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ムービング・ターゲット

多くの企業は誇りを持っています。

商品に自信がある。サービスの丁寧さに力を入れている。小さな要望にこそ誰よりも素早く対応する。

このような感じで、何かしら「自分らしさ」を出すために、そして定着したアイデンティティを保つために、譲れない部分というのを作っています。

で、1dayでもプロジェクト型でもなんでもいいんですが、新規の企業にコンサルティングに入るときは、このような「企業が大事にしていること」の話を伺うことが多いです。そして、ぼくもそのような話を聞くことがとても大好きです。

だって、自社の自慢や力を入れているところを語ってる時の社長は、かなりエネルギッシュになってまからね。それに、基本的にはポジティブな言葉しか出てきませんので、逆に刺激を受けることができちゃいます。

さらに言うと、業界の深い話や商品開発の裏側なんかも話が聞けちゃんで、知的好奇心もバンバン満たすこともできます。

なのでぼくは、企業や社長さん、幹部レベルの人たちが抱えている信念や、譲れない部分を聞くのが大好きです。

そして、愚直にぶれずに行動をするという、ある意味、日本人特有の文化のおかげで、日本企業の大半は世界でも珍しく長寿企業が多いんじゃないかな?と思っています。

この「日本人らしさ」ってやつ、ぼくはとっても好きなんですよね。

だけど、コンサルタントとして話をしていると、その愚直さゆえなのか、どうしても最初からすんなり受け入れてもらえない部分があるんです。

それは『戦略』の話です。

戦略を立てるときは必ず長期目標・中期目標・短期目標を、最初に決めますよね。それらの目標がないと、本当に行きたい場所に進んでいるかどうかわかりませんので。

で、その目標。

コンサルティングに入って社長さんからガッツリ話を聞いて浮き出てきた、いま企業が抱えている課題と照らし合わせてみると、全く見当違いである目標を掲げてしまってることがあるんです。

例えば、八百屋さんを営んでるとしましょうか。

地域の八百屋さんなんで、当然の話として商圏があります。で、その八百屋さんは商圏のお客さんに新鮮な野菜を毎日販売しているとします。そんな八百屋さんの中期目標を「売上を20%あげること」とすると、短期的な目標は「今月の売上は〇〇万円」ということになりますよね。

なので、この調子でどんどん行きつきたいゴールに向かって、目標を達成していけば、それで問題ありません。

ですがある日、お店の近くに大型ショッピングモールが進出してきました。当然、商圏のお客さんも一気にそっちのショッピングモールに流れていってしまいました。

となった場合、いま掲げている中期目標・短期目標はどうするべきなのか?って話なんですよね。

正直にいうと、ここは柔軟に中期目標と短期目標を変えるべきなんです。

なぜなら、ショッピングモールが進出してきたことによって、そもそもの「売上を20%あげること」が不可能に近くなったからです。

もちろん、八百屋さんにどれだけ資産があるかによって、中期目標・短期目標を変えるべきかどうか判断が違ってきます。それに「キャンペーンを打つ」などをして、無理やり売上を20%あげることも、当然できます。

ですが、ショッピングモールといった集客力がつよい施設と戦うなら、少々の値引きをしても利便性の悪さ(野菜を買うついでに他のも買うというのは、ショッピングモールのほうが断然強い)から、あまり効果的とは言えません。

むしろ、安易な値引きが影響して、売上は達成したけど肝心の利益は出なかったという本末転倒な状態になっちゃうことも珍しくありません。

利益が出ないことに関しては、「今だけの我慢だ」としおらしく謙虚に対応しても別に構わないんですが、そもそもその「今だけ」という根拠も確証もありませんよね。お客がショッピングモールに流れる状態がいつまで続くのかなんて、誰にもわかりゃーせんのですよ。

だったら、こちらから少しでも抵抗しましょうよって話なんです。

今までのプル型戦略じゃ歯が立たなくなってきたんであれば、プッシュ型に切り替える。つまり顧客リストを取り始めて、DMなりメルマガなりLINE@なりを駆使して、自ら販路を広げていこうぜって話なんですよ。

そうなったら中期目標は「売上を20%あげること」じゃなくて「顧客リストを〇〇件取得する」になってきますよね。

一般的に日本企業は目標の切り替えが苦手、つまりムービング・ターゲット(動く標的)の設定が苦手と言われています。その理由のひとつに、ぼくは日本特有の文化である『愚直は美徳である』の精神が影響してると思うんですが、、、まぁ、こんな流動的な時代です。

愚直な部分を持つのも大事なんですが、切り捨ててもいいポイント、切り替えても構わない部分というのも把握しておくべきだと考えます。

田辺輝恭

ReveDunJourプロジェクトは"夢”に特化し、子どもたち若者たちへ夢の持ち方・叶え方を発信しています。世界で夢を叶えてきた達成者たちが在籍。彼らから知恵と考え方を絞り取ることを是非としています。大和の心で我が儘に。