Physical_Birth_House_-ママ療法士出産体験記-_Vol

Vol.3 はちさん出産体験記-後編-


引き続き、はちさんにはインタビューにお答えいただきます。

第一弾はこちらからどうぞ。


無痛分娩とうんち事情


めぐ)はちさん、無痛分娩について、実は4人とも興味津々です。
まずご確認なのですが、1人目は無痛分娩ではない方法で出産されたのですか?


はち★)
一人目はソフロロジー推奨の普通分娩でした。
ソフロロジー教室に参加して呼吸法を練習しました。
NSTのときもソフロロジーの音楽を聞かされてましたね。
実際陣痛が始まって子宮口7センチくらいからソフロロジーのことは完全にぶっ飛んでました。
「息を止めない!吐くよー!」と言われてもいきみたくてしかたなくて。
あるあるなエピソードですが「もうお腹切ってください〜」って泣きながら懇願してました。
そんな感じでソフロロジーの効果は体験してません笑


ささまや)ソフロロジーは私とゆみっぺさんもなんですよ!
ソフロロジーは人によって効果様々ですよね。
わたしも一人目のときは??状態で、二人目で解剖学的な知識と合わせて活用できた感じです。
はちさんはあえて無痛を選んだんですか?


はち★)
そうです!陣痛やパニックになるのが嫌だったのと、子どもは二人までと決めていたので最後のお産は落ち着いて臨みたくて無痛を選びました。



ささまや)破水からの無痛分娩って陣痛の感覚がないんですか?
陣痛がきて、最後だけ麻酔で痛みなく出産できるのかと思ってました!


はち★)
収縮の感じはありますが痛みは感じませんでした。
全開〜出産まで腹筋がものすごく痛くて攣る感じで息が出来なくなりました。
助産師さんは「陣痛のでお腹まわりの筋肉が収縮してるからかも」といっていましたね。


カナ)無痛分娩って思ってたよりもずっと複雑なものなんですねー。
陣痛でお腹がつる感じ…!
感覚がないだけに、その部分が強調されて感じるんでしょうか?
実は普通の分娩でも、つるほど筋収縮してるんですかね?


ささまや)子宮の収縮の痛みが1番強調されてるだけで、実は他のところも痛いんでしょうね…。
術部の痛みが無くなったら他のところが痛み出す的な。


はち★)
調べてみると、無痛分娩はや温痛覚をとるみたいですね!
もう少しどういう感覚を麻痺させてるのか調べてみようと思います。
実際には1時間おきくらいに麻酔が切れるのでその都度追加という感じでした。
私は効きすぎていたため、最後は使わなかったので若干痛かったですが余裕でしたよ。


めぐ)温痛覚だけ・・・!これは大きな学びです!
調べていただきありがとうございます。


ゆみっぺ)へぇー!全く痛みがないってわけではないんですね。
1時間おきってけっこう短い。いきまなくてもいいんですか?


はち★)
私はいきむように言われました。いきめるんですよね、不思議。
麻酔が入るとツーっと冷たい感じは感じていたんですよ。
でも下肢はブラブラでした。

出産前に無痛のことを調べていたら、いきまなくてもツルんと産む方もいるようだったのでひとそれぞれなんでしょうね。


めぐ)不思議ですね〜!!
1人目は普通分娩だったとのことで、普通分娩と無痛分娩とで「いきみ」の感じ方って違いはありましたか?


はち★)
いきむのは同じ感覚でしたよ!
「肛門の方へ、排便するように!」って助産師さんに言われてたんですが、ただただ腹圧かけてただけだったみたいです。
摘便してもらってようやくいきむ方向がわかったという感じでしょうか。。「排便するように!」って言われませんでした??


ささまや)排便するようには言われませんでした。
いきむ感覚があって、赤ちゃん出てくる感覚もあって痛みだけ除外されるなんて、本当にすごい技術ですよね!
無痛=楽してるという世間のイメージがありますが、感覚の分類で温痛覚だけ除外されるんだよーと知ったら無痛分娩に対する見方が変わりますよね!


