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無題 002

欲求。

終わりのない湧水のように生きている。
一瞬で私を何かの境地に連れて行く、否応なく。

コーヒー豆の香りが、何の前触れもなく鼻から脳みそへ流れ込んでくる。
瞬間、はっとして文字通り息を呑んでいる。
あわてて、今度は肺を全開にして空気を吸い込む。
今度は、あまり香りを感じられない。
眼はしっかり開きつつ、闇の中で手さぐりをするように
さっきの成分を求める。
その手をかすめるようにして、時おり香りがふわりと私の中に入ってくる。
笑うように。風や、波のように。

一度手にした何かを、私の感覚器官や海馬が鮮明に覚えている。
再び出会ったときに、何も考えず、すぐ抱きしめられるように。

最後まで読んでいただき、うれしいです。 サポートをいただいたら、本か、ちょっといい飲みもの代に充てたいとおもいます。