毒親

幼少期よりまともな会話をした記憶がない。何か喋ればニヤニヤしにがらの否定。言われたとおりにできなければ否定。いつしか会話はなくなったし、近くにいるときは目立たぬように自分を押し殺していた。

就職で田舎から離れ、ここ数年は帰郷も止めた。母親とは定期的に電話で長話をしていたが、一月ほど前に終止符を打つことにした。話がかみ合わず、聞いているか問うたところ、聞いていないことがわかったからだ。直接そう言ったわけではないが、彼女にとって私はペットの犬や猫と同列だった。徒労感、孤独感でいっぱいになった。

一見するとマトモな人間として見られるであろう両親だが、相手を人間扱いしていないと子供は不幸だ。何を言おうとも人形に話しかけるに等しいからだ。ムダな相手とはしゃべらなくなるのはとても正常なことだと思う。

約半年間、毎週の電話でまともに互いの意図を汲み取ろうと努力した。最後の一月はメモに要旨を書いて渡していた。だが何もわかる兆しはなかった。他人にしてもらったことに、たまに眺めてニヤついている姿が連想された。もはや時間が無駄なだけで、彼らの妄想に付き合うことは人生の損失でしかない。

昔見た映画を思いだした。は虫類型の宇宙人が、地球人の皮を被って攻めてくるものだ。Visitorというなまえだったと思う。実際に皮を被っているかどうかは知らないが、他人を常に見下している人は、この映画に出てくるエイリアンのようなものだ。理解しようとしても、根本的には違う生き物だから、永久に理解し合うことはできないのだ。

見たままにわかりやすく毒となる親だけでなく、深く静かに周囲に毒を撒く者達がいる。少しでも早く見切りをつけていればと悔やむしかない。互いに幸せに過ごせることが最善手だとは思うが、それがいずれかの忍従が前提になるのなら諦めるのが次の最善手だ。

人間は孤独で、良き隣人は生まれながらにして存在しないのだ。

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