目的者別専用道路の増設を (道と文化 1989)

 西ドイツのブレーメンに、ドイツ人の夫がいるので、日本とドイツを行ったり来たりしている。

 西ドイツの道路事情は、住宅事情と同様、日本より、はるかに良い。制限速度ナシ、しかも無料のアウトバーンが、西ドイツ中にはりめぐらされている。町のなかのすべての道路には歩道がついていることはもちろん、車道と歩道の間の、自転車専用レーンも充実している。

 交差点の手前やバス停では、必ず、車線が増える。だから、日本のように、曲がりたい車が先頭にいるから、信号は青なのにちっとも進まないとか、バスの後ろについたら、バスから人乗り降りするのをじっと待つというような、バカバカしいことはない。

 それでも、最近は西ドイツでも、交通渋滞が、よく起こる。夕方、五キロ先のスーパーから、車でうちに帰るのに、三〇分かかったり、連休前のアウトバーンで、二〇キロ渋滞したり……。

 結局、アメリカの大都会でもない限り、住民すべてが、車を乗り回すのは不可能だということだった。たったひとりで、鉄の、あんなに大きい入れもに入って街に出れば、道も駐車場もいっぱいになって、当たり前。

 東京では、道路が悪いから、みんなよっぽどのことがない限り、車には乗らない。道路が良くなったら、車が増え、やっぱり渋滞することには、変わりないだろう。

 渋滞というのは、ほんとうにイライラし、人生のムダづかいでしかない。でも、自分が巻き込まれなければ、けっこうおかしな見せものだ。反対車線で車が並んでいるのを見ると、「うわー、すごい」と、うれしくなることもある。どこにも行かないのに、ラジオの交通情報を熱心に聞き、「やった、東名で五〇キロの渋滞だ!」とよろこぶ、性格の悪い友だちもいる。

 わたしの夫は、渋滞がイヤで四キロはなれた職場まで、自転車で通っている。途中に、ヴェーザー川という大きな川があるので、行きは良いが、帰りは、橋を渡るのに二〇分もかかることがあるからだ

 自転車なら渋滞知らず。川のほとりのサイクリング道路を走れば、快適そのもの。雪が降らない限り、雨の日も、風の日も、自転車で行く。

 休日にも、わたしたちは、ドライブでなく、サイクリングに出かける。よく晴れた休日の、ブレーメン郊外のサイクリング道路は、子連れの家族、老夫婦などでいっぱい。夫婦で、大きさは違うが、おそろいの自転車に乗っているひとたちが多い。

 自転車は、空気も汚さず、理想的な乗りもの。しかし、車と対決すると、かならず負ける。やはり、日本でももっと自転車レーンがほしい。

 渋滞しっぱなしの首都高。いっそ、自転車専用道路にしたら、どうだろう。


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