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料理人が見せた心理誘導

マーケティングで最も難しいこと。

それは、『注目を集めること』です。

いや、正確に言うと『もっとも難しい事は注目を集めることに変わった』とでしょうか、、。というのも、20〜30年前までは最も難しいのは注目を集めることじゃなくて、商品を売ることだと言われていたからです。

なんでかっていうと、それくらいの昔はそんなに情報が飛び交ってなかったからなんですね。なので、ちょっとまとめて広告を組んでプロモーションをかければ、多くの人が注目をして見てくれていました。

50〜60年前なんかもっとすごいですよ。

情報もないし、テクノロジーも発展途中だったんで、新しい商品を作ったらセールスをしなくても飛ぶように売れていたんです。車とか冷蔵庫とかですね。

けど、今の時代は違います。テクノロジーの進化に伴い、ぼくたちの生活の中に処理しきれないほどの情報が溢れるようになりました。そして、商品を販売する人が増えてきて似たり寄ったりのモノをよく見るようになりました。

先日、テレビを見てたんですが、そこで12年間ミシュラン3つ星を取得されている『かんだオーナーシェフ』の神田裕行さんが紹介されていました。

ぼんやり見てたんで、あんまり覚えていないんですが、どうやらその神田さん。30代はじめの頃に、事故で肩の脱臼をしてしまった影響で、包丁を握れなくなったそうなんですね。

普通、包丁を握る時は柄を握って峰に人差し指を添える形になると思うんですが、そのやり方だとハモすらまともに捌けなかったそうなんです。

正直、料理人を辞める覚悟もしていたとのことだったんですが、包丁の柄を握りこぶし調につかんで、ゆっくりゆっくり時間をかけて捌くことでなんとか事を運んでいたみたいなんです。

ですが、それが逆に功をそうします。

力が入らないから必死にやってただけなのに、その変わった独特の包丁使いが日本だけでなく海外の料理好きの目にとまって「おい、なんか神田さんがすごい事を始めたぞ」みたいな状態になったそうなんですね。

つまり、一気に注目を集めることになったんです。

で、もともとそれなりに知る人ぞ知る人物だった神田さんは、一気にその界隈の有名人になったそうなんです。

それだけ、『注目を集める』というのはインパクトがあるってことですね。

もちろん神田さんは、注目された先も工夫を凝らしています。つまり、実際の商品ってことですね。

例えば、お吸い物。

ぼくがテレビで見たときに出てきたお吸い物なんですが、どうやらそのまま飲んでもちょっと薄味で、特に旨味も感動もない言い換えれば「いたって普通」といったものだったんです。

ですが、そのお吸い物には1つピンポン球より一回り大きいお団子が入ってるんですね。

いろんな具材が練りこまれたお団子だったんですが、それを割ると、味覚を刺激する塊があふれ出るようになってたんです。

ゼロというか、むしろ一度マイナス方面に感情を振っておいて、そこから一気に突き抜けるように上昇させる。心が揺さぶられてますんで、そうなったら人は「うわ、スッゲェ!」と感動します。

神田さんのお店はカウンター式ですからね。「このようにしてお召し上がりください。」と、お店側が誘導することもできます。

それに、人間はもともと生存本能の一環として『ハイカロリーのものを求める』ようにできています。

ハンバーガーに目がいったり、牛丼を食べたくなったり、ゴールデンタイムの番組でラーメン・大食いばかりがやってたりするのも、完全に人間のその性質のおかげなんです。

(だからダイエットがうまくいかないのも普通だし、そもそも一人でダイエットをするのが無謀とも言えます)

で、そのお吸い物は、見事に『ハイカロリーのものを求める』という人間の習性を逆手にとっています。だから感動する。そして感動した人は口コミをする。すると人が勝手にあつまる。

有名な料理人が見せてくれた、見事な心理誘導でした。

田辺輝恭

ReveDunJourプロジェクトは"夢”に特化し、子どもたち若者たちへ夢の持ち方・叶え方を発信しています。世界で夢を叶えてきた達成者たちが在籍。彼らから知恵と考え方を絞り取ることを是非としています。大和の心で我が儘に。