めぐ)いきむのと腹圧をかけるのって、お腹が大きい状態でもう何がなんだかわからなくなりそうですね。
出産経験ない私からすると、臨月とかうんちするタイミングで赤ちゃん出てきちゃうんじゃないかって不安です(小学生レベル?


はち★)
たしかに臨月あたりになるとうんちするの怖かったかも。。


ゆみっぺ)私は便秘すると解消するときに下痢気味になる時があって、下痢の痛さなのか陣痛なのか分からなくて怖いって思ってました(笑)
陣痛の間、すごくうんち出そうな気がしてたまりませんでした!
浣腸して出たからそんな事はないはずなんですがね。
お産中に「あー(うんち)出そうです(うんち)出たらすみません!!」
なんて言ってました。


ささまや)ゆみっぺさん、それわたしも一人目のときいいました…!
助産師さんに「でてもいいよー」って言われて、やっぱり出るんだ!と思いました。。
なので2人目は事前にグリセリン浣腸をお願いしました…


カナ)そういえば私も「直径10cmのうんちを今から出すようなもんだからな!」と医師に言われた記憶です。
会陰が傷つかないように保護してくれるので、そこに向かっていきめと言われたんですけど、たぶんうんちする時くらいしか普段いきまないから、それが声かけとしては一番伝わりやすいんでしょうね。


はち★)
声かけの伝わりやすさか!そうかー!いきむって普段の生活では排便(力む)くらいしか思い浮かばないから声かけとして伝わりやすいんでしょうね。皆さんで話してるとほんとそれぞれで参考になります。


めぐ)声掛けの重要性、普段のリハ業務でも活かせそうな視点です!
皆さんナチュラルに話してますが、結構壮絶なこと話してます。。
これは出産経験者でないと語れない・・・!


ささまや)ちなみに…無痛のほうが産後の回復は早かったですか?


はち★)
産後の回復については身体的には一人目とさほど変わりませんでした。
でも、恐怖心やパニックにならなかった分、精神的な疲れは少なかったと思います。


めぐ)身体的な回復も大事ですが、精神的な疲れって見えない部分だったりするので、着目したい大事な部分だと思います。産後うつや、産後1年未満の女性の自殺も世間では話題になっていますし、少しでも安心して出産に臨めるって大切なことですよね。

2016 年、竹田は東京都監察医務院との共同で、2005 ~ 2014年の 10 年間に東京 23 区で発生した妊産婦の異常死を分析し、この間に 63 例の自殺が起こっていたことを発表した(妊娠中 23 例、産褥1年未満 40 例)。
この数字は産科異常による妊産婦死亡率(東京都)の2倍以上であったことが大きな衝撃であったが、さらに自殺した妊婦の約4割がうつ病または統合失調症であったこと、産婦の6割が産後うつ病をはじめとする精神疾患を有していたことが明らかになり、妊産婦のメンタルヘルスケアの重要性を再認識させる重要な報告であった(図6)。

経産婦うつ

 (公益社団法人日本産婦人科医会 妊産婦メンタルヘルスケアマニュアル~産後ケアへの切れ目のない支援に向けて~ より引用)



産後のコンディション



めぐ)はちさん、今でも身体の柔軟性の低下や、身体的トラブルで続いているものはありますか?


はち★)
産後直後〜半年は肩凝りや抱っこによる左上肢の倦怠感、尺側神経領域が
ピリピリしていましたね。
今はピラティスをしているので柔軟性と身体のコンディションは良好です。


カナ)ピラティスされてるんですね!いいですよね!
やっぱりなんだかんだ体幹が使えるようになるのって育児においても大事ですよね。


ゆみっぺ)妊娠前から胸郭の柔軟性を高めておく、腹横筋や腹斜筋のインナーマッスルを鍛えておくことは妊娠中産後のトラブル予防、準備としても効果的な要素になりますね!
アスリートや運動習慣のある方はやはりトラブルが少ないのでしょうか?


