カタレプシーから入るのはマナー違反か?
こんにちは、石井多聞です。
Twitter上で少しだけお話した「催眠でカタレプシーから入る問題」です。
カタレプシー(catalepsy)は「強硬症」ともいわれます、筋肉が緊張し自身で制御できなくなる症状です。
もちろん、催眠で引き起こされるカタレプシーは、強硬症とはメカニズムが全く異なる別物です。
よくテレビなどで「握った手が開かなくなる」という催眠がありますね、まさにそれです。
ショーで行う催眠では、まずカタレプシーから入る傾向があります。
しかし、他の系統(療法系など)から催眠に入ってきた方は、初回にいきなりカタレプシーから入ると聞くと「カタレプシーから入るなんて!」と驚かれました。
何故かと言うと、催眠は催眠状態を徐々に深めていき、難度が低い現象から段階を踏んでいくものというセオリーのようなものがあるからです。
相手が催眠状態が深まっていないのに、難度の高いカタレプシーを試して失敗してしまうと、相手に「自分は催眠にかからないんだ」という思い込みを与えてしまいます。
だから「いきなりカタレプシーなんて乱暴だ!」といわれるわけです。
カタレプシーは難度が高いのか?
実はカタレプシー自体は難度は高くありません。
人間の身体は意図的に脱力することは難しいですが、緊張状態は意図的に起こすことが容易だからです。
なぜ難度が高くなるかと言うと「禁止暗示」(手が開かないなど行動を禁止する)を乗せるからです。
禁止暗示は成功すれば非常にインパクトがありますが、一瞬で成否が判明してしまうためリカバリーができないのです。
しかし、僕のノートである「多聞式 催眠導入ルーティン」は、初回の現象はカタレプシーをしています。
実は僕も初回でカタレプシーから入る派(厳密には振り子から入ってます)なんですね。
なぜカタレプシーが失敗するのか?
twitterでも書いたのですが、
術者の工夫でカタレプシーの失敗率を下げることはできると思っています。
・状況ができてないのにやる
予期(催眠にかかる期待)を上げていなかったり、不安を取り除いていなかったり、催眠というイメージが相手の頭に構築できていなかったり、状況ができていないのにカタレプシーをやって失敗します。
(この場合は、他の現象でも失敗しそうですが)
・バレバレのトリックでやる
これは後の「フィンガースティック問題」で語ります。
・観察しないでやる
手が固まる暗示をかける際に、相手の手が明らかにユルユルになのに「固まる」という暗示を入れる人がいます。
ちゃんと相手の手が緊張状態になるよう、しっかりと誘導してから暗示を入れるようにしましょう。
・いきなり禁止する
「固まる」と暗示を入れ、指が固まっている事を確認してから「手が開かない(禁止暗示)」を入れます。
いきなり「固まって手が開かない」と禁止暗示を入れてしまうと、まさに博打をうつ形になってしまいます。
フィンガースティック問題
フィンガースティックの問題点は「身体の仕組みを使ったトリック」である事が広く知られすぎているという点です。
フィンガースティックのリスクとして、複数人に同時にかけた場合、
「俺これ知ってるぜ!これ身体の仕組みを使ったトリックなんだよ!!」
とイキってる人が出る可能性があるからです。
まぁイラっとしますが、話術で対処可能なので、それはまだ良いんです。
問題は、トリックと知っているのに言い出せずに
「(あ、この人だまそうとしてる…)」
って、静かに協力的な態度がなくなってしまう事です。
フィンガースティックの後段のカタレプシー現象は、身体のトリックではない純粋な催眠現象なんですが、協力的な態度がなくなってしまえば現象は起こりにくくなってしまいますよね。
技法としては非常に優れているのですが、リスクとリターンを考えたときに、あえてやるほどの技法ではないのかなと思います。
他にも同じくらい優れた技法はたくさんあるのですから。
最後に
禁止暗示は鮮烈な印象を相手に残し、「予期」を高める効果があります。
カタレプシーをやる場合は、入念に、慎重に、博打を打たず、計画的にご利用ください。
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