていたんです(苦笑)。

TAMはそんな転職先候補リストのなかにたまたま入っていた一社で、だけど、いろんな企業の面接を受けてみて、TAMの代表・爲廣さんと面談したときが、「いいな。いちばん合うかも」って思えたんです。

爲廣さんには、他の会社の面接と同じように会社の志望動機やこれまでの仕事のことももちろん聞かれたんですけど、それだけじゃなくて、自分「個人」としてのこれまでと、これからのことも聞いてくれたんです。

履歴書に「趣味:フランス語」って書いていたら、「なんで?」「いつかはフランスに住みたいんです」「うちは海外支社を増やしているから実現できるかもしれない。どうすればできるかな」・・・だとか。ここなら「仕事は仕事、私生活は私生活」って分けなくていいかも、と思えました。

TAMでは年齢や立場、国籍関係なく、フラットに話せて、誰でも一人の「個人」として関わってもらえる感覚があって。

チームに台湾とハワイのネイティブのメンバーがいるんですが、私が入社して1週間のとき、広告のプランについて「これ、どう思う?」って意見を求められたんです。「私はこう思う。だけど、他の人にも確認したほうがいいよ」って答えたら、「違うよ。『Kahoの』意見が聞きたいんだよ」って言われて。

衝撃的でした。会社って、上司をすっ飛ばして自由に発言できないことのほうが普通じゃないですか。下手になにか言えば、たとえそれが正しいことであっても、「なんであいつが。出しゃばるな」って釘を刺されることだってあるのに。

それがTAMでは「ブログ読んだよ」「Slackで情報シェアしてたね」「このプロジェクトを手伝ってもらえないかな?」「まかせるよ」みたいな言葉が飛び交っているんです。

そのほうが、私のような平成世代の人にとっては自然体でいられて、仕事により集中できるし、成果も上がるような気がしています。最近は家にいても仕事のことを考えてしまう。それくらい、仕事が楽しいってことだと思うんです。


表裏一体、平成世代に求められる「自由と責任」のリアル

一方で、「個人」として関わってもらえるということは、その分、自由と責任はセット、だとも言えます。

誤解を恐れずに言えば、大企業のような上司が自分の身を守ってくれる環境では、 “新人としてできるところまで頑張ってみました” でも、ある程度許されるのかもしれません。クライアントと対峙するのは先輩社員で、かならず途中で手を差し伸べてくれるから。

それが今は、仕事の責任がほんとうに最後まで自分にある。つくった資料を先輩が細かくチェックしてくれるともかぎらないし、常に自分の考えを持っていないといけない。しかもその考えは、社内ではなく、クライアントに評価されるものでなければならない。「大丈夫、大丈夫」って信頼してまかせてもらえるからこその責任を感じています。

だから、自分のプロジェクトがうまく行かなくて、終電まで会社に残ることだってあるんです。これが厳しく管理される職場なら、夜21時になるとパソコンの電源が勝手に切れて、それ以降は仕事したくてもできない。クライアントにも「21時に電源が切れるので、それ以降は対応できません」と言えたんだろうけど。

ゴールデンウィークや長期休暇でも、スマホのプッシュ通知が鳴ることもある。私は完全なオフはつくらない、ずっとゆるいオンを保っていたいタイプだから、すぐに返事するようにしているんですけど、それだってその人次第。どこまでも自己責任なんですよね。

ほんとうにいざというときは、まわりが助けてくれます。朝会で普段感じていることを共有したり、月に一度、リーダーと自分が目指すキャリアについて話したりもします。

だから、安心感はあるんですけど、こういう自由なカルチャーが合わない人もいるんだと思います。平成世代って、個として自由に働くことが許されるけれど、その分、求められるもののハードルは上がっている。昭和世代よりシビアな目で見られるんだと思うんです。


昭和を否定するのは思考停止。世代間ギャップは異文化理解の機会

もしも、前職時代、「平成世代と昭和世代は相容れないもの。自分は先輩たちのやり方に合わせるしかない」と思考停止していたら、今の自分はなかっただろうと、つくづく思います。

学生時代、よく海外に行っていて、異文化交流が大好きでした。それであるとき、「そうか。会社も異文化交流だと思えばいいんだ」ってひらめいて。それで、年上の相手を理解する努力、相手に年下の自分を理解してもらう努力は必要だって思うようになりました。最初は「接待ゴルフとか無理」って思っていたけれど、行ってみたら、意外とその良さに気づいたり(笑)。

上の世代のことを最初から何も受け入れないとか、好きなことだけやっていればいいとか、そういう考え方は違うのかなって。なにか問題に直面した時にも「あの人だったらどう考えるかな?」と想像力を働かせられる自分でありたい。そうしたほうが、仕事も人生も楽しくなると思うから。

そうやって、自分のキャパシティーと持ち場を広げていきたいですね。目の前の仕事でクライアントからの信頼を貯金して、「海外がからむ仕事なら佐藤さんだね」って言ってもらえるくらい。

今はオートマ運転で定年まで生きていけるような時代じゃない。常に自分の頭で考えて、いつかはフランスにいられたらと思います。

株式会社TAM アカウントプランナー 佐藤佳穂
1993年秋田県生まれ。学生時代、インドでの住居建築ボランティアや5度のフランス滞在などを経て「街や人の生活」に興味を持ち、新卒で大手不動産会社に入社。現在はTAMの広告チームで、SNSアカウント運用、キャンペーン企画、マーケティング戦略立案などをはじめ、デジタル上のコミュニケーション設計をしながら「人の生活」について考える。
[取材・文] 水玉綾 [企画・編集] 岡徳之 [撮影] 三浦千佳


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