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昨日の本棚

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読書記録、本や書店に関する考察など。 読書記録は月に1回のふりかえりをベースに、おもしろかった本は個別に考察も書きます。
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#エッセイ

読む

今読んでいる本がすごくおもしろくて、読み終わらないうちに読書感想文を書きたくなっている。 「一冊の中にぴんと来る箇所がひとつでもあれば読書としては成功」という話、たしかに、たしかにそうだとは思うけれども、やっぱり記憶からこぼれおちそうな話なども、なんだかんだ記録に残しておきたい、と思う性である。 今回でいうと、たとえば「本屋」という生業について、「職業」というせまい領分でしかとらえていなかったけど、それは情報の取り入れかたにかかわる話であり、またインプットこそがアウトプッ

天と地のはざまで

いま地球上に住むすべての「人間」の根源が、彼らにあるわけではない。 彼らはあくまで、一人の「原始人類」から始まった大きな流れの先にある、数えきれないほどの細かい分岐のさらに先に、今も生存する一部族であるだけだ。 それでもありのままの姿を切り取ったこの記録には、私もDNAの一部分に彼らと何かを共有しているのではないかという錯覚を感じさせられる。地球の反対側の、深い深い森のどこかに住む彼らと。 『ヤノマミ』。 2010年に刊行された、国分 拓さんのルポルタージュである。 テ

役に立たないが、知りたい

『直島誕生』秋元雄史 現代アートからの疎外感を感じていたわたしへ。 精神安定剤になるような一冊を探して本屋の棚を漁って、見つけた本がこちら。ミニマムな表紙。 現代アート=理解しがたい芸術、という思い込みを消し去ってくれた貴重な一冊。 「現代アート」と称される作品たちが、近代までの一般芸術に比べて敷居が高く感じられる理由。それは背景や伝えているメッセージが、一般常識や社会通念から離れたところに置かれているからなのだと思う。 中世ヨーロッパでは、キリスト教を理解する者であ