カナ)予防的には言えそうですよね!
一応、腰痛骨盤痛のリスクファクターとして相関ありとされてるのは


・腰痛または仙腸関節の既往
・骨盤外傷の既往
・前回の妊娠での腰痛骨盤痛の既往

くらいしか挙げられてないんですけど、
恥骨痛の方や仙腸関節痛の方の治療としては
腹横筋と骨盤底筋の共同収縮の指導から入る」っていうのは言われてますし、そのためには横隔膜の動き(胸郭の動き)は大事になるんですよね。
なので、骨盤の外傷や骨盤痛の既往のないアスリートの方であればトラブル少なそうですよね。このあたりデータありそうですね。



はち★)
なるほど。
ピラティスでは呼吸を意識しながら腹横筋、骨盤底筋、その他インナーマッスルをガンガン使います。
脊柱の動きはもちろん胸郭も動いてくるのでわたしにとっては妊娠中〜産後のトラブルにはうってつけだったのかもですね。
だから今、調子がいいのかも。
妊娠中〜産後の体の不快感やメンタル面も含めた体調の悪さを経験したのもウィメンズヘルスに興味を持ったきっかけでした。
こうやって評価〜検討していくのって凄く楽しいですね!!


めぐ)はちさんからたくさんお話聞かせていただけて、妊娠出産のリアルを知ること、みんなではちさんの身体面ついて考えられてよかったです!
ありがとうございました!!


編集後記


★はち)
そういえば、切迫早産を乗り越えて仕事復帰をしたとき、必ず抱えなければならない方を担当することになりました。
少し不安で介助量は多いですか?と聞いたら「仕事を選んでいる!」と言われたことがありました。
療法士は介助量とか数値化しにくいなぁと。
重いも軽いも体格体力トランスファー技術も統一しにくいし、個人の主観に頼りがちだと思います。
何かベースになる指針があれば上司にも提案しやすいのでしょうか・・。


カナ)はちさん本当にすごく不安で大変だっただろうな…って
ギュッとなってしまいました。

私は今はフリーで直接業務管理などもしてないんですけど、
過去には介助量の低い方・自立度の高い方の担当に替えてもらって新患は受け持たないようにしたり、単位数を調整してもらったりということはありました。

厚労省からも妊娠中の業務に関して連絡カードの利用が言われたりもしてます。妊婦検診の時などに医師に相談して、業務の軽減や時短などを利用できるようにカードの記載をお願いしてみるというのも一つかもしれないですよね。



★はち)
そうですよね!これを何度書いてもらおうかと思ったか...
切迫もあり休みがちだったので遠慮していました。
今思えばなぜ!なぜ遠慮したんだよぉ!!!と肩をゆすりたい。
きつい、辛いとか妊婦の労働に纏わることはやはり主観的なもので良いと声を大にしたい。


めぐ)私は今スタッフマネジメントを任されていて、昨年初めてスタッフで妊娠された方がいました。
初めてのことでマネジメントについて不足していた部分しかなかったし、今でももっとできたことがあったと反省しているのですが、その妊娠した人が同い年ということもあって、上司にどう掛け合うべきかとか一緒に考えました。
その時は母性健康管理指導事項連絡カード案も出しましたし、それを機に、「妊娠出産・介護休業のマニュアル」を作りたいと上司に申し出て、紙面上ですが、管理職が何を知っておくべきか、当事者はどんな流れで職場に報告すればいいかなどを一応形にはしました。
妊婦さんへの配慮に関しては確立されていなくて、辛い・悔しい・申し訳ない・色々ネガティヴな思いを抱えてしまう女性も多いんだろうなぁと思ってます。


★はち)
たなめぐさんの職場もすごくいい....!!!!
リスクマネジメントを伝えるってめっちゃ素敵ですよ!
そういうのがあればいいなとホント思います。
妊婦さんが安心して仕事ができる環境が普通になればいいですよね。


