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そばにいることが察知できれば

最近、生物学づいているので、今日はピーター・ゴドフリー=スミスの『タコの心身問題』を読みはじめた。

読もうと思ったきっかけはちょっとアレなんだけど、内容はまだすこし読んだだけだけど、これがなかなか面白い。

例えば、「私たちはつい行動や感覚などを動物のものだと考えがちなので、動物がいない世界には行動も感覚もないように思ってしまう。だが、実際にはそうではない」なんて書き出しからはじまる次の一文なんかは、すこし前にオフィスでそんな話をしたなーなんてことを思いだしたりした。

単細胞生物にも感覚はあるし、感覚刺激に反応を示す。その反応を、多くの人が思う「行動」に含めてよいかは判断が難しい。それでも、周囲の出来事を察知し、それに反応して動いたり、対応に必要な化学物質をつくったりということはできる。そのためには、必ず細胞の一部は外からの刺激を取り入れられる仕組みになっていくなくてはいけない。光、におい、音などを取り入れられる必要がある。そしてまた別の部分には、外の世界に能動的にはたらきかけられる仕組みが必要だ。当然、2つの部分はつながっていて、互いに連絡がとれるようになっていなくてはいけない。

タイトル自体「タコの心身問題」なのだから、まあ「感覚」がまず議論の対象になるだろうと思う。
前にオフィスで話題にしたのは汎心論なのだけど、その際も、人間以外に「心」なんてないという派と、あるでしょという派に分かれた。
僕はまあ後者だったのだけど、もちろん「心」を何と定義するかにもよるのだけど、人間同様の心はなくても、感覚と行動があれば心に類似するものはあってもよいだろうと思っている。
なんだったら非生物にだって心はあるのではないか?とすら、『モノたちの宇宙』での議論などを思い出したりして考えたりもする。

それはよいとして、細胞にだって感覚があるというのは、そこを読んでたとき、心がひどくダメージを受けていたときだったので、なんとなく元気がもらえた。
そして、感覚があるということは大事だなーと思ってたら、さっき読んでいた箇所に、こんな一文を発見。

大腸菌を主に研究している生物学者たちの間では、細菌の感覚は必ずしも食べ物の有無を知るためのものではないという見方がますます強まっている。むしろ細菌の感覚は、自分の周囲にどのような細胞があり、またその細胞がどのような運動をしているかを知るためにある、という見方だ。細菌はいろいろな理由で化学物質を排泄する。(中略)同種の細菌の排泄物を感知する機能は、それ自体、さほどたいしたものには思えないかもしれない。だが、実はこれが重要な意味を持つのだ。この機能があれば、同種の生物がそばにいることを察知できる可能性があるからだ。同種の生物がそばにいることが察知できれば、お互いに協調できる可能性も生まれる。

同種の生物がそばにいることが察知できれば、お互いに協調できる可能性も生まれる」。
いやいや、これでしょ、って思ったので、今日は書く予定がなかったnoteをいま書いてる。

人に限らず、生物が生きていくうえでそばにいるもののことを察知し、強調しようとするのは大事だ。
特に僕らのようなディレクションやファシリテーションに関わる仕事であれば、まわりのことを察知し、想像力を働かせ、互いがより良い方向に向かえるよう、様々な工夫を凝らすこと以上に大事なことはない。

協調して、なあなあになるというのではなく、協調することでより良い結果を生み出すことを貪欲に求める。
それには関わる相手とのコミュニケーションは常に配慮する必要がある。
どうすれば、相手ともっと良い方向を目指せるか。
そのために自分の側で相手を察知できずにやり残していることはないか?を常に気にしていられるか。

そんな想像力を常に働かせていられるかで、仕事の質は大きく変わる。
その想像力を働かせるためのスキルをいくつ持っているかで、仕事の質はとてつもなく違ってくる。

そして、そばにいることがわかれば……、独り相撲にはならなくなる。なぜ独りでやろうとするのか? そばにいることがわかっているなら、いっしょにやることを考えればよいのに。そもそも自分自身なんて存在もたくさんの細胞の集積でしかないのだし。

まあ、そんなホロバイオント(共生体)として、周囲との関係、チームとの関係を捉える感性があるか?ということか。
単細胞生物どうしがコミュニケーションできるからこそ、そこから互いに連携しあう細胞どうしが1つの生き物を成す多細胞生物が生じる余地が生まれる。
そう、「ともに生きる」可能性。

とにかく同種の生物がそばにいることを察知するのは大腸菌ですらできるというのを知って安心だ。
大腸菌もなかなかやるな。
君は心ある生き物だ。


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