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給食は崩壊の危機

とにかく人手不足です。世の中には仕事をされておられない方がいらっしゃると報道されているのに、なぜかこの給食業界は人気がなく、いつも人手が足りないのです。


このままでは、施設で、病院で、学校で、給食の提供できない日が来ます。すでにクックチル方式の冷凍の調理済みの食品を温めるだけ、という施設も普通にあります。さらには都心から離れた町のグループホームなどでは、3食全て既製品の料理をそのまま提供するようになっています。レトルトパックであったり、冷凍食品であったり、昔と違って食品加工の技術も進み、私が料理するより、ずっとおいしいのです。問題は、種類に限りがあると言うことくらい。長期で食べるにはバリエーション不足。また、栄養士が配置できない老人ホームは、宅配のお弁当を提供しています。そしてそのお弁当に飽きたら宅配業者をチェンジ!厨房が稼働できなくてもそれはそれでいいんです。自由裁量です。楽しめて美味しければいいのです。

さらに、給食業界では調理員が圧倒的に人材不足です。いまだ頑張っておられる64歳調理員は、出勤すると早朝からその日の片付けが終わるまでと10~13時間は勤務されています。私の勤めている施設でも、そんな勤務の60歳以上の方が半数。毎日「疲れた」が口癖です。一日も早く辞めたいそうです。
「働き方改革で年休も取得義務があり休日は増えてうれしいのだけど、でもその分の働く人は増えないし、さらに慢性的な人手不足で会社から提示される勤務表は初めから時間外勤務が割り当てられている。誰かが休むと、誰かが休日出勤することになる。」と話されておりました。実際に勤務表を見せていただくと、70時間程度の時間外勤務が初めから組み込まれている状態です。

そこまでしていても現場では人手が欲しい時間帯に手薄。例えば本当は三人勤務している時間帯に二人しかいない。でも食事を提供する時間は決まっているので、人がいないから食事は1時間遅れますとか、人がいないから料理が一品間に合いませんでした。とかは許されません。だから、調理に時間をかけずに調理加工品も多く使用されています。加工品が悪いわけではありません。先にもお話ししたように、美味しい加工品はたくさんあるのです。でも、問題は手作りより金額が高くつくこと。だから決められた食材費で賄うように組み立てると、高い加工品を利用するとその他は食材はお安い材料を選ぶ必要が出てくるのです。そうすると、例えば同じ数量のさつま芋でも、形が不揃いで皮をむくのさえ大変と思うような細いものが納品になったりするのです。皮をむくが5本で良いところ8本手をかけることになるのです。さらには形を揃えた大きさに切るのに手間がかかるのです。手間を省きたくて加工品を利用しても、仕込みの段階で他の食材に手間がかかるのです。B級品でもC級品でも口は入れば同じ。と思っていましたが、仕込みの手間は倍増です。傷んでいるものも多く、廃棄が多ければ購入量も増えます。それに傷んでいるものをより分ける作業もまた手間がかかるものです。結局、お金と時間がかかるのです。

給与の処遇改善も望まれるところ。「時間外がなく普通に働いていたら、保険や税金を引かれると生活保護受給者と大きく変わらない給与です。」なんて言われると言葉に詰まります。少し大袈裟にはお話しされていると思います。でも確かに、施設では人件費削減の目的もあって、給食業者へ委託したのですから、高給優遇な訳はありません。自営で賄うよりお安いから給食業者へ委託するのですから。

悪循環です。どこをどうしたらうまくいくのでしょうか。一番は労力不足なので、人手が見込めないのならやはり宅配弁当が良いのでしょうか。

給食は、食べていただく方とコミュニケーションを図ることで、細やかな気遣いができているのです。このような直接目に見えてこない安心感やおいしさは、お互いの心を満たすのです。それはもうなくても良い時代なのでしょうか。私の考えは古いのでしょうか。機械的に仕事をするのなら、ロボットに置き換わる方がいいですね。相手も期待しないでしょうし。

心のない食事は満たされないと思うのです。レストランのような最高級の料理が欲しいのではなく、心のこもったお食事をお出ししたいと思っているだけなのですが、それは贅沢なことなのでしょうか。

私は何をしたらいいのか、今が考える「時」だと思います。給食は崩壊の危機にあります。

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