ゆみっぺ)女性の働き方、生き方が多様化してきている以上、スタッフ同士の話し合いがスムーズにできる環境と人間力、想像力を働かせていかに助け合うかだと思います。


ささまや)私も事業所で初めての妊婦で個人的に動いたので、そういうことを一緒にやってくれる管理職がいる職場が良かったな・・。
個人とか個々の職場で努力してやるんじゃなくて、協会がガイドラインとして定めて欲しいところですね。
運動量低くても、体重80kgあれば足の重さは15kgあるわけですし。
わたしもゆみっぺさんみたいに、みんなが何の条件も関係なく気軽に助け合えたらいいのになーと思います!


★はち)管理者に言われたのが
「出勤出来ても訪問に行けないとなると給料をあげる財源がない。体のことを考えて事務にまわってもらうが減給です。」と。


めぐ)あぁぁ(T . T)
無理したくないけど、お金を引き合いに出されると本当に辛いですよね。
療法士がお金を生むのは訪問に行った件数ですもんね、私も今管理職で、事務職ではなく、療法士にしかできない事務所業務を新しく生めるかどうか試行錯誤しています...。
産休前の減給は育児休業給付金に直結しますし、すごく悩ましいですよね。


ゆみっぺ)訪問=収入と考えてしまうと訪問できない人は何も生み出せないとなってしまいますが、例えば求人サイトを通さずホームページやSNSから求人が入れば、100万くらいのお金が節約できるわけですよ。
そう思うとブログやホームページに携わるのもありって思うんですけどねぇ。


めぐ)ゆみっぺさんさすが!
職場ライターとしてブログ作って職場認知度を上げるのも考えてて、今の高齢世代の閲覧数は見込みづらいですが、子育て中(中〜高校生)の世代くらいからは、数年後の親の介護をネットで情報得るかなぁと思ってありかなぁと思っていました。
間接的利益にしかならないのですが、、、。

★はち)
めぐさんの職場ライターナイスアイディアですね!
小児リハをされているなら保護者や地域連携室の方たちも見るかもしれませんね。情報を集めていらっしゃる方が多いと感じています。
そういうものがあれば妊婦さんの訪問療法士はかなり助かると思います!


めぐ)ゆみっぺさんのように数字を出してプレゼンできたら強いですよね。
できること、まだまだありそうな気がしてきました!
女性が働きやすい職場のロールモデルになれるように頑張りたいですっ!


★はち)
妊婦さんが安心して仕事ができる環境が普通になればいいですよね。
この度はありがとうございました。


めぐ)はちさんありがとうございました。
次回もお楽しみに!


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*ウィメンズヘルス初学者のための語学講座*


ソフロロジー:1960年にスペインの精神科医、アルフォンソ・カイセド博士が意識の段階を研究する事によって提唱した、精神の安定と調和を得るための学問。
1972年、産科にこの学問をはじめて導入したのは、パリのジャンヌ・クレフ博士。ラマーズ法を超えた分娩法として、パリを中心にヨーロッパの医学大学などでも広く行われていた。
この分娩法は松永博士によって1987年、フランスより日本にもたらされた。
無痛分娩:日本では下半身の痛覚のみを除外する硬膜外麻酔が一般的である。各医療機関によって手術進行や適応になるかどうかのインフォームドコンセントが行われた上で実施の可否が決定する。メリットデメリット
また無痛分娩を行う医療機関に対し、厚生労働省から示されている条件がある。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000204861.pdf
母性健康管理指導事項連絡カード:医師等の女性労働者への指示事項を適切に事業主に伝達するためのツール。働く妊産婦の方が医師等から通勤緩和や休憩などの指導を受けた場合、その指導内容が事業主の方に的確に伝えられるようにするために利用する。
https://www.bosei-navi.mhlw.go.jp/common/pdf/bosei_kenkoukanri.pdf

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