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ステージアップ

旧来的な組織に対して、これまでにない新しい物事を実現しようとすると、人というものはやはり見たこと、体験したことのないものに抵抗しがちであるがゆえに、あまりに事を急いてしまえばかえって物事が前に進まなくなる傾向がある。
一気に高いところに登ってくださいといっても、不安の方が先にある立つのは、自分で何かを変えるということをしたことがない人にとっては自然なことだと思う。

けれど、いまや変わらずに済ませられる状況などはこの日本にはほとんど存在しないはずだ。

だから俗に言う「小さくはじめる」が大事になる。
意識的に自分たちを変えたたことがない人でも待ったなしで変化せざるを得ないのだから、「小さくはじめる」が有効なのだ。

新しい体験をちょっとずつちょっとずつしてもらう。気がつくと最初にいた場所からはずいぶん高い位置まで登っていたとなるようなプログラムをつくる。
そういう小さなステップを踏んでもらうことで、変化することは怖くないし、自分たちでもできるのだということを実感してもらう。
そんな風に導けるのが望ましい。

そういう導きを用意することなしに、あの人たちはなかなか変わってくれないとボヤクのは早計だ。

人は一気には変われない。
でも、それと同時に人間はずっと変わらずにいることもできない
人間は変われない生き物というより、むしろ変わらないことができない生き物だ。

そのことを忘れてはいけない。

状況が変われば人は前の状況のままではいられない。だとしたら、どういう風に状況をすこしずつ変えてあげられるか?を考え、設計することだろう。

まだ変化を経験したことない人に変化について言葉だけで理解してもらうのはむずかしい。いや、変化だけの話ではない。人は自分が経験したことのないことを理解し、信じることはそんなに得意ではない。だから前例とかに頼りたがる。

だとしたら、説明だけで変化の必要性を解こうとするのは得策ではない。変化を実感できるような、ちょっとした体験をしてみてもらったほうが早い。その「ちょっとした」の適量を相手に合わせて見つけるのが1つのテクニックだろう。

ようは、リスクとリターンのバランスを考えてプログラムを組むということだ。
大きなリスクを背負わせ、説明だけではよくわからないリターンをチラつかせても人が動かないのは当然だ。とるべき道は、リターンは小さくても、ほとんどリスクのないステップをまずは一段登ってもらって、目線を変えてもらうことだ。

ステージアップして、状況が変われば見える景色も変わって、考え方も変わる。変わったところで次の段を登ってもらう、提案をまた次に続ける。その一段一段を登ってもらう体験をどうデザインするか?
説明ではなく、体験そのものを与えなくてはならない。

そのためのプランはどういうものがよいか?

イノベーション創出だろうと、教育目的だろうと、変化を生み出したいプログラムを設計する際には、対象となる参加者がひとつ段階を上がったときに、その前に感じていた景色との違いをちゃんと視野に入れておくことが大事だ。一段ステージが、上がれば、それ以前はむずかしいと思っていたことを人は簡単に思えたりする。

その変化をある程度計算に入れておかないと、段階をいくつか踏んだあとにどこまで到達できるかを見誤る。
見誤ったあげく、がんばってもできないとあきらめてしまうことも、実は段階を踏むごとの意識の変化を含めれば、実はちゃんと到達できたりするものだ。

だから、イノベーションだろうと、教育だろうと、まだ見ぬ状態を実現しようとする場合、そういうステージアップに伴う景色の変化を考慮したプログラムの設計が必要だと思っている。一段登ったら、また次の段、そういう風に何段階かのステップを踏んで、ゴールにたどり着くシナリオが描けているとよい。

もちろん、そのシナリオは仮説だ。
実際にステージアップした相手が何を求めるかは完璧には予測できないから。最初に考えたシナリオに固執してはいけない。本当に次に何をやるかは、ステージアップ後に考えればよい。

そんな不確定性も吸収できる、プランニングとそれに基づくファシリテーションができるといい。

変化できないと思っている人も、変化させるのがむずかしいと思っている人も、自分がずっと変わらずにいたかどうかをちょっと振り返ってみれば良い。
決して少なくない人が自分の変化に驚くのではないだろうか。

#エッセイ #コラム #デザイン #イノベーション #変化 #ビジネス

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