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共創とわかりあい

共創という形で、多様な人々といっしょに何かを進めようと思えば、互いにわかりあうことが大事なんじゃないだろうか?

他の何をおいといても、互いにわかりあうことを大事にしていれば、そうそう困ったことは起こらないし、仕事を進める上での一体感や信頼感が醸成される。
逆に、わかりあうことを誰かがさぼりはじめた時から問題の火種はくすぶりはじめるし、チーム全体が不信感に包まれたりする。

わかりあうことにかかる労力より、一度燃え上がった火を消す労力のほうや不信感を拭う労力のほうが圧倒的に大変なのに、どうしてはじめからわかりあうというタスクをちゃんとやろうとしないのだろうかと思う。

しないのではなく、できない

ただ、わかりあうことをしないのではなく、わかりあうことができないという場合の方が多いのだろう。
やる気の問題以上に、技術の問題だ。
やる気が出ないのも、技術が伴わずできないから、やる気もなかなか出にくいのだろう。

ここで言っているのは、わかりあえない相手がいるという相性の話ではなく、相手が誰かによらず自分と違った考えや立場の人のことを、「わかる」ためにどうすればいいかがわからないというスキルの問題だ。

そして、それは他人のことをわかることができない、というだけのスキルのなさの話をではなかったりする。
おそらく、わかりあうことができない人は、そもそも自分の知らないことをあらためてわかろうとする際のスキルが不足している。

ペルソナという方法

相手が自分と知らない人だからという「対人間」の問題ではなく、それが知らない技術だろうと、知らない業界のこと、知らない分野のことであっても、同じように、「知らない」こと、「わからない」ことを理解するためにどうすればいいか。そのスキルが身についていないのだと思う。

というのは、結局、他人のことを理解するというのは、その人が寄って立つ背景、いまその人の目の前に何があるのかや、何をしなくてはいけないかという役割目的、あるいは、それをやる上でのその人のスキルレベルなどといったものを知ることだからだ。

これはいわゆるユーザー中心のデザインで、ペルソナとして明らかにしたいことと同様である。

つまりは、いっしょに仕事をする相手のことを理解するのにもペルソナという手法のフレームワークは使えるということだ。しかも、ペルソナのように複数人の情報を統合して1人のモデルを作るのではなく、現実の1人の人間をフレームワークに当てはめて理解しようというのだから難易度は低い。

現場とともに相手を理解する

ペルソナを作る際のリサーチとして、コンテクスチュアル・インクワイアリーという、その相手が思考し行動する現実の現場で行動観察なども組み込みながらインタビューする手法がある。現場の背景もろともその人を文脈=コンテクストのなかで理解するリサーチだ。

結局、他人を理解する場合にも同じように、その人がいる現場とともに相手のことを知ろうとしないとなかなか理解は進まない。
その現場そのものが何かとか、そこに身を置くことがどういうことかをわかってあげないと、相手が何を目指すのか、何を喜びと感じ何を不満に思うかもわかってあげられないだろう。

相手のことがわかってあげられない人の多くは、相手の状況をわかってあげることをしてあげない。
相手を知るには、相手の現場といっしょにその人を知るという基本技術が備わっていない。

その現場=コンテクストも含めた人物像がペルソナだということを知らないのだろう。

図式化による理解=図解

ただし、コンテクストを含めた相手のことを知ろうと話を聞いても理解できないことはままある。
何故話を聞いても相手のことがわからないかといえば、聞いた話を文脈としてちゃんと把握できないということが起こるからだ。

はじめて聞く話のコンテクストを理解するのは、それ自体、むずかしかったりする。
だが、むずかしいことでも、それを楽にする技術を持っていれば、理解はしやすくなる。

その技術の1つが図式化による理解、図解だ。

これは僕が若手のディレクターといっしょに何かしらの問題整理などを行う際によく使う方法だったりする。
図式化することで、理解の切り口が見つかることは多い。切り口が見つかれば、いままでバラバラに存在してたと思われたデータ同士が一気に秘密を語りはじめる。
昨日も今日もそんなことがあった。

切り口というのは、結局、文脈を見つけるのと同じことだ。文脈がわかれば、隠されていたものが一気に理解できるようになる。
図解とはそのための方法だ。

図解のための視点

図解するためには、集めた情報をどういう視点で並べるかを考え、試してみる必要がある。

並べる視点にはいくつかある。

・手順、順番で並べるとどうか?
・日付や時刻でソートするとどうか?
・場所のレイアウトで考えてみたらどうか?
・内容の類似でカテゴリーを作って分類したら?
・さらに階層構造化してみたらどうか?
・2軸4象限のマトリクスでマッピングできないか?

などなど、いろんな視点でデータを分類してみることで、聞いた話をどう理解してみると良いかが見えてくる。
理解できるようになるのは、このような視点で図解化することで、データの構造が明らかになり、それらをどう扱えばよいかがシンプルにできるからだ。

どういう視点で並べるかを覚えやすくするには、インフォメーションアーキテクトのリチャード・ワーマンによるLATCHのフレームワークを覚えておくと、とりあえず便利だろう。

・「場所(Location)」
・「アルファベット(Alphabet)」
・「時間(Time)」
・「カテゴリー(Category)」
・「階層(Hierarchy)」

あとは教養とか

あと相手のことを理解しやすくなるには、やっぱり教養の量を増やすことだろう。教養がもともとたくさんあれば、相手の文脈の理解にかかる工数は減らせるからだ。特に、先に書いたような、他人を知るための背景を理解する際には、ビジネスのフレームワークなどを知っていたほうが手っ取り早い。

教養を身につけるのは労力がかかると思う人がいるかもしれない。

でも、いちいち毎回、他人のことをゼロから理解するためにたくさんのことをその時点から調べはじめなくていけなかったりする労力に比べればはるかに楽。

さらにいえば、結局、ゼロから調べる労力を惜しんで相手の理解をせずに、炎上やら信頼関係構築の失敗などになったら、その方がはるかに労力はかかる。

なんでもそうだが、準備できるものは先にしておいた方が労力ははるかに少ない。余裕がある人の方がなんでも楽にでき、できることがどんどん増えていくのも結局そういう理屈だ。

それをせずに後で苦しいとか文句を言ってもはじまらないと思うが、後になって苦しい苦しいという人はいる。

やりたいことを実現するためには、異なる人たちとの共創は欠かせない。
そして、本当にやりたいことの実現の可能性を高めようと思えば、共創そのものを、うまくいかせるようにするために、いっしょにいる人とわかりあうことを大事にしなくてはならない。

で、今回書いたように、このわかりあう技術って、いわゆるユーザー中心のデザインとか、情報デザインの方法を学んだことがある人なら、本当はある程度は身についてるはずって思う。
あるいは、身についてなかったら、UCDとか情報デザイン、あるいはインフォメーションアーキテクチャなどをあらためて学んでみるといい。

そうすれば共創のプロジェクトはもっとうまくいくようになる。

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