日本昔ばなし風のストーリーで学ぶ、トレードの教訓

むかしむかし、ある村におじいさんとおばあさんが住んでいました。
自分たちでつくった米や野菜を食べ、ささやかながら仲睦まじく暮らしていました。

ある年の夏のこと。村ではずっと雨の日が続いていました。もう7日間連続で、毎日雨が降っています。

おじいさんは、隣に住むおじいさんと「一体いつまで降るんかのう」と話していました。

すると、ふと隣のおじいさんがこんなことを言い出します。
「面白いことを思いついたわい。この雨がいつ止むのかを、どちらが当てられるか勝負せんか?」

おじいさんは、その勝負に乗ることにしました。

ルールはこう。
翌日も続けて雨が降るのか、それとも雨が止むのか、どちらかを選択。
次の日、予想を当てたほうは、外したほうから米を1俵もらう。
そしてこのゲームは、雨が止む日まで継続される、というもの。


おじいさんは迷うことなく、次の日に雨が止むと予想しました。
「もう1週間も降り続けてるんじゃ。これ以上続くことはありえまい」

そして、隣のおじいさんは「じゃあワシは雨が続くと予想しよう」と。


次の日。
雨はまだ降り続けていました。

おじいさんは、大事に育て収穫した米俵1俵を、隣のおじいさんに渡すことになりました。


そして再度、2人は翌日の天気を予想。

おじいさんは、また次の日に雨が止むと予想しました。
「昨日に比べて空の色が変わってきておる。明日には止むはずじゃ」

しかし。
次の日も雨はまだ降り続けていました。

おじいさんは落ち込みながらも、意地になりはじめていました。
「明日こそ雨は止む!いくらなんでも降りすぎじゃ」


しかし、なんと次の日も。その次の日も、また次の日も、雨は降り続けました。

そしておじいさんは、毎日「明日こそは」と雨が止むほうに予想を続け、とうとう家にある米は残り3俵になってしまいました。


その様子を見ていたおばあさんは、「おじいさん、もう止めておきなさい。いまなら節約すれば何とか食べていけるから」と声を掛けます。
しかし、おじいさんは「ここまで来たらもうやめられん…!」と聞く耳を持ちません。

それどころか、「明日は米俵3俵の勝負にしてくれんか?もしワシの予想通り雨が止んだら、3俵を返してもらう」と、手持ちの米俵すべてを元にした大勝負に出ます。

すでにたくさんの米俵を手にしていた隣のおじいさんは、「まあ良かろう」と承諾します。


翌日。
それでも雨は、止んでくれませんでした。

ついに、おじいさんの家にある米はすべてなくなり、ゲームは続けられなくなってしまいました。


家に戻り、途方に暮れるおじいさん。

あれほど仲の良かったおばあさんは、とうとう愛想をつかし、ひと言も声を掛けることなく家を出ていってしまったのでした。

結局、その雨は30日間にわたって降り続けたといいます。


<解説>

投資の世界には、「落ちてくるナイフはつかむな」という金言があります。
これは、大きく価格が下がっているときに買ってはいけない、という意味の言葉。

「ここまで大きく値段が落ちてきたんだから、さすがにもう上がるだろう」という理由で買ってしまう危険性を表しています。

つまり、「安易に逆張りするな」ということですね。


上のストーリーの場合は、天気という不確定要素の強いものが対象ですから、投資家たち自身が価格を動かしている投資の世界とは少し異なります。

しかし、こういった”どちらかに賭ける”といったゲームには少なからず、流れというものがあります。投資の世界でいえば「トレンド」と呼ばれるものです。

逆張りは、ときには有効です。反転したポイントの初動に上手く乗ることができれば、大きな利益を得ることもできます。

しかし、入りどころや損切りポイントを慎重に見極めることができないと、ずるずるとマイナスが増え続け、取り返しのつかない状態になってしまうことも。

安易に入ってしまうと、一歩間違えれば破滅の道なのです。


こういった強い勢いを持った一方向へのトレンドというのは、めったにないように思えて実は意外と発生するものです。
そこで安易な逆張りによって、コツコツと積み上げてきた利益を一発で飛ばしてしまう人も珍しくありません。

基本的には、トレンドに逆らわず順張りをするほうが、安全で合理的な判断ではあります。

特にトレードを始めて間もない人は、逆張りには大きなリスクが伴うことを覚えておいたほうが良いでしょう。


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