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深海に住むプラナリア(Kakui & Tsuyuki 2024)

私が関わった論文の短い紹介.

”プラナリアの世界最深記録と彼らの子供の育ち方”

Kakui & Tsuyuki (2024) は,2023年に実施された白鳳丸はくほうまるという学術調査船の調査航海中に採集されたサンプルに関する研究成果です.千島海溝の水深6,176-6,200 mから得られた岩の表面に,たくさんの直径3ミリ程度の真っ黒な玉がついているのが見つかりました.初めて見たときは動物なのかすら分からず割ってみたところ,プラナリア類の胚(子供)が出てきたため,彼らのコクーン(卵殻;複数の卵が入ったカプセルのようなもの)であることがわかりました.

コクーンの見つかった岩,一部割ったコクーン,コクーンから摘出した胚

研究を進めたところ,本研究以前のプラナリア類を含む自由生活性扁形動物の確実な最深記録は水深3232 mであり,今回の発見は同動物群の最深記録を大幅に更新するものだということがわかりました.また複数の玉を割ったところ,単純な球状のものと成体に似た形状をしたものが見つかったことから,深海生プラナリア類と浅海生プラナリア類の胚発生様式は同様であることが示唆されました.また系統解析の結果,Maricolaと呼ばれるグループの一員であることが明らかになりました.

水深3500-6500 mのアビサルゾーン(abyssal zone)と呼ばれる水深帯に住む動物の,胚発生を含む初期発生に関する情報はほとんど蓄積されていません.本研究はプラナリア類の世界最新記録であるとともに,一切情報のなかったabyssal zoneのプラナリア類の初期発生に関する情報を初めて提示するものです.

論文情報
Kakui K, Tsuyuki A (2024) Flatworm cocoons in the abyss: same plan under pressure. Biology Letters 20: 20230506.

doi: 10.1098/rsbl.2023.0506

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