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日常の過ごし方がすべてをむずかしくする

むずかしい本を読んでるね、と言われることは少なくない。
まあ、そうだとは思う。

でも、一方で「むずかしい本」って何だろう?と思ったりもする。
むずかしい本とそうではない本があるような言い方だが、果たしてそうなのか?
そんな風には到底思えない。だって、むずかしいと言われる本と、そうでない本に違いなんてないんだから。

むずかしさは本の側にはない、日常の側にある

本そのものがむずかしいことなんて、そんなに滅多にない。
大抵の「むずかしさ」は、子供がはじめて自転車に乗るときのむずかしさと同じだ。
やったことないからむずかしい。
慣れないからむずかしいだけである。
ようは経験値の問題が大きく、本の場合に戻すと、そこに書かれている事象に馴染みがない場合、むずかしいと言ってるだけだ。
ビジネスマンだったら日常の言葉や論理展開に近いビジネス本を読むのがむずかしいと感じなかったり、小説などは日常的な会話や感情の動きなどをなぞってくれたりするから、ストーリーの背景が日常と大きく異なっても、それほどむずかしくは感じないのだろう(昔の小説になると会話や感情の動きがいまと異なるから、そこでつまづく)。

ようするに、むずかしさというのは、対象の側の問題というより、対象に相対する僕らの日常の側の問題だ。
日常の側に、慣れない事象を相手にできるような許容度の広さがなければ、すこしでも日常とは異なるものは「むずかしい」と感じられてしまう。さらに、そのむずかしさに対処するチャレンジ精神も伴っていないと、むずかしいものを克服するストレッチの機会も得られず、狭い日常的思考に閉じ込められたままになる。

日常を過ごす中で、常に自分から新しいものを見つけようとしたり、疑問に思うことを見つけて「どうして、そうなんだろう?」とその原因を解明しようとするような思考を、デフォルトでやるようにしていない人は、自分にとって慣れたもの以外はすべて「むずかしい」と思えてしまうだろう。
そうなると、ほとんど日常からは成長の機会は失われてしまう。ずっと自転車に乗れない子みたいだ。

自分で思考を組み立てる日常を過ごす

考えを組み立てることを普段からしているか?ということだと思う。

こういう人が多いように思う(とはいえ、本人はそれに気づかないだろうけど)。
いま目の前に起きていることが、前に起きたこととの関係において考えられないという人が。つまり、事柄をその都度個別に処理するだけで、自分が前に経験したこととの関係において思考することができないのだ。

もちろん、そういう人でも、非日常的な事柄であれば、前に起きたこととの関係性で考えたりもする。
だから、やたらと「なつかしいね」と言ったりする人はそういう傾向がある。
ようするに、非日常的な出来事の反復には気づくのだが、それが日常においても起きていることには気づけないので、非日常的な反復のほうばかりが特別なことのように思えて「なつかしい」という感情になってしまうのだろう。
だが、実際は日常の時間そのものがなつかしさの連続だ。そういう反復する日常の関係性をうまく自分でつなぎ合わせられないのだ。

そう。それはつながっているわけではない。自分で思考して、前の出来事といま起きている出来事をつなげる、関係づけるわけだ。
ただ、ぼんやり日常を過ごしてたら、当然、そうはならない。
誰かの組み立ててくれたものを消費するだけで、自分で組み立てることを普段からしていないとそうなってしまう。

日常において、些細なものであろうと、常に発見や発明をしようと思って過ごしてなかったら、日常が意味のある物語には見えてこない。
そうなると「何か面白いことない?」というセリフが口ぐせになる。
日常を面白い出来事のつらなりとして感じられるようにするには、興味深く面白い発見や発明に満ち溢れた日常の意味を自分で編集して構成する思考が欠かせない。
ちょっとくらい、むずかしいことを身の回りに置いておいた方がほんとうはちょうどいいのだと思う。

慣れないことができないのは、普段のこともできないからだ

で、そういう思考を普段からしていたら、実は、たいていの本はむずかしくはない。単に慣れない用語や人名、地名が出てきて、読みづらい本があるくらいになる。

それははじめての職場やはじめてのプロジェクトで知らない人や事象に出くわすのと同じだ。
その人たちやそこでの事象、その場所自体がむずかしいのではない。そこで意味ある仕事が出来るかどうかは、その条件のむずかしさというより、単に、普段から仕事ができる力をちゃんと身につけているかどうかによる。

だから、大事なことは日常をどう頭を使って生きるか、普段の時間をいかに小さなチャレンジの時間にあてて、日々すこしでもむずかしいことに取り組めているか?ということになる。
それには物事をちゃんと整理して考えることだったり、常に、ちょっとした新しい疑問が見つかるよう周囲を気にかけて頭を使っていることだ。

とはいえ、日常だけから、それらを見つけつづけるのは、むずかしい。
であれば、すこし「むずかしい本」でも手にとって、そこから新しい疑問やモノの見方を発見するほうがカンタンだ